老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件

穴の空いた靴下

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196話 街を護る壁

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「ユキムラ様、この度は街の危機を救っていただき本当に有難うございます」



 深々と頭を下げてくるハルッセン。

 ユキムラとヴァリィをわざわざ外まで、使用人を含めての総出迎えからの最敬礼だ。



「あらあら凄い歓迎ねぇ……」



「ハルッセンさんそこまでされると恐縮してしまいます……」



 それに深々とお辞儀をされると視線がブラックホールのようにある一ヶ所に吸い込まれてしまう……

 ユキムラの視線の動きがある一点を目指して無意識に動き始めると同時に、殺気にも似た気配を感じ高速で視線を逸らす。

危なかった、反応が遅れればどのような結果になったのか……

ユキムラの背中に冷たいものが伝う。

 ソーカの温かな気持ちはユキムラの反応速度をさらに高めてくれる。良妻の素質である(皮肉)



「街のものを代表して、重ねて御礼を申し上げます。

何から何までユキムラ様達には世話になりっぱなしで、お返しもできず申し訳ありません……」



「ユキムラちゃんは見返りのために動くような子じゃないわよぉ、あまり過度なことすると逆に機嫌を悪くしちゃうわよ」



「そうですよ、この町で商売やら色々やらせてもらってこちらも助かってますから。

 あ、もしわがままを言っていいなら少し実験をさせてもらいたいんですが……」



 それから防壁の魔道具の話はすぐに受け入れてもらえた。

 街の住民への説明も徹底して実験を行う必要があるため、日程の打ち合わせ等も綿密に行われた。

 この実験が成功した後に、次の街への移動もその話し合いの中で伝えられる。



「そうですか……残念ですが仕方がありません。

 この国を守る戦いをなさっているのですからね……

この国をお願い致します!」



 再び頭を垂れるハルッセン、その瞳には薄っすらと涙が滲んでいた……



「まぁ、全ての大陸で対抗策を打った後は色んな国をゆったりと見て回るつもりですから、今生の別れというわけでもないですから」



 ユキムラのその言葉にハルッセンは花が咲いたような笑顔になりヴァリィに向き直る。

 ヴァリィは優しい笑みを浮かべながら無言で頷く。これだけで二人は通じるのだった。

 その大人なやり取りが、ユキムラの瞳にかっこよく映る……

そういう経験は今の見た目通りな青年レベルなのである。



 数日後、街を守る防壁の起動実験の日が来る。

 一応安全のために防御結界内にさらに防御結界を展開して、町民の方々にはその内部で待機してもらっている。

 町民たちは白狼隊への厚い信頼と、サナダ商会の魔道具の信頼度が相まって、防御結界で覆われている広場に露店などが立ち並び、祭り騒ぎでイベントのように楽しんでいた。



「そしたらレン設置は問題ないねー」



「大丈夫です!」



 通信機で連絡を取りながらユキムラとレンが起動実験を行う。

 ソーカ、タロ、ヴァリィは周囲上空から異常がないかを監視する。

 GUは結界が展開した後の、耐久実験のために町の外で待機している。



「それでは巨大防壁装置起動します」



 ユキムラの号令で魔道具に火が灯る。

 街の外壁にそって置かれた魔道具同士を結ぶ光のラインが伸びていく。

 上空にはドーム状に光の線が網目のように広がっていき、全てを満たすとその輝きが安定して段々と透明な姿に変わっていく。



「ヴァリィ、タロ、ソーカ異常はある?」



「こちらヴァリィ、異常なし」



「ソーカ、異常なし」



「ワン!」



「よし、展開は問題ないね、後は強度だ。GUまずは一体で壁を殴れ」



 ガーディアンユニットが一体踊り出てそのまま壁へと殴りつける。

 踏み込む大地が震えるほどの一撃がそこにあるはずの障壁へと叩きつけられる。

 ……はずだった。

何もない中空でその拳は止められる。

細かな網のような光る結界が殴られた部分周囲に現れる。



 ゴワーン!



 低く周囲を揺るがすような音が遅れて発生する。



「腕部機構ニ異常ヲキタシマシタ。

右腕損傷率40%以上。

右腕ヲ使用シテノ戦闘ハ著シク制限サレマス」



「GUヒーラー修理を」



 すぐにヒーラーであるGUが腕部の修理を開始する。



「どう? 上から見て異常ある?」



「大丈夫よー防壁に傷一つついていないわー」



 ヴァリィは防壁を可視化するグラスで防壁の状態をモニターしている。



「内部魔道具にも影響は皆無ですね」



 レンは街の内部で各装置をモニターしている。



「魔法耐性は内部に抗魔結界を張ってもらってるとは言え、安全面を考慮して上空の結界部分をかすめるような形で発射して、射線に建造物を入れないでね」



「大丈夫です! 結界に問題なし、準備OKいつでも行けます!」



 ユキムラは各属性の攻撃魔法を少しづつ威力を高めながら唱えていく。

魔法は結界に当たると滑るように周囲へと拡散してしまい、結果として全ての属性魔法が防御結界に傷一つつけることはなかった。

その後も色々な実験を繰り返したが、結界の安全性を確かなものにするだけだった。



「我ながら、凄いもの作ったなぁ……」



「師匠、周囲の魔素濃度が急激に下がってきています!

 たぶん障壁も維持できなくなります!」



「あ……上空に打ったからか……しまったなぁ……まぁ、欠点はあるよね。

 レン一時障壁停止するよー」



「わかりましたー」



 発生したときを巻き戻すように障壁が解かれていく。

 しばらくすると周囲の魔素濃度も再び安定してくる。



「レン展開時間どれくらいだったー?」



「20分くらいですかね……」



「うーん、敵さんが近くで大量に魔法使えばもっと短くなるよなぁ……

 普段から魔素を蓄積させといて、障壁の外からだけ魔素を吸収するようにすれば……

 敵の魔法も防げるか……」

 

 ユキムラが小声でブツブツと凄い早口で悩み始めてしまう。



「そしたら師匠今日の実験はここまででよろしいですか?」



「あ、ああ。そうだね。ハルッセンさんにお礼を言っておいて。

 俺はこのままちょっと何個か試してみる」



「わかりました」



 その後実験の結果の報告と本日出た課題を改良するためにユキムラは工房に篭りっきりになる。

 数日の後に欠点を改良したタイプを作り出し、すべての実験に於いて満足の行く結果が出たことを見届けるとユキムラは深い眠りへとついてしまった。



 ユキムラが目覚めたら、次の街への出立となる。



 
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