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57話 白き狼
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犬型アンデッドはアンデッドのくせに機動力がある。
さらに森のなかでの獣は木も利用して3次元で襲い掛かってくる。
「師匠! 敵の攻撃を全面から受けないように結界展開をしましょう。
両側に半球状のドーム結界をつくって正面だけにわざと口を開けましょう」
ソーカが言っていた、レンは戦術、戦略両面で自分より上だと。
「みんな聞こえたな、最速で動けよ、対アンデッド火炎結界展開!」
初めての実践でのアンデッド戦が混戦から開始してしまったのは愚策だったが、レンの素早い作戦立案でサナダ隊のみんなにも余裕ができた。
左右や木の上から襲い掛かってくる敵は結界に拒まれる、正面から襲い掛かってくる敵に集中して当たればいい。
焦って設置したため正面の口が大きくなってしまったが、それでも2対1以上を崩さずに落ち着いて対処できている。
「レンそっちはどうだ?」
「厳しいです、すでに致命傷だったようで……」
「そうか……」
ユキムラは両親が健在だった時に犬を飼っていた。
ふと金色のモフモフした飼い犬のことを思い出して珍しく苛ついた。
少し先にこのリビングデッド共を使役しているレイスがいることには気がついていた。
「サナダ隊はこの場を死守、絶対に無理をするな。
俺は八つ当たりしてくる」
聖水の蓋をかじりつき強引に外し聖魔法で武器に神聖属性をまとわせる。
時間は3分、同時に前方の開いた口からレイスに向けて駆け出す。
飛び出すと天上から腐犬が飛びかかってくる、軽く身をかがめすれ違いざまに胴を斬りつける、身体を捻りそのままの速度で走り抜ける。
後方から二体接近してくる。
「ファイアーウォール」
腐った脳では瞬時の判断は鈍く、その肉体を炎の壁に突っ込ませる、燃え盛る肉体は段々と速度を落とし燃え尽きる。
ユキムラは突然サイドステップをする、ユキムラがさっきまでいた場所に地面から黒い槍が飛び出す。
シャドウスピア、闇魔法の一つで敵の足元から影の槍を放つ技だ。
ガードするとスピードを殺されるので避ける。
サイドステップやバックステップ、フロントローリングにはほんの少し無敵時間がある。
ただ、VOではあるがこの場での実験は危ないのでちゃんと避けている。
もう目の前にレイスがいる。
まただ、今度は飛び上がる。ユキムラの背後に槍が飛び出す。
飛び上がったユキムラにレイスがニヤリといやらしい笑みを浮かべる。
レイスの翳した手からバチバチと雷が放たれ束となりユキムラに向かって放たれる。
空中では避けようもない、レイスが厭らしい笑みをうかべるのも当然だ。
ただ、ユキムラが策もなくそんな行動はもちろん取らない。
魔道具であるブーツを発動、もう一段階高く空中で、飛び上がる。
ユキムラがいた場所を雷の槍が激しく放電しながら突き進んでいく、触れた枝が燃え上がる。
しかし、ユキムラはその一段上を飛翔している。
【ガァア?】
そのままレイスを一刀両断する。
バカな、とでもいいたげな声を上げてレイスは魔石へとその姿を変える。
ユキムラがサナダ隊のもとへと戻ると戦闘は終了していた。
「師匠、駄目でした……」
残念ながら白き狼はその生命を落としていた。
なんとも言えない悲しい気持ちになる。
仇は……取ったよ。そう報告する時にふと大きなお腹が動いた気配がする。
「ん? 動いている?
ゴメンな、あとで供養するからな」
手を合わせて小刀で腹を斬る、中からモゴモゴと動く袋がズルリと出て来る。
みるみる色が悪く紫色になっていく、迷っている暇はない。
ユキムラはその袋を中で動くものを斬らぬようにそっと切り開く。
「キューキュー」
真っ白なびっしょりと濡れた子犬が這い出てくる。
残念ながら息があるのはこの子だけだった。
タオルを出して身体を拭いてやり、そっと母親のそばに置いてやると健気に乳を吸う、輝くような初乳が確かにその子供に飲み込まれていく。
気がつくとユキムラの瞳から涙が流れていた。
昔聞いた程度だが、へその部分を紐で縛り胎盤を合わせて切り落とす。
その後母親の遺体は傷を治してやり助けられなかった子と共に天に返してやった。
その子供はユキムラの預かりとなった。
ユキムラはすぐにベースキャンプに戻り子犬用ミルクを作る。
ペットシステムもあったVOは大抵のものが作れる。
哺乳瓶から勢い良く吸い付くその姿に生命の力強さを学んだ。
一騒動を追えてトンネル開通に向けて機材を手早く設営する。
すぐにトンネル作業が稼働し始める。
実は人力などいらないのだ。
これで後は反対側に抜けるのを待つだけだ。
強力虫よけによる魔除けはアンデッドには効きづらいようだ。
すでにアンデッドが出るレベルのエリアに到達していることを考えると、駐屯地の防備を固める必要があった。
ユキムラはしばらくトンネル開発駐屯地で防備設備の開発設置に詰めることになった。
アンデッド対策の一つである聖魔石は最初の女神解放クエストを終えないといけない。
しかし、この国の女神解放クエストをある程度進めると魔王イベントが起きてしまう。
そうするとヘルズポイント魔国が全国に対して宣戦布告を行い、戦争状態になってしまう。
その時にいろいろと状況が大きく変化してしまうので、今あるものでアンデッド対策をする必要があった。
「まぁ、火、日、聖だよね」
火はまぁ火属性攻撃が苦手だ。
日は日光が苦手だ。
そして聖属性だもちろんこれが一番有効だ。
「そう言えばレン、教会ってどうなってるの?」
「えっと、もうすぐ中央区に教会が建ちますね。沢山寄付しました」
黒い会話である。
「ただ聖水って効果があまりに短時間だから、やっぱり火と日で考えるか。
森の中で派手に火を使うと大火災になるから、日中ためて外に放つ太陽のお力に頼りましょう」
簡単だ、ミラーで魔石に太陽の光を集めて夜間に周囲に放つ。
これでわざわざ近づいてくるアンデッドはいない。
低コスト、低予算、長時間稼働。
問題は天候に左右されるくらいだ。
それも結界を二重にして外壁と内壁の間に永続炎系トラップを置くことで時間は稼げる。
取り急ぎそれらをにょきにょきと設置していく。
子犬(狼)はタロと名付けられてにょきにょきと育っていくのでありました。
さらに森のなかでの獣は木も利用して3次元で襲い掛かってくる。
「師匠! 敵の攻撃を全面から受けないように結界展開をしましょう。
両側に半球状のドーム結界をつくって正面だけにわざと口を開けましょう」
ソーカが言っていた、レンは戦術、戦略両面で自分より上だと。
「みんな聞こえたな、最速で動けよ、対アンデッド火炎結界展開!」
初めての実践でのアンデッド戦が混戦から開始してしまったのは愚策だったが、レンの素早い作戦立案でサナダ隊のみんなにも余裕ができた。
左右や木の上から襲い掛かってくる敵は結界に拒まれる、正面から襲い掛かってくる敵に集中して当たればいい。
焦って設置したため正面の口が大きくなってしまったが、それでも2対1以上を崩さずに落ち着いて対処できている。
「レンそっちはどうだ?」
「厳しいです、すでに致命傷だったようで……」
「そうか……」
ユキムラは両親が健在だった時に犬を飼っていた。
ふと金色のモフモフした飼い犬のことを思い出して珍しく苛ついた。
少し先にこのリビングデッド共を使役しているレイスがいることには気がついていた。
「サナダ隊はこの場を死守、絶対に無理をするな。
俺は八つ当たりしてくる」
聖水の蓋をかじりつき強引に外し聖魔法で武器に神聖属性をまとわせる。
時間は3分、同時に前方の開いた口からレイスに向けて駆け出す。
飛び出すと天上から腐犬が飛びかかってくる、軽く身をかがめすれ違いざまに胴を斬りつける、身体を捻りそのままの速度で走り抜ける。
後方から二体接近してくる。
「ファイアーウォール」
腐った脳では瞬時の判断は鈍く、その肉体を炎の壁に突っ込ませる、燃え盛る肉体は段々と速度を落とし燃え尽きる。
ユキムラは突然サイドステップをする、ユキムラがさっきまでいた場所に地面から黒い槍が飛び出す。
シャドウスピア、闇魔法の一つで敵の足元から影の槍を放つ技だ。
ガードするとスピードを殺されるので避ける。
サイドステップやバックステップ、フロントローリングにはほんの少し無敵時間がある。
ただ、VOではあるがこの場での実験は危ないのでちゃんと避けている。
もう目の前にレイスがいる。
まただ、今度は飛び上がる。ユキムラの背後に槍が飛び出す。
飛び上がったユキムラにレイスがニヤリといやらしい笑みを浮かべる。
レイスの翳した手からバチバチと雷が放たれ束となりユキムラに向かって放たれる。
空中では避けようもない、レイスが厭らしい笑みをうかべるのも当然だ。
ただ、ユキムラが策もなくそんな行動はもちろん取らない。
魔道具であるブーツを発動、もう一段階高く空中で、飛び上がる。
ユキムラがいた場所を雷の槍が激しく放電しながら突き進んでいく、触れた枝が燃え上がる。
しかし、ユキムラはその一段上を飛翔している。
【ガァア?】
そのままレイスを一刀両断する。
バカな、とでもいいたげな声を上げてレイスは魔石へとその姿を変える。
ユキムラがサナダ隊のもとへと戻ると戦闘は終了していた。
「師匠、駄目でした……」
残念ながら白き狼はその生命を落としていた。
なんとも言えない悲しい気持ちになる。
仇は……取ったよ。そう報告する時にふと大きなお腹が動いた気配がする。
「ん? 動いている?
ゴメンな、あとで供養するからな」
手を合わせて小刀で腹を斬る、中からモゴモゴと動く袋がズルリと出て来る。
みるみる色が悪く紫色になっていく、迷っている暇はない。
ユキムラはその袋を中で動くものを斬らぬようにそっと切り開く。
「キューキュー」
真っ白なびっしょりと濡れた子犬が這い出てくる。
残念ながら息があるのはこの子だけだった。
タオルを出して身体を拭いてやり、そっと母親のそばに置いてやると健気に乳を吸う、輝くような初乳が確かにその子供に飲み込まれていく。
気がつくとユキムラの瞳から涙が流れていた。
昔聞いた程度だが、へその部分を紐で縛り胎盤を合わせて切り落とす。
その後母親の遺体は傷を治してやり助けられなかった子と共に天に返してやった。
その子供はユキムラの預かりとなった。
ユキムラはすぐにベースキャンプに戻り子犬用ミルクを作る。
ペットシステムもあったVOは大抵のものが作れる。
哺乳瓶から勢い良く吸い付くその姿に生命の力強さを学んだ。
一騒動を追えてトンネル開通に向けて機材を手早く設営する。
すぐにトンネル作業が稼働し始める。
実は人力などいらないのだ。
これで後は反対側に抜けるのを待つだけだ。
強力虫よけによる魔除けはアンデッドには効きづらいようだ。
すでにアンデッドが出るレベルのエリアに到達していることを考えると、駐屯地の防備を固める必要があった。
ユキムラはしばらくトンネル開発駐屯地で防備設備の開発設置に詰めることになった。
アンデッド対策の一つである聖魔石は最初の女神解放クエストを終えないといけない。
しかし、この国の女神解放クエストをある程度進めると魔王イベントが起きてしまう。
そうするとヘルズポイント魔国が全国に対して宣戦布告を行い、戦争状態になってしまう。
その時にいろいろと状況が大きく変化してしまうので、今あるものでアンデッド対策をする必要があった。
「まぁ、火、日、聖だよね」
火はまぁ火属性攻撃が苦手だ。
日は日光が苦手だ。
そして聖属性だもちろんこれが一番有効だ。
「そう言えばレン、教会ってどうなってるの?」
「えっと、もうすぐ中央区に教会が建ちますね。沢山寄付しました」
黒い会話である。
「ただ聖水って効果があまりに短時間だから、やっぱり火と日で考えるか。
森の中で派手に火を使うと大火災になるから、日中ためて外に放つ太陽のお力に頼りましょう」
簡単だ、ミラーで魔石に太陽の光を集めて夜間に周囲に放つ。
これでわざわざ近づいてくるアンデッドはいない。
低コスト、低予算、長時間稼働。
問題は天候に左右されるくらいだ。
それも結界を二重にして外壁と内壁の間に永続炎系トラップを置くことで時間は稼げる。
取り急ぎそれらをにょきにょきと設置していく。
子犬(狼)はタロと名付けられてにょきにょきと育っていくのでありました。
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