老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件

穴の空いた靴下

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168話 魔神の使徒 

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 戦いの場は帝都から少し離れた草原上に結界を幾重にも張り巡らせた空間を作る。

 内部からの脱出対策も、外部からの不可視化なども行っている。

 ユキムラが転移した時点で転移阻害なども発動している。

 もし黄金騎士が転移することが出来ていたなら最後のチャンスは失われたことになる。



「おまえは何者なんだ?」



 ユキムラが黄金騎士へと問いかける。



【来訪者め、どうせ私が魔神の使徒だということもわかっているんだろ?

 せっかく帝国を焚き付けて王国を滅ぼし、魔王の力でフィリポネア、ケラリス、テンゲンを滅ぼしこの世界を我らが魔神の地とする作戦を潰しにきたのだろう? 

 女神どもめ来訪者をよぶ力が残っていたとは……】



 なんだか勝手にベラベラと重要なことを話してくれる黄金騎士。



【我が名は魔神が使徒サラダトナス、我が作戦、邪魔はさせん!

 お前らを葬ってこの国も王国も滅ぼすのだ!!】



 漆黒の剣を掲げて決めポースまで取ってくれる中ボスの鏡のような黄金騎士サラダトナス。

 ユキムラの頭のなかにはナス入りのサラダを思い浮かべていた。

 しかし、まったく油断はできない。

 以前コイツ一人に白狼隊は全滅させられているんだ。



【まさか我らが眷属も呼べておらん、こんな初期に作戦が露呈するとは……

 さすがは来訪者……忌々しい】



「つまり、貴方を倒せばとりあえず帝都と王国の混乱は防げるということですね」



【できるものならなぁ!!】



 超加速ではなく、普通の範囲内での高速、まぁ凄い早いのだが、攻撃でユキムラにサラダトナスは斬りかかる。

 ユキムラは片手剣、小型盾のスタイル。

 先程のライガーのフリをしている状態から最も安全にクリティカルガードを取るために盾を装備していた。

 転移用の杖から片手剣に換装はされている。



 サラダトナスの鋭い剣撃も目を見張るが、ユキムラはその持つ剣に集中していた。

 漆黒の剣、幅は日本刀に近いのでスリムな印象を受ける。

 しかし、レイピアのような細さではない。

 剣撃をうける衝撃は力強く、丁寧に防御をこなさないと一瞬で流れを持っていかれそうになる。

 重いし、早い、軽い。

 魅力的な剣だった。



「素晴らしい剣だな……名はあるのですか?」



【我が愛剣Schwarz Schwertの良さをわかるとはなかなか見る目があるじゃないか】



 他のメンバーが手も出せない高速の殺陣からスッと距離を取る。

 手に持つ黒剣を高々と掲げる。

 白狼のメンバーも今回は空気を読んで攻撃を仕掛けたりはしない。



「うける側からすれば厄介極まりない、貴方の腕前と合わせると、凶悪ですね」



【ふふ……ふあーっはっはっっは!! そうだろそうだろ! わかってるじゃないか!】



 しかし、その攻撃を見事に受けきっている事実が有ることに疑問も抱かずに有頂天だ。



【貴様らなど我が主に与えられた力を使わずとも、この剣と俺の力で排除してやる!】



「さらに主の力があるのか……謎の力を前に俺たちは為す術もなくやられてしまうのか……」



【そうだ!! 我が主の時を操る力は最強! 

 来訪者だろうがこの力を持つのは我らだけ!

 我が主の考えた無敵の力なのだ!! 

 それを否定するものを滅ぼす! 我が主の悲願!!

 その手始めに貴様らを冥土へと送ってやろう!】



 いろいろと情報を手に入れることができた。

 とりあえず白狼隊がその主の力でやられることはない、隠し玉も無いようだ。

 ユキムラは心の中で安堵のため息をつく。

 超時間戦闘はすでにクロノスの時計の加護により白狼隊は同じ土俵で戦える。

 しかし、そのように強力な別の能力が在った時、再び惨劇が繰り返されてしまう。

 それは避けねばならない。

 ちょうどよく、今回の敵である使徒サラダトナスが(都合の)いい性格をしていたので利用して情報収集を行うことが出来た。



「全員ご苦労。それでは全開戦闘でいこう」



 事前に取り決めていた。

 防御に特化したユキムラが戦い、可能であれば出来る限り情報を引き出して、もし情報が引き出せなければ防御主体の安全策を取るしか無かった。

 予想外にゆるゆるな相手から情報が得られたのはラッキーだった。

 ユキムラも武器を槍に変える。

 たぶん黄金騎士は近接特化キャラだ。

 ユキムラの長年の経験が数合の立ち合いでそう告げていた。

 中距離で剣相手で最も行動を阻害できる槍か棍。

 ヴァリィとのバランスを取って槍装備だ。



 サラダトナスはサナダ街を襲った黄金騎士なのだろう。

 この間撃破した黄金騎士とはレベルが違う。

 多分この間の魔道具によるトラップはサラダトナスには通用しないだろう、とユキムラは考えていた。

 中身があり思考する敵の怖さ。

 VOと最も違う怖さだ。

 UBM同士のPvP、未知の領域の戦いに、ユキムラは不安とその倍以上の期待感を隠せなかった。

 どんなことが起こるのだろう?

 この先どうなるんだろう?

 長年忘れていたワクワクが自分のなかでどんどん大きくなっていくのに自分自身でも気がつけていなかった。没頭するということは集中するということだ。

 ユキムラが本気の集中を見せるとどうなるか、白狼隊のメンバーは嫌という程見せられてきたが、今までよりももっと高いステージが有ることを一同は思い知らされる。

 

 戦闘たたかいが今、開始される。

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