老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件

穴の空いた靴下

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207話 急ぎ足

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 扉を抜けると、青空だった。

 ダンジョン内にいた時間を考えると入った翌日の昼過ぎ、ちょうど内部でも昼過ぎぐらいなのでそのままワープゾーンを抜けてでてきた。

 ダンジョン入り口脇の壁面から突然人が出てきたので、周囲にいた冒険者とギルド職員を驚かせてしまったが、ギルド長も一緒なので大きな騒ぎにはならなかった。

 もちろんダンジョン制覇の知らせが伝わると、それはもう大騒ぎにはなった。



「それではイオラナさん、ダンジョン報酬を渡します。

 たぶん、何がなんだかわからないレベルだと思うのでレンが鑑定の手伝いをしますので」



 見たこともないものの解説をレンに任せる。

 リヴァイアサンの報酬を確かめながらイオラナはこの宝があまりにもハイレベルすぎて、鑑定しても何かわからない状態になるであろうことを危惧していた。

 名前はわかるけど、価値がわからないのは間違いなかった。

 そこでユキムラかレンに協力を要請したのだ。

 目録の作成が済んだら王都へと運ばれる。内容はきっととんでもないことになるだろうから王都からの応援が来ることは間違いないだろう。

 そうなると、王都への連絡、協議、応援派兵、輸送と時間的に大分かかってしまう。

 そこで、ユキムラ達は鑑定が済んだら速やかに次の街ウラスタへと移動する予定だ。

 既に3箇所の大規模な街の領主、それにギルドマスターからの推薦まである以上、ウラスタの街ではスムーズに事が運ぶことは間違いない。

 ささっと防御機構、商店設立を済ませ王都へと移動する。

 こういう予定だ。



 ダンジョン制覇の大騒ぎは街全体に広がり、その主要メンバーがやるサナダ商店も連日セールを行って街の人達は高性能な魔道具を信じられない値段で手に入れることができた。

 ユキムラのうまいところは街全体の商店から仕入れや商品を卸すことで街全体の活気を盛り上げていた。こうすることでサナダ商店だけの一人勝ちになることを巧みに防いでいる。

 これらの方法は既にマニュアルとなって全てのサナダ商会で取り入れられている。

 本来の資本主義的な考え方とは大きく外れるが、ユキムラの世界全てが幸せにという理念のもとに手法が練られていった。

 冒険者としての収入が天文学的なのでその富を分配しているようなものではある。

 我欲があまりない。ユキムラの美点と言っていい性格だ。

 ユキムラ自身はこの世界に来て十二分に満たされているし、毎日が楽しくて仕方が無い。

 まさにWin&Winなのだ。



 それからは商店での人材育成、各種スキル訓練、リヴァイアサンの宝箱の中身を用いた装備の強化などなど、飛ぶように毎日が過ぎていった。 

 予想通り鑑定作業は難航して、結局ユキムラも鑑定にかかりっきりになった。

 あまりに凄すぎてそれがどんなものかを調べられないのだから仕方が無い。

 目録制作もレンとユキムラがほとんどやることになった。



「すみませんユキムラさん、レンさん何日も……」



 ギルドマスターであるイオラナが頭を下げるが、ユキムラは別に苦とは思っていない。



「いえいえ、こうなるだろうなとは思っていたので。

 いやー、それにしても鉱石類は涎が出そうで……我慢するのが大変で……」



「え、武具の方がとんでもないように見えますが……」



 アルティメット・エクスカリバーとかポセイドンパルチザン・改だとか、制作側の苦労が伺え知れる名前になってきた神具、宝具たち。

 正直な話、ユキムラ達が持っている装備のほうが性能がいい。

 

「まぁ、剣と鎧装備すれば軍と戦えるぐらいにはなりますからねぇ……」



 軽い拍子でそんなことを話すが、そんな危険物がここにあることにギルド職員やイオラナ、ガニもゾッとしてしまう。

 ようやく出来た目録を一刻も早く国王へと提出して輸送の段取りを取り付けなければと強く心に誓うのであった。

 宝箱はGUによって厳重に警備されることとなる。

 そのままGUに運ばせてもいいが、まだ王都への説明もしていないのに機械人形を送り込むのは悪戯に不安感を植え付けないか不安になってユキムラがよしとしなかった。

 GUは人間相手には脅威にならないように、犯罪者やそういった例外もあるが、ユキムラが最上級管理者としての権限で決めているのだが、まぁ、そこまで急いでもウラスタへ行く時間も必要だし、国としても宣伝にもなるだろうとあまり深く考えていなかった。



 そんなこんなで宝の目処も立ったので、白狼隊は次の街ウラスタの街へと移動する。

 出立の日取りを伝えると、ガニが送別会をしてくれるというので招待されることにした。

 リゾート仕様の新しい礼服に着替えて、もちろん恒例のお偉方との堅苦しい挨拶や、有力者とのばかしあいなどもあったが、とても楽しい時間を過ごすことが出来た。

 ガニの話ではイオラナの父は洞窟制覇の話を聞きつけ街へ向かっているようで、そこでなんとかイオラナを嫁にもらう許可を『力づく』で得なければいけないらしく、少し胃が痛そうだった。

 レベル的には相手にならなくても、師匠でもあり、リーダーでもある人物への苦手意識は拭えない。

 ユキムラ達はガニの奮戦を応援して会場を後にした。



 こうして、センテナの街での日々は賑やかに過ぎ去り、次の街ウラスタへと出立することになる。

 この国の滞在期間も残り1年ほどになっていた。

 
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