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220話 海底神殿
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今ユキムラは武具を作るためにラナイと……フィリポネア王と一緒にいる。
レンの装備の威力を目の当たりにした王が、自分もダンジョンへ連れて行ってほしいとお願いしてきた。
あまりにもしっかりと頭を下げてお願いされてしまい、さらに、ラナイが力を手に入れた時の抑止力が必要だろ、と耳打ちされユキムラには首を縦に振る以外の選択肢を与えられなかった。
もちろん周囲の人間は反対したが、同様の理由を突きつけられるとぐうの音も出ない……
ラナイは両手持ちの斧、フィリポネア王はハルバードを得意としていた。
ハルバードは簡単にいえば槍に半斧が付いている武器だ。
なんだかんだ装備づくりは楽しい。
斧もハルバードもあんまり伝説級の武器がないという不遇武器なので、ネームド(作成者が自由に名をつけた武器)が最高級品になっている。
両手持ち斧 豪斧 次元断。
ハルバード 天槍海斬り。
昔ユキムラが作った物をベースに手を加えていく。
防具はラナイが軽鎧、フィリポネア王はフルプレート、まぁ見た目だけで防御力はどっちも超級で軽く動きやすい。変な話、布のローブでも秘められた防御力は限界まで高めてある。
「ラナイさんとフィリポネア王には軽く武器使ってもらって、技も見せてもらいましょうか。
自分も交互にお二人の武器を使いますんで」
笑顔のユキムラに二人は軽い気持ちで鍛錬を始める。
それが地獄の扉を開いたことを知っているのは白狼隊だけだった……
丸一日を武具の調整と二人の鍛錬で使用する。
ユキムラの修羅のような鍛錬量のお陰で二人はそれなりに動けるようになる。
あとは実践で成長してもらう算段である。
今日のことを思い出して、二人がしばらく悪夢に悩まされるのはまた別のお話だ。
数日間の調整と準備期間を設けて、とうとうダンジョンへの突入の日を迎える。
白狼隊にラナイ、フィリポネア王。王は自分のことをカイと呼ぶように皆にお願いしている。
二人はカイとラナイと呼ばれパーティにすっかり馴染んでいた。
二人共久しぶりに絞られていろいろとスッキリしたようだった。
「では、行きましょう!」
パーティの確認をして鏡からダンジョンへと侵入していく。
周囲で心配そうにしている王都の人々に見送られながらカイもラナイもそれに続く。
鏡に吸い込まれるように侵入する姿に周囲は驚きの声をあげる。
ユキムラ達が入ったあとの鏡はただの鏡に戻っていて、その中へ入ることは出来なかった。
「海底神殿ってとこかね……」
ユキムラは周囲の様子を伺う。
鏡を抜けて降り立った場所は巨大な柱が支える神殿の様な印象を受ける。
どういう仕組みか背後の入口の先には海底が広がっていて魚などが泳いでいる。
神殿を空気の泡が包み込んでいて、その内部に転移された。そんな感じだ。
「神秘的な風景だな……」
カイは絶景に言葉を失っている。
しかし、ラナイはすぐにでも敵と戦いたくてウズウズしているようでしきりに皆を急かしている。
こりゃガニも苦労する、全員の総意である。
「ラナイさんは余裕を持ったほうがいいですね……」
「しかし、グズグズしている時間はないでしょう! 早く行きましょう!!」
ユキムラはそういうことじゃないんだけどねぇとは思ったものの、こういうタイプは一度痛い目を見ないとわからないということもわかっているのであまり深く突っ込むことはしなかった。
そしてその機会はすぐに訪れる。
「ラナイさん、一回引いてください! バラけます、ああ、次の敵を引き込むのはまだ早いですよ!」
「なぁに! この防具があれば数なんて関係ない!」
戦闘は最初こそ慎重に始まったが、すぐにラナイが暴走する。
単騎で敵に突っ込み、そして周囲の敵をどんどんと呼び込んでしまう。
そのせいでダラダラとした戦闘が持続してしまっている。
大技を考えなしで出すせいで消費もどんどん多くなる。
結果。
「目が醒めましたか?」
「ここは……」
「覚えてないですよね、MP管理もなく大技を乱発してMP切れで気絶したんです」
「なんと……装備のせいで普段よりばんばん大技を使えるのでつい、しかし、身体は何の問題もない!
戦うごとに身体に力がみなぎるようで! さぁ次行きましょう! 次!」
「はぁ……どうやら貴方は本物の馬鹿のようですね」
「へ?」
普段のユキムラからは考えられないほど冷徹な一言。
「貴方が無茶苦茶をするせいで、周りの人間がどれだけ負担になっているのか気がついていないのですか? 何の考えなしに大声出して敵に突っ込むせいで無駄に敵に身構えさせてからの戦闘になる。
戦闘中にも無駄な移動をしながら行動するので次の敵を呼び込む、敵をまとめるという考えがないので各個撃破になり敵の殲滅に時間がかかる。周りを見ていないで動くから全員が貴方に注意しなくてはならなくなって結局消耗する。意味のないところで大技を使ってMPを無駄に消費して、しかも敵を崩しもしていないからただただ無駄。バフやデバフをレンが一生懸命管理しているのにそれに気を使うことなく好き勝手やってレンのリズムが崩れる。防具だよりの雑な戦いをするせいで魔石の消費も激しい。こういったことを話そうにもダラダラと敵をひきつけて戦闘時間を無駄に長くして話す時間も作らせない。戦闘中に常に騒いでいるせいでパーティ内での修正や会話が出来ない。正直いままでどうやってパーティとして冒険していたのかも疑問でなりません。最深部まで行ったなんてちやほやされていたそうですが、どうやら実際の功労者は貴方以外のパーティメンバーであることは疑いようもありません。正直うちのパーティにおいては貴方がいることでプラスに働く点は一点もありません。しばらく後方で我々の戦い方をじっくりと見て自分との違いを理解するまで戦闘に参加しないでください邪魔です。
カイさんは今の感じで少しづつ味方との連携を意識していただければ概ね問題ありません」
ユキムラの静かな怒りにパーティの背筋は寒くなる。
こうなったユキムラは……しつこい……
レンの装備の威力を目の当たりにした王が、自分もダンジョンへ連れて行ってほしいとお願いしてきた。
あまりにもしっかりと頭を下げてお願いされてしまい、さらに、ラナイが力を手に入れた時の抑止力が必要だろ、と耳打ちされユキムラには首を縦に振る以外の選択肢を与えられなかった。
もちろん周囲の人間は反対したが、同様の理由を突きつけられるとぐうの音も出ない……
ラナイは両手持ちの斧、フィリポネア王はハルバードを得意としていた。
ハルバードは簡単にいえば槍に半斧が付いている武器だ。
なんだかんだ装備づくりは楽しい。
斧もハルバードもあんまり伝説級の武器がないという不遇武器なので、ネームド(作成者が自由に名をつけた武器)が最高級品になっている。
両手持ち斧 豪斧 次元断。
ハルバード 天槍海斬り。
昔ユキムラが作った物をベースに手を加えていく。
防具はラナイが軽鎧、フィリポネア王はフルプレート、まぁ見た目だけで防御力はどっちも超級で軽く動きやすい。変な話、布のローブでも秘められた防御力は限界まで高めてある。
「ラナイさんとフィリポネア王には軽く武器使ってもらって、技も見せてもらいましょうか。
自分も交互にお二人の武器を使いますんで」
笑顔のユキムラに二人は軽い気持ちで鍛錬を始める。
それが地獄の扉を開いたことを知っているのは白狼隊だけだった……
丸一日を武具の調整と二人の鍛錬で使用する。
ユキムラの修羅のような鍛錬量のお陰で二人はそれなりに動けるようになる。
あとは実践で成長してもらう算段である。
今日のことを思い出して、二人がしばらく悪夢に悩まされるのはまた別のお話だ。
数日間の調整と準備期間を設けて、とうとうダンジョンへの突入の日を迎える。
白狼隊にラナイ、フィリポネア王。王は自分のことをカイと呼ぶように皆にお願いしている。
二人はカイとラナイと呼ばれパーティにすっかり馴染んでいた。
二人共久しぶりに絞られていろいろとスッキリしたようだった。
「では、行きましょう!」
パーティの確認をして鏡からダンジョンへと侵入していく。
周囲で心配そうにしている王都の人々に見送られながらカイもラナイもそれに続く。
鏡に吸い込まれるように侵入する姿に周囲は驚きの声をあげる。
ユキムラ達が入ったあとの鏡はただの鏡に戻っていて、その中へ入ることは出来なかった。
「海底神殿ってとこかね……」
ユキムラは周囲の様子を伺う。
鏡を抜けて降り立った場所は巨大な柱が支える神殿の様な印象を受ける。
どういう仕組みか背後の入口の先には海底が広がっていて魚などが泳いでいる。
神殿を空気の泡が包み込んでいて、その内部に転移された。そんな感じだ。
「神秘的な風景だな……」
カイは絶景に言葉を失っている。
しかし、ラナイはすぐにでも敵と戦いたくてウズウズしているようでしきりに皆を急かしている。
こりゃガニも苦労する、全員の総意である。
「ラナイさんは余裕を持ったほうがいいですね……」
「しかし、グズグズしている時間はないでしょう! 早く行きましょう!!」
ユキムラはそういうことじゃないんだけどねぇとは思ったものの、こういうタイプは一度痛い目を見ないとわからないということもわかっているのであまり深く突っ込むことはしなかった。
そしてその機会はすぐに訪れる。
「ラナイさん、一回引いてください! バラけます、ああ、次の敵を引き込むのはまだ早いですよ!」
「なぁに! この防具があれば数なんて関係ない!」
戦闘は最初こそ慎重に始まったが、すぐにラナイが暴走する。
単騎で敵に突っ込み、そして周囲の敵をどんどんと呼び込んでしまう。
そのせいでダラダラとした戦闘が持続してしまっている。
大技を考えなしで出すせいで消費もどんどん多くなる。
結果。
「目が醒めましたか?」
「ここは……」
「覚えてないですよね、MP管理もなく大技を乱発してMP切れで気絶したんです」
「なんと……装備のせいで普段よりばんばん大技を使えるのでつい、しかし、身体は何の問題もない!
戦うごとに身体に力がみなぎるようで! さぁ次行きましょう! 次!」
「はぁ……どうやら貴方は本物の馬鹿のようですね」
「へ?」
普段のユキムラからは考えられないほど冷徹な一言。
「貴方が無茶苦茶をするせいで、周りの人間がどれだけ負担になっているのか気がついていないのですか? 何の考えなしに大声出して敵に突っ込むせいで無駄に敵に身構えさせてからの戦闘になる。
戦闘中にも無駄な移動をしながら行動するので次の敵を呼び込む、敵をまとめるという考えがないので各個撃破になり敵の殲滅に時間がかかる。周りを見ていないで動くから全員が貴方に注意しなくてはならなくなって結局消耗する。意味のないところで大技を使ってMPを無駄に消費して、しかも敵を崩しもしていないからただただ無駄。バフやデバフをレンが一生懸命管理しているのにそれに気を使うことなく好き勝手やってレンのリズムが崩れる。防具だよりの雑な戦いをするせいで魔石の消費も激しい。こういったことを話そうにもダラダラと敵をひきつけて戦闘時間を無駄に長くして話す時間も作らせない。戦闘中に常に騒いでいるせいでパーティ内での修正や会話が出来ない。正直いままでどうやってパーティとして冒険していたのかも疑問でなりません。最深部まで行ったなんてちやほやされていたそうですが、どうやら実際の功労者は貴方以外のパーティメンバーであることは疑いようもありません。正直うちのパーティにおいては貴方がいることでプラスに働く点は一点もありません。しばらく後方で我々の戦い方をじっくりと見て自分との違いを理解するまで戦闘に参加しないでください邪魔です。
カイさんは今の感じで少しづつ味方との連携を意識していただければ概ね問題ありません」
ユキムラの静かな怒りにパーティの背筋は寒くなる。
こうなったユキムラは……しつこい……
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