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隣国でのオタノシミ
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しおりを挟む「おはようございます。さぁ、こちらへどうぞ」
部屋にある椅子の脚数は四つ。他の部屋から転移させて後二つ持ってることくらい朝飯前だけど、あえて私とリヒャルトは立ったままでいた。身分的にもそれで正しい。
「随分と情報が早いですね。まだここの侍女にこの部屋のことがバレてから時間がそう経ってないと思いますが」
「え、えぇ。何かあれば私は避難対象となるので、すぐに連絡が来るようになっているのです」
「なるほど。それでは、その連絡はなんと?」
「……え?」
でた。ユアンのじんわり誘導尋問。私も初日にやられたわー。
ごめん、リヒャルト。遠い目をしてる自覚はあるから、そんな可哀そうな人を見るような目でみるのはやめて。
笑顔で、しかし、追及の手は一切緩めない。ユアンの外見に騙される人が通る最初の関門。
終いには神職ってなんだっけ?というところに行きつく。そうなると、最早引き返すことはできない。一生ユアンの性格に恐怖する生活の始まりだ。
クロード王子も先程までの勢いはどこへやら、自分が想像していた反応と違っていたらしく、しどろもどろになりながら口を開いた。
「あ、侍女が、魔術師殿が襲われたと」
「侍女が、ですか?」
「あ、あぁ」
「コレが、襲われた、と?」
「…………何が言いたい?」
あえての内容全確認に、クロード王子の眉にしわが寄った。王子の隣に座るリリアン嬢も不安気に王子とユアンを交互に見ている。そんな二人の視線をものともせずにユアンはにこやかに笑っている。
そして私は心の中で叫びたい。コレ言うなし。私は物か。
しかし、今は空気が読める子でなくてはならないから、お口チャックだ。一言でも漏らしてみろ。帰った時の私の仕事が天井知らずで増えることなんて体験しなくても分かる。そんなの絶対に嫌だ。
「いえいえ。王子のお目汚しになるかと思い、消させていましたが、この状況を見た侍女がそのような事をいうものかと思いましてね? ……サーヤ」
「ユアン様、大変失礼ながら、ご婦人に見せていいものではないかと」
ここでリリアン嬢に気絶されても困るしね?
だって……これからじゃないですか。
正直彼女にはこの二人とこの国まで来させてるって恨みしかない。当初は。今は心友になに迷惑かけとんじゃいっていうのも追加したいところだけど。
まぁ、嫌味の一つや二つくらいで足りるような当初の恨みでもないけど、これ以上余計な手間をかけてもらいたくはないのが本音です。
「ユアン、サーヤの言葉にも一理あります」
「……リリアン嬢。彼女の言う通り、女性が見ても楽しくないものですから、目を瞑っておいた方がいいでしょう。どうしても見ておきたいというならば止めはしませんが」
「……私も拝見したいわ。大丈夫です」
それじゃあ、ヤレというご命令ですのでやりますよっと。
今まで全く視界に映りこんでこなかった隅の人の山が目に入れるようにするためには。
指鳴らしを一回。それだけ。
しかし、もたらした効果は絶大なものだった。
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