老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件

穴の空いた靴下

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143話 拠点をゲット

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「おお、異国のものでこちらではあまり見ぬ型ですが大変良くお似合いですよ」



 まぁスーツっぽい仕立てはこの世界のどこにも無いんだけども。

 一応体裁を整えられるかっこには成ることが出来た4人と1匹は応接室へと通される。

 部屋に入るとすぐに土下座でもするかのように腰の低い人が良さそうな男性が先頭で入ったユキムラの手を両手で握りしめて来る。



「おおお! ありがとう!! 本当にありがとう!! カレンに何かあったら私は……私は……」



 1人で感極まって泣き出してしまった。

 なんだか貴族への印象が変わってしまう最初の出会いだった。

 なんとか落ち着いてもらってお互いに自己紹介をする。



 中肉中背、人の良さそうで人畜無害な感じの落ち着いた茶色の髪の男性が、この街ボーリング領主 ハイランベルグ・ゲールラッハ子爵。綺麗に着飾ってタロを隣に座らせて楽しそうに撫でている。ほんとにこの男性の子供なんだろうか? と思ってしまう美しい金髪の美少女がハイランベルグ・カレン。そしてもう一人この女性は間違いなくカレンの母親と思える金髪のグラマラスな美女、ハイランベルグ・メープル。このボーリングの街を治めている貴族だ。



 ゲッタルヘルン帝国は貴族制度が取られていて。

 頂上は皇帝、ついで公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵となっている。

 子爵ということはそこまで高い地位ではない。



 いかにカレンが素晴らしい子なのかという話が会話の8割を占めていたが、少しこの街の状況を知ることが出来た。

 現在のこの街の問題は日本の地方村落と似たような感じらしい。

 産業が漁業一本に依存しており、国の方針として南方にあるケラリス教国との貿易も許されない。

 四方の海岸線を有する帝国において魚介類の食料価値がそこまで高くなく、あまり豊かな暮らしを行えない。農業も海風によって塩害が起きて思うようにはいかない。

 そのせいで若い人間が内陸部の都市へと移動してしまい、町全体が高齢化してしまっている。

 ゲール(そう呼んでくれと念押された)は悪い領主ではないが、変化よりも安定を求める傾向にあって大きな改革案なども行ってこなかった。先代もそうだったようだ。

 カレンが生まれてからはさらに子供に没頭して緩やかな終息が街へと忍び寄っている。

 そういう状況なようだ。



 正直、ユキムラたちには願ったりな状態だ。

 この地で暗躍して産業を興し、発展させてゆっくりと文化侵略をするならこれぐらい地味な街のほうが都合がいい。しかもトップである領主はたぶんこちらのやることを邪魔するようなことはないだろう。

 まずはこの街や周囲で産業とできるような資源の存在を下調べする。それがしばらくの行動指針となる。



「そういえば私たちは、この服の様に少し服飾の技術があるので、もしよかったら旅の路銀稼ぎに商売をさせていただいてもよろしいでしょうか?」



「おお、それは素晴らしい。新しい風が街に吹けば街の雰囲気も変わるでしょう!

 空いた店舗はいくつかあります。いいところを使ってください。あとでラオに案内させます」



 やはり、レンはまんまと今後の拠点を手に入れることに成功する。

 カレンがタロと遊びすぎて眠ってしまい、その日の面会はお開きとなった。

 カレンや一行を助けた礼は、その商会を使わせてもらえることと、商業をする権利を提供という形でいただくことになった。ほかにもいろいろとしてくれそうだったが、少し恩を残しておいたほうがいいという黒いレンの提案でそれで十分と辞退することにした。

 一刻も早く動きたいと申し出て夕食や湯あみはお断りした。カレンもすっかり寝てしまったので、今日は疲れているだろうと話が付いた。



 こうしてユキムラ達は帝国において、サナダ商店という城を手に入れることとなる。

 ラオに紹介された店舗は中央通り沿い、露店などが立ち並ぶ海沿いの部分と、少し高級な住宅街の中間点あたりの超一等地と言っていい場所だった。

 ただ、場所柄賃料が高く普通の商店だと入りづらく、高級店だと売れないというジレンマで空き家となっていた。一階の商店部分も広く、さらに2階部分は住居として必要なものが全て用意され宿としても申し分がない、本当に破格の物件を手に入れた。

 これを3か月は家賃免除、その後も格安な料金で借りることができるという契約を結んだ。

 



「さて、夕方だけど周囲を把握は一刻も早くしたいし、それに夜飯の準備もしないとね。

 ヴァリィは俺と一緒に各スキルも説明する。海へ行ってから森へ行こう。

 レンは丘のほう、ソーカは平原と反対のほうの海をよろしく。タロはここ守ってて。

 鞄を買うのを忘れないようにね」



 帝国でも流通貨幣はゼニーだが、以前持っていたものは一切持ち込めていないので、ウッドプレートを売って少しだけ資金を得た。

 精巧なつくりだと評価を頂いて、一揃えで使用済みにも関わらず10000zと、軽い買い物はできるお金を手に入れることができた。



「はい! 久々の採取や狩猟だなー! 師匠に負けないよう頑張ります!」



「いろんな素材あるといいですね!」 



「入れるもの出来るまで取りすぎに注意ね!」



「うぉおん!」



 タロはすぐに店舗内の清掃を魔法で始める。帰ってくる頃には見違えていることだろう。

 本当にできたワンコなのである。



「それじゃぁヴァリィ、釣りスキルからまず教えるね……」



 ヴァリィはユキムラ’sスキルブートキャンプに入隊することとなる。



 

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