老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件

穴の空いた靴下

文字の大きさ
220 / 342

220話 海底神殿

しおりを挟む
 今ユキムラは武具を作るためにラナイと……フィリポネア王と一緒にいる。

 レンの装備の威力を目の当たりにした王が、自分もダンジョンへ連れて行ってほしいとお願いしてきた。

 あまりにもしっかりと頭を下げてお願いされてしまい、さらに、ラナイが力を手に入れた時の抑止力が必要だろ、と耳打ちされユキムラには首を縦に振る以外の選択肢を与えられなかった。

 もちろん周囲の人間は反対したが、同様の理由を突きつけられるとぐうの音も出ない……



 ラナイは両手持ちの斧、フィリポネア王はハルバードを得意としていた。

 ハルバードは簡単にいえば槍に半斧が付いている武器だ。

 なんだかんだ装備づくりは楽しい。

 斧もハルバードもあんまり伝説級の武器がないという不遇武器なので、ネームド(作成者が自由に名をつけた武器)が最高級品になっている。

 両手持ち斧 豪斧 次元断。

 ハルバード 天槍海斬り。

 昔ユキムラが作った物をベースに手を加えていく。

 防具はラナイが軽鎧、フィリポネア王はフルプレート、まぁ見た目だけで防御力はどっちも超級で軽く動きやすい。変な話、布のローブでも秘められた防御力は限界まで高めてある。



「ラナイさんとフィリポネア王には軽く武器使ってもらって、技も見せてもらいましょうか。

 自分も交互にお二人の武器を使いますんで」



 笑顔のユキムラに二人は軽い気持ちで鍛錬を始める。

 それが地獄の扉を開いたことを知っているのは白狼隊だけだった……



 丸一日を武具の調整と二人の鍛錬で使用する。

 ユキムラの修羅のような鍛錬量のお陰で二人はそれなりに動けるようになる。

 あとは実践で成長してもらう算段である。

 今日のことを思い出して、二人がしばらく悪夢に悩まされるのはまた別のお話だ。



 数日間の調整と準備期間を設けて、とうとうダンジョンへの突入の日を迎える。

 白狼隊にラナイ、フィリポネア王。王は自分のことをカイと呼ぶように皆にお願いしている。

 二人はカイとラナイと呼ばれパーティにすっかり馴染んでいた。

 二人共久しぶりに絞られていろいろとスッキリしたようだった。



「では、行きましょう!」



 パーティの確認をして鏡からダンジョンへと侵入していく。

 周囲で心配そうにしている王都の人々に見送られながらカイもラナイもそれに続く。

 鏡に吸い込まれるように侵入する姿に周囲は驚きの声をあげる。

 ユキムラ達が入ったあとの鏡はただの鏡に戻っていて、その中へ入ることは出来なかった。



「海底神殿ってとこかね……」



 ユキムラは周囲の様子を伺う。

 鏡を抜けて降り立った場所は巨大な柱が支える神殿の様な印象を受ける。

 どういう仕組みか背後の入口の先には海底が広がっていて魚などが泳いでいる。

 神殿を空気の泡が包み込んでいて、その内部に転移された。そんな感じだ。



「神秘的な風景だな……」



 カイは絶景に言葉を失っている。

 しかし、ラナイはすぐにでも敵と戦いたくてウズウズしているようでしきりに皆を急かしている。

 こりゃガニも苦労する、全員の総意である。



「ラナイさんは余裕を持ったほうがいいですね……」



「しかし、グズグズしている時間はないでしょう! 早く行きましょう!!」



 ユキムラはそういうことじゃないんだけどねぇとは思ったものの、こういうタイプは一度痛い目を見ないとわからないということもわかっているのであまり深く突っ込むことはしなかった。

 そしてその機会はすぐに訪れる。



「ラナイさん、一回引いてください! バラけます、ああ、次の敵を引き込むのはまだ早いですよ!」



「なぁに! この防具があれば数なんて関係ない!」



 戦闘は最初こそ慎重に始まったが、すぐにラナイが暴走する。

 単騎で敵に突っ込み、そして周囲の敵をどんどんと呼び込んでしまう。

 そのせいでダラダラとした戦闘が持続してしまっている。

 大技を考えなしで出すせいで消費もどんどん多くなる。



 結果。



「目が醒めましたか?」



「ここは……」



「覚えてないですよね、MP管理もなく大技を乱発してMP切れで気絶したんです」



「なんと……装備のせいで普段よりばんばん大技を使えるのでつい、しかし、身体は何の問題もない!

 戦うごとに身体に力がみなぎるようで! さぁ次行きましょう! 次!」



「はぁ……どうやら貴方は本物の馬鹿のようですね」



「へ?」



 普段のユキムラからは考えられないほど冷徹な一言。



「貴方が無茶苦茶をするせいで、周りの人間がどれだけ負担になっているのか気がついていないのですか? 何の考えなしに大声出して敵に突っ込むせいで無駄に敵に身構えさせてからの戦闘になる。

 戦闘中にも無駄な移動をしながら行動するので次の敵を呼び込む、敵をまとめるという考えがないので各個撃破になり敵の殲滅に時間がかかる。周りを見ていないで動くから全員が貴方に注意しなくてはならなくなって結局消耗する。意味のないところで大技を使ってMPを無駄に消費して、しかも敵を崩しもしていないからただただ無駄。バフやデバフをレンが一生懸命管理しているのにそれに気を使うことなく好き勝手やってレンのリズムが崩れる。防具だよりの雑な戦いをするせいで魔石の消費も激しい。こういったことを話そうにもダラダラと敵をひきつけて戦闘時間を無駄に長くして話す時間も作らせない。戦闘中に常に騒いでいるせいでパーティ内での修正や会話が出来ない。正直いままでどうやってパーティとして冒険していたのかも疑問でなりません。最深部まで行ったなんてちやほやされていたそうですが、どうやら実際の功労者は貴方以外のパーティメンバーであることは疑いようもありません。正直うちのパーティにおいては貴方がいることでプラスに働く点は一点もありません。しばらく後方で我々の戦い方をじっくりと見て自分との違いを理解するまで戦闘に参加しないでください邪魔です。

 カイさんは今の感じで少しづつ味方との連携を意識していただければ概ね問題ありません」



 ユキムラの静かな怒りにパーティの背筋は寒くなる。

 こうなったユキムラは……しつこい……

 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

yukataka
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...