老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件

穴の空いた靴下

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32話 人海戦術

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「レン! すぐに村に連絡してくれ! 宝の山だぞここは!」



 ユキムラは子供のようにはしゃぎながら馬車へと戻る、すぐに通信機で村との連絡を取る。



「ああ、そうだ採掘部隊をこちらへ。……鉱物はだいぶ貯蓄も安定してるし、うん、

 念願の塩だ、塩が採れるぞ!」



 やや、いや、だいぶ興奮気味に村人たちへと説明する。

 護衛を付けて馬で採掘部隊を走らせる。

 護衛部隊の隊長は、あのおもら、いや、狼から救出したソーカが指揮を執る。



 あの一件以来自分の身は自分で守りたいということでレンやガッシュに混じって戦闘訓練に参加して、その頭角をにょきにょきと現したのがソーカだった。

 今では村で圧倒的な強さを誇っていたガッシュに勝ち越しているほどだ。

 レンとは五分五分くらい、日増しに強さを増しており、それにソーカ自身がハマっている。



 実はユキムラは対人戦、この世界の人とのVOの補助なしの対戦はやや苦手だ、モンスターのように定形の攻撃ではなく、フェイントなどを混ぜられると常勝とはいえない。

 ユキムラ自身もゲームのシステム補助的なもののない自力の戦闘力も伸びている。

 もともとの攻撃を見切る感覚はあるんだから一流と言っていいほどの戦闘力はある。

 モンスター相手ならほぼ100%無傷で勝利することが出来るだろう。

 しかしこの世界の人との戦いでは時々負けることもある。

 一番の原因は定形の攻撃だけをするわけではないこと、技の派生もタイミングが全て異なり百発百中でカウンターを取ったりすることが容易ではないからだ。

 Pプレイヤーv対Pプレイヤーでも攻撃モーションや技のモーションは一定なので、対戦用の様々なテクニックも存在はしているがユキムラは絶対王者だった。

 公式から永久王者の称号を与えられてイベントトーナメントに参加できないぐらいだった。



 それでもガッシュやレン、ソーカには時々負けてしまう。

 この世界における一流の剣士などが相手ならよくて五分五分と言ったとこだろう。

 もちろんVOシステム下なら負け無しだ。

 ただ本当にこの世界の超一流相手にはどうなのか、自信は持てなかった。

 ユキムラはそのことをいつも不安視して自らの身体で戦うトレーニングは毎日怠っていない。

 それにステータスをきちんと振っていけば強化されることもある。

 そこまで焦ってはいないが、パワーレベリングとかしてしまいたい衝動はいつも持っている。

 仕方ないよね、MMOやる人の思考って効率に向かっていくものなんです。



 とりあえず街へ行くのは後回しだ。

 ユキムラとレンはこの岩塩地帯で効率的な採取を行える拠点を作り始めている。

 街道沿い、比較的開けた部位を慣らしていく。

 土魔法を利用すれば簡単な整地はあっという間に行える。

 MPポーションを飲みながら地道に整地していく。

 レンはストックしてある木材から建材を制作していく。

 村長は採掘スキルを持っているので定期的に岩塩を採掘している。

 疲れたら馬車で休憩。なのだが、ユキムラとレンは新しい拠点の完成に向けてワクワクしながら、村長は塩が手に入る喜びから採掘ポイントをグルグルと回っている。

 完全ワーカーホリック間違い無しだコレ。



 そんな労働に取り憑かれた3人が黙々と作業をこなしていると、追加の狂労働者達が到着する。

 ユキムラに軽く挨拶をすると次々と周囲の採掘へと取り掛かる。



「ユキムラさん、もう来る途中から皆の目が血走ってて怖かったのよ」



「護衛ご苦労、もうすぐ拠点も出来るからゆっくり休憩しててくれ」



「あら、私が手伝えばもっと早く終わりますよね?」



 この人も労働病にかかっている。



 ソーカも戦闘だけでなく多彩な素質を持っていた。

 調理、裁縫、作成、建築、採取、狩猟だ。

 最初の指導で開花しない才能が時間をかけて指導すると開花することがある。

 伸び率に差はあるもののきちんと作業をこなしていけば開花する。

 今では村人たちはとりつかれたように色々なスキルを伸ばすことに躍起になっている。

 それによってどんどん生産力が上がり生活の質が向上していくからだ。

 戦闘訓練やいろいろな活動を通してソーカは精悍さにも似た美しさが出ていた。

 子供っぽかった顔つきも中性的な魅力的な女性に成長している。

 ソーカ姉さんと呼ばれ若い警備隊の間ではアイドル的な存在になっている。 

 

 蜘蛛の子を散らすように採掘をしていくグループ、街道を整備して行くグループ、拠点建築や周囲の環境整備をするグループ、10人ほど追加されたことで開発は一気に加速する。

 簡単な作りではあるが木製の小屋が完成する。

 ストックの魔道具を各所に配置していけば立派なお屋敷へと変貌する。

 照明に魔物除け、林や森が近いため安全への配慮は非常に大事だ。

 途中数匹の野犬やはぐれゴブリンが襲い掛かってきたが、ソーカを中心とする3名の警備隊の剣の錆となる。



 見事な戦闘を見ながらユキムラは自分たちの村が成長していることに大変満足している。

 ユキムラの考えをよく汲み取ってくれて思うように手伝ってくれる。

 村民たちにユキムラは感謝の念を禁じ得ない。

 

「師匠、内部も完成しました。簡易的ではありますが、十分居住可能です。」



 特にユキムラの右腕、レンはユキムラを大いに助けてくれている。



「よし、少し日も傾いてきた、今日は皆でこの素晴らしい場所と出会えた宴をしよう。」



 わー! ユキムラ様サイコー!

 若い村人は喝采をあげる。村長もニヤリとしてる。

 調理スキルを持つユキムラ、ソーカ、レンで少し豪華な料理を用意する。

 調理スキルのいいところは時間のかかる料理でも時間をかけずに完成する。

 一晩じっくり煮込んだカレーが5分くらいで出来る。意味がわからないがそういうものだ。

 日が傾きかけて沈むまでにテーブル一面を料理で埋める、そんなことも可能だ。

 事実、テーブルを埋め尽くす料理が皆の前に用意された。



 会議室として用意された一室、20人は座れる長テーブルに様々な料理が並べられている。

 普段からそれなりに豊かな食生活を送っている村人にとっても目を奪われる豪華さだ。

 

「村へ戻ったら改めてこの場所の発見を祝おう、今日は前夜祭ということで!」



 ユキムラの挨拶で宴は開始される。

 若い村人たちが多いので料理はどんどん胃袋へと収められていく。

 エール、ユキムラがいろいろと趣味で作っているビールなのだが、それに各種果実を利用した酒も出されている。



 この世界では15歳から成人とされており飲酒も許されている。

 まぁ、小さな村なので果実酒ぐらいだと小さい時からこっそり飲んでいたりする。

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