老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件

穴の空いた靴下

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128話 大都市サナダ街

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「おお、これいいね。素晴らしいアイデアだね」



 ユキムラが感心したのは外部の壁に描かれた自然の絵だった。

 巨大な城壁がどーんと存在しているが、そこに描かれている木々や草原、山々の画が圧迫感を取り除いている。

 

「新しく来る人がこの城壁にビビっちゃうらしくて、どうするかーって話になった時ボレスが提案したそうです。この画もボレスが中心になって書いたそうですよ」



 レンが補足してくれる。ボレスはあのガタイでこういう繊細な絵を書くのかとユキムラは感心する。

 そこまで芸術とかに詳しい訳じゃないが、温かい絵であることはわかる。

 本来防壁とはある程度の威圧感が必要だが、まぁ外敵と戦うことにはしばらくならないし、なによりユキムラはこの案を大層気に入った。それが全てだった。

 

「そういえばボレスの結婚式やるとか言う話があったな」



「ええ、前にお伝えした通り今回の滞在中に執り行いますよ」

 

 ソーカの報告は寝耳に水だ。



「え、聞いてないよ?」



「だから言ったじゃん作業中に話しても聞いてないよーって」



 レンはソーカに呆れ顔になっている。



「まぁ、準備はこっちでやってるからいいかなーって……」



 ソーカのテヘペロである。



「私も張り切ったからいい式にしましょうねぇ~」



 ヴァリィも力こぶを見せている。鍛え抜かれた二の腕は丸太のようだ。

 それを見せているから力仕事でも誇示しているかのように見えるが、たぶんウェディングドレスとかそういうのも準備したんだろう。

 ユキムラ以外は準備万端だ。

 

 城門に近づくと赤揃えの衛兵と普通の武具を着た衛兵がずらりと並んでいる。

 一人の兵が近づいてくる。

 以前見たときよりも精悍になっているファルだ。



「ユキムラ様、レン様、ソーカ様、ヴァリィ様、タロちゃん。

 お帰りなさいませ。私がお屋敷まで同行いたします」



 ユキムラは頭を抱えていた。

 再三再四大げさな出迎えをしないように頼み倒したのだ。



「いや、師匠。鳴り物もならさず最低限まで抑えてますからね。

 これ以下はありません。諦めてください」



 レンに救いを求めたら冷たく言い放たれてしまった。

 ソーカは目をそらす。

 ヴァリィはあらあらいい男じゃなーいとファルを舐めるように見ている。

 タロは大きなあくびをして再び眠りについている。



 ファルが手を挙げると衛兵が抜刀し剣を掲げる。

 その間をゆっくりとユキムラを乗せた車が走り出す。

 城門が音もなく静かに上がっていく。

 城門が開いた先には町の住人と思われる人々が大歓声を持ってユキムラたちを迎えてくれた。



「さぁ、師匠。お仕事ですよ。ヴァリィさんお願いします」



「はいはーい」



「やーめーてー……」



 あっという間に礼服に着替えさせれられたユキムラ、そして全員礼服に着替え車の上の本来は周囲を監視するためのエリアから住民へユキムラのお披露目だ。

 左右をガッツリとレンとヴァリィに抑えられ、引きつった笑顔で手を振っている。



 ユキムラ様ー!! レン様ー!! ソーカ様ぁ!!



「すごい人気ねぇ……」



「ははは、ほんとに止めてほしいんだけど……」



「師匠、笑顔ですよ笑顔!」



「でも、ほんとに子供多いんだね……それは素直に嬉しい」



 上から眺めると母親らしき人が非常に多く。赤子を抱いている女性も多かった。

 町の住民は皆笑顔で、それはユキムラにとってとても嬉しいことだった。



「ユキムラ様、無事のお帰りこのガッシュ今生の喜びです!

 レンもしっかりと役目を務めているようで安心しました」



 中央区市役所前でレンの父ガッシュと元村長、セバスチャンに出迎えられる。

 サリーさんも相変わらず濃厚な魅力をふりまきつつ元気そうだ……というかお腹が大きい。



「ああ、言ってませんでしたっけ? どうやら妹か弟が出来たそうです」



「あ、ユキムラさん私もですー」



「ほ、ほんとにベビーブームなんだね……」



 その後もたくさんの人がユキムラのところへ挨拶に来る。

 あまりの人数にユキムラは途中から覚えることを諦めた。

 鍛冶部門の最高責任者のサリナも顔を出したが、ダンジョンで手に入れた鉱石を預けるやいなやすぐに帰ってしまった。

 そんな人の波もなんとか落ち着いて、レンが紅茶を入れてくれる。



「それにしても、町並みも洗練されたし、都市部の拡張はすごいね」



 領主の部屋に作られた街の模型、今後の計画や現在の状態を精巧な模型で再現している。



「防壁についてはすでに完成しています。まだ人口的な頭打ちになっていないので用地はそのままになっている所も多いですが、最終的に王都より巨大な街になれる余裕はあります。

 各地点は公共の交通システムが張り巡らされていますし、基本的に市民に一つホバーボードも与えています。食料生産力もかなり向上して、各地への輸送もその量を増やしています。

 各部門の輸出と輸入バランスはこんな感じになっています」



 テキパキと資料を提示しながらプレゼンをしてくれるレン、次はソーカの部門だ。



「現在サナダ隊は400名。真紅隊は20名、一般衛兵は30名となっています。

 現在の装備はこちらですが、今回持ち帰った素材によって現在サリナさんを中心に刷新される予定です。

 他の武装についてはユキムラさんの案の通りに製造されています。

 2年以内には各場所へと配備できると思います。

 武具、兵器に関しては輸出は制限をかけてはいますが、要望は非常に大きいです。

 今後はどうしていきますか?」



「うーん、そろそろこの辺りまでは輸出していこうか。国全体で防備を高めていかないとね」



 武具にはランクがつけられていて、ユキムラ達白狼隊が使っているようなチート武具はクラス5、真紅隊、精鋭部隊の装備がクラス4、一般兵士はクラス3、付与が付いた武具のうちそれなりの効果のものはクラス2、一般的な製造で出来た、まぁそれでもこの世界では最高品質な武具がクラス1にわけられている。

 いままで外にはクラス1までのものを販売していたが、今回からクラス2装備まで出すことになる。



「あと、ギルドからも武具や各種魔道具を冒険者にむけて販売してほしいと通達が来ています」



「ああ、そうだね。そっちはここらへんまでただ、価格とかで数は絞ってね。

 これくらいなら普通に流していいから。

 魔道具とかアイテムポシェット関連は冒険者には格安で出そう。

 生存率が段違いになるだろうから……」



 珍しくきちんと領主らしい仕事に追われるユキムラだった。

 結局一週間くらい様々な方針や新しい案なんかを詰めていく作業に取られてしまった。

 仕事に忙殺されるが、それが街に住む人々の生活を良くしていくものだと思うと、それほど苦にはならなかった。

 どちらかと言えば、ボレスの結婚式でスピーチする羽目になったほうがユキムラの心を乱すことになったのは、ユキムラの心の中に秘めておくことにする。めでたいことだからね。



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