老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件

穴の空いた靴下

文字の大きさ
26 / 342

26話 魔法対策

しおりを挟む
 VOにおける魔法は簡単に言えば二つ、ターゲット指定型魔法と設置型魔法だ。

 ターゲット指定型は文字通り使用するターゲットを指定して使う魔法だ。

 一度発動されてしまうとその後での対応が難しいタイプだ。

 設置型魔法、範囲指定型魔法とも呼ばれたりするがこれは発動する場所が決まっているために、発動前にその範囲外に避けるのが基本だ。

 パーティメンバー全体に使用される魔法などはターゲット指定魔法に含まれる。

 基本的には敵に対しての攻撃魔法と妨害魔法の話になる。



 わかりにくいので前者をタゲ魔法、後者を範囲魔法と呼ぶ。

 タゲ魔法は発動前阻害と発動後は魔力盾による防御、各種魔法防御魔法による対策になる。

 範囲魔法も発動阻害と単純に範囲外への移動だ。

 範囲魔法は魔法盾による防御は不可能なので、基本的に有効範囲で受ける場合は魔法防御や耐性を積んで力技で耐える方法になってしまい、プレイヤースキルを生かせる場はない。

 タゲ魔法は魔力盾による防御においてプレイヤースキルを遺憾なく発揮できる。

 簡単に言えば通常攻撃と同じようにクリティカルガードと、魔法反射だ。

 特に魔法反射は詠唱者に向かって《反射の出来ない》魔法を返せるという利点が大きい。

 

 こんな初期ダンジョンでメイジがいてもそこまで脅威ではない、ファイアーボールとかテンプレな魔法を打ってくるだけなので、覚えたての魔力盾で反射してやればいい。

 簡単に打ち返すとユキムラはいうのだが実際には物理カウンターの半分しか入力時間がない。

 普通のプレイヤーだとCrGクリティカルガードを狙って偶然出る、そういうたぐいの物だ。

 

 前衛の攻撃を軽くカウンターを取っているとメイジが詠唱を開始する。

 とりあえず詠唱阻害じゃなくてマジックカウンター狙いをしてみる。

 そんなことを考えていたら前衛は全滅させていた。

 物の序でで倒される敵の身にもなって欲しい。

 聞き取れない言語で紡がれていく炎の魔法。

 火球がメイジの杖の上に発生して杖を振ると同時にユキムラへと襲いかかる。



(実際に見るとタイミング難しいな)



 自分視界ではなく少しだけ俯瞰視点に集中する。

 魔力盾を発動、ぼやっと身体が青いオーラに包まれる、手に持つ剣も同じように包まれていく。

 目の前に火球が迫る熱も感じる。

 カウンターも魔法反射も焦りは厳禁、冷静にいつものタイミングで……

 火球を弾く、キィーンと独特の防御音が響き火球は勢いを保ったままメイジへと打ち返される。

 このキィーンって音が気持ちいい。

 メイジは突然の返球にうろたえるしか無い。

 火球がメイジのローブへと激突し爆ぜる。

 ブスブスと肉が焦げる音がする、焼肉みたいないい匂いじゃないなぁ、と、呑気なユキムラだ。

 一気に距離を詰めて、火を消そうとのたうち回っているホビットメイジの首を刎ねる。



「ふー、ちょっとだけ緊張したなぁ……」



 なんだかんだで魔法相手は数ヶ月ぶりだったりする。

 人が呼吸するのを忘れないようにカウンターや魔法反射のタイミングも忘れない、ユキムラはそういう域へどっぷりと入り込んでいるのだ。



「とりあえず今回の目標である2Fマッピング終了まで、がんばりますか」



 誰もいない洞窟で一人つぶやくユキムラ、ここのところこの世界での人のふれあいに慣れてきて少し寂しさを感じてしまう。

 ずっと一人だったユキムラが初めて人のぬくもりを感じたのは、一人ぼっちで頑張ってきたゲームの中なんだから、皮肉なものである。



 一階と同じようにきちんと照明を設置しながらマッピングを続ける。

 ほとんどのVOプレイヤーが始めて入ることになるダンジョンであるここでも、地下は5階構造。

 普通は依頼を受けて侵入して最終階でボスを倒し、行方不明になった冒険者を救出するってストーリでー、時間制限がある。

 ユキムラはいろいろと実験をしているので今回、クエストを起こさずにダンジョンに侵入していれば、捕えられている冒険者もいないだろうと考えている。



 この世界では微妙に残っているVOの要素の一つがクエストだ。

 フラグを立ててクエストを起こさなければそれに連動する出来事は発生しない。

 本来ならダンジョンへの侵入を可能にするのにもクエストが必要だけど、この世界ではすでにダンジョンはそこにあるため、イベントを起こさずに侵入が可能だ。

 時間制限クエストの前に準備をしておくことが出来る。

 初見でやると結構時間がタイトなクエストなので、VOの中では失敗しても何度もクエスト受け直せばいいが、この世界でダンジョンの餌食となった冒険者が復活するか賭けに出るわけにも行かないので、万全を期して冒険者救出クエストに挑みたいとユキムラは考えている。



 なお、冒険者救出クエは街へ行き冒険者ギルドで冒険者登録をしてLv50になると受けられる。

 ユキムラは春になったら街へと行くつもりだ。

 ギルドでの打ち合わせと通信設備の設置などやりたいことは色々詰まっている。

 それまでにレベルを50に到達させて出来る限りのクエストを効率よくこなそうと考えている。

 効率厨の鏡である。

 のんびりと生きておくと決めておりながらこういう本質は変わらないのであった。

 



 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

yukataka
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...