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216話 女神イスラ
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いつまでも閉まることのない壁に懇願していても仕方がないので、レンがユキムラを引っ張って室内に入る。
いつもの見慣れたダンジョンの最下層部屋だ。
中央には凍りついた台座がある。
よく見ると燃え盛る炎の柱がそのまま凍っている。
どういう原理かは理解できないが炎が凍っていた。
「凄いなこれ……」
「炎が凍っていますね……」
「加熱すればいいのかな……魔法でもぶっ放してみる?」
ユキムラが危険極まりない発言をすると恒例の時間停止の耳鳴りが響く。
【えー、ほんとにおこすのー……】
【ぶつくさ言わない! さっさとやりなさい!】
久々登場のフェイリスとアルテスだ。
相変わらずのビキニアーマーで目のやり場に困る。
【ハローユキムラ。また今回もありがとうね~、ほらフェイリス早く!!】
ものすごく嫌そうな顔をしているフェイリスを肘でゴスゴスと小突いている。
【はぁ……アルテスほんとに守ってくれるんだよね!? 絶対だよ!?】
【分かってるから早くやっちゃってよ】
フェイリスは凍りついた台座に両手を向ける。
【火の神フェイリスが告げる、封印よ退きたまえ】
両手のひらから熱線が台座に打ち込まれる。
炎を包む氷を包み込むと氷が溶け始める。
【もう後は勝手に溶けるから先に帰ってるね!】
炎に包まれて転送しようとするフェイリスの首根っこをアルテスがふん捕まえて転送をキャンセルさせる。良い反応速度だなぁとユキムラも感心している。
【だ め よ。最後までいなさい】
アルテスは嫌がるフェイリスを押さえつけている。
押さえつけられているフェイリスはどんどん解けていく台座を見ながらだんだん落ち着きが無くなっている。
「フェイリスさん何がそんなに嫌なんですか?」
【いやー、だってさぁ、溶けたら絶対なんか怒られるからさぁ……】
「怒られる?」
【あら……貴方また怒られるようなことをしたのかしら?】
アルテスでもフェイリスでもない声がその場に響く。
少し年上で気の強そうなイメージを持たせる、とても美しい声だ。
それでもその声を聞いた瞬間グニャグニャと暴れていたフェイリスがビシッと直立になり動かなくなる。細かく震えているような気もする。
【返事は?】
自分に向けての言葉ではないのにその場にいた白狼隊は背筋に冷たいものが走り姿勢を正してしまう。
凍りついていた台座は炎を取り戻し、その炎に包まれるように女性が降り立った。
真っ赤なウェーブがかった腰まで届くロングヘアー、全身金色の鎧に巨大な剣を背負っている。
プリンセスサークレットの中央には巨大な真っ赤なルビーが輝いている。
女性だが、思わず跪いて礼をしたくなる威厳を発している。
【フェイリス!】
【はい!! 何もしてません!! 本当です!!】
借りてきた猫のように直立不動でもう隠せないほどブルブルと震えている。
【イスラ、大丈夫よフェイリスはなにも迷惑をかけていないわ】
【あら、アルテス。久しぶりね。そう、妹がまた何かしたのかと思ったわ】
ニッコリと笑顔になるイスラと呼ばれた女神。
しかし、その笑顔を見ると何故か空気が冷え込んだように思ってしまう。
そしてそれはフェイリスには効果抜群なようだ。
地震でも起きているかのようにガタガタと震えて奥歯がガチガチなっている。
いつもの陽気な雰囲気が世界の果てに置いてきたかのようだ。
「ふぇ、フェイリス様? 大丈夫ですか?」
レンがあまりの様子に話しかける。
【おや? こちらの方々はどなた? 妹の知り合いなのかしら……なにか妹が迷惑かけてない?】
優しく美しい声で語りかけられただけ、ただそれだけなのにぞくり……と、言い知れぬ感覚がレンを襲う。
「い、いえ! フェイリス様には以前大変お世話になっておりますイスラ様!」
【あら、珍しいわね妹が人の役に立つなんて。褒められるなんてめったにないから嬉しいわね】
【彼らは来訪者よイスラ、我々を開放して手を貸してくれているの。貴方も凍結されたでしょ?】
イスラは何かを思い出すかのように顎に指を当てて考え込んでいる。
行動がいちいち気品と色気が有るが、そこはかとない怖さを持ち合わせている。
【ああ……なるほどね……】
【というわけで、今はこの子達に皆で手を貸しているの。貸してもらってもいるんだけど。
貴方の力も貸してあげて、クロノスの時計が有るからそれに力を入れてあげて】
イスラは音もなくタロに近づき時計を指差す。
【再生と想像の女神イスラの力を貸します。ご武運を】
怖さの含まない美しく優しい声で時計へと力が移動する。
「ウオフ!」
タロは力の移譲を確認し軽く吠えてユキムラに教える。
跪いたような体勢だったイスラは優雅に立ち上がりフェイリスのとなりへと歩いていく。
【さて、久しぶりの姉妹の会話を楽しみましょうか。ユキムラさんと言ったわね。
これからもがんばってね】
ガタガタと震えるフェイリスの隣で、最高の笑顔を白狼隊に向けながら火柱に包まれるイスラ、フェイリスも真っ青な顔で一緒にその火柱に飲まれていった。
【なんだかんだ言ってホントは仲悪くないのよあの二人】
こっそりとアルテスが耳打ちしてくる。
【そういえば、敵がクロノスの閉鎖空間にちょっかいを出してきているみたいなの、まだ大丈夫だけどこの先あと二つの国では十分気をつけてね】
アルテスはそう告げると光に包まれ消えていく。
静寂な時間が終わりを告げ、宝と地上へのワープゲートだけが残される。
アスリは目の前の凍った台座が急に消えたことに驚いていたが、女神と会っていたことを告げられると、これ以上ないほどに驚かされるのであった。
アルテスの話していた内容にユキムラは一抹の不安を感じていた。
具体的にどのような妨害が入るかは想像できないが、もう一段階仲間たちの安全対策を講じる必要性を感じていた。
いつもの見慣れたダンジョンの最下層部屋だ。
中央には凍りついた台座がある。
よく見ると燃え盛る炎の柱がそのまま凍っている。
どういう原理かは理解できないが炎が凍っていた。
「凄いなこれ……」
「炎が凍っていますね……」
「加熱すればいいのかな……魔法でもぶっ放してみる?」
ユキムラが危険極まりない発言をすると恒例の時間停止の耳鳴りが響く。
【えー、ほんとにおこすのー……】
【ぶつくさ言わない! さっさとやりなさい!】
久々登場のフェイリスとアルテスだ。
相変わらずのビキニアーマーで目のやり場に困る。
【ハローユキムラ。また今回もありがとうね~、ほらフェイリス早く!!】
ものすごく嫌そうな顔をしているフェイリスを肘でゴスゴスと小突いている。
【はぁ……アルテスほんとに守ってくれるんだよね!? 絶対だよ!?】
【分かってるから早くやっちゃってよ】
フェイリスは凍りついた台座に両手を向ける。
【火の神フェイリスが告げる、封印よ退きたまえ】
両手のひらから熱線が台座に打ち込まれる。
炎を包む氷を包み込むと氷が溶け始める。
【もう後は勝手に溶けるから先に帰ってるね!】
炎に包まれて転送しようとするフェイリスの首根っこをアルテスがふん捕まえて転送をキャンセルさせる。良い反応速度だなぁとユキムラも感心している。
【だ め よ。最後までいなさい】
アルテスは嫌がるフェイリスを押さえつけている。
押さえつけられているフェイリスはどんどん解けていく台座を見ながらだんだん落ち着きが無くなっている。
「フェイリスさん何がそんなに嫌なんですか?」
【いやー、だってさぁ、溶けたら絶対なんか怒られるからさぁ……】
「怒られる?」
【あら……貴方また怒られるようなことをしたのかしら?】
アルテスでもフェイリスでもない声がその場に響く。
少し年上で気の強そうなイメージを持たせる、とても美しい声だ。
それでもその声を聞いた瞬間グニャグニャと暴れていたフェイリスがビシッと直立になり動かなくなる。細かく震えているような気もする。
【返事は?】
自分に向けての言葉ではないのにその場にいた白狼隊は背筋に冷たいものが走り姿勢を正してしまう。
凍りついていた台座は炎を取り戻し、その炎に包まれるように女性が降り立った。
真っ赤なウェーブがかった腰まで届くロングヘアー、全身金色の鎧に巨大な剣を背負っている。
プリンセスサークレットの中央には巨大な真っ赤なルビーが輝いている。
女性だが、思わず跪いて礼をしたくなる威厳を発している。
【フェイリス!】
【はい!! 何もしてません!! 本当です!!】
借りてきた猫のように直立不動でもう隠せないほどブルブルと震えている。
【イスラ、大丈夫よフェイリスはなにも迷惑をかけていないわ】
【あら、アルテス。久しぶりね。そう、妹がまた何かしたのかと思ったわ】
ニッコリと笑顔になるイスラと呼ばれた女神。
しかし、その笑顔を見ると何故か空気が冷え込んだように思ってしまう。
そしてそれはフェイリスには効果抜群なようだ。
地震でも起きているかのようにガタガタと震えて奥歯がガチガチなっている。
いつもの陽気な雰囲気が世界の果てに置いてきたかのようだ。
「ふぇ、フェイリス様? 大丈夫ですか?」
レンがあまりの様子に話しかける。
【おや? こちらの方々はどなた? 妹の知り合いなのかしら……なにか妹が迷惑かけてない?】
優しく美しい声で語りかけられただけ、ただそれだけなのにぞくり……と、言い知れぬ感覚がレンを襲う。
「い、いえ! フェイリス様には以前大変お世話になっておりますイスラ様!」
【あら、珍しいわね妹が人の役に立つなんて。褒められるなんてめったにないから嬉しいわね】
【彼らは来訪者よイスラ、我々を開放して手を貸してくれているの。貴方も凍結されたでしょ?】
イスラは何かを思い出すかのように顎に指を当てて考え込んでいる。
行動がいちいち気品と色気が有るが、そこはかとない怖さを持ち合わせている。
【ああ……なるほどね……】
【というわけで、今はこの子達に皆で手を貸しているの。貸してもらってもいるんだけど。
貴方の力も貸してあげて、クロノスの時計が有るからそれに力を入れてあげて】
イスラは音もなくタロに近づき時計を指差す。
【再生と想像の女神イスラの力を貸します。ご武運を】
怖さの含まない美しく優しい声で時計へと力が移動する。
「ウオフ!」
タロは力の移譲を確認し軽く吠えてユキムラに教える。
跪いたような体勢だったイスラは優雅に立ち上がりフェイリスのとなりへと歩いていく。
【さて、久しぶりの姉妹の会話を楽しみましょうか。ユキムラさんと言ったわね。
これからもがんばってね】
ガタガタと震えるフェイリスの隣で、最高の笑顔を白狼隊に向けながら火柱に包まれるイスラ、フェイリスも真っ青な顔で一緒にその火柱に飲まれていった。
【なんだかんだ言ってホントは仲悪くないのよあの二人】
こっそりとアルテスが耳打ちしてくる。
【そういえば、敵がクロノスの閉鎖空間にちょっかいを出してきているみたいなの、まだ大丈夫だけどこの先あと二つの国では十分気をつけてね】
アルテスはそう告げると光に包まれ消えていく。
静寂な時間が終わりを告げ、宝と地上へのワープゲートだけが残される。
アスリは目の前の凍った台座が急に消えたことに驚いていたが、女神と会っていたことを告げられると、これ以上ないほどに驚かされるのであった。
アルテスの話していた内容にユキムラは一抹の不安を感じていた。
具体的にどのような妨害が入るかは想像できないが、もう一段階仲間たちの安全対策を講じる必要性を感じていた。
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