老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件

穴の空いた靴下

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223話 侵入者

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 神殿もかなり深層までやってきた。

 実際の神殿にこのような地下構造があるかどうかは普通の人が入ってみないとわからないが、ユキムラは一点気になってることがあった。



「なんでアルテス様わざわざこんなダンジョン作ったんだろ……」



「そう言えば枕元に立たれたんですよね?」



「そうなんだけど、ただ女神を開放するなら直接そこに送ってくれればいいのに……」



「少し話を聞いていると、アルテス様達神たちが改変できるところと変えられないようなところがあるように感じます。帝国でのことなんかも、アルテス様は我々に動かさせましたし……」



「ああ、そうだね。……微妙にVOを踏襲しているようなしてないような感じはそこら辺が関係しているのかな?」



 後半部分は自分自身に問いかけるように小声になる。



「師匠何かいいました?」



「いんや、何でもないよ」



「お二人ともコソコソと話している時に悪いですが敵襲です」



「ソーカ、別にコソコソなんて……」



「最近二人の時間なくてすねてるんですよソーカネーチャンは」



 レンは耳打ちをするとすぐに戦闘準備に取り掛かる。

 ユキムラもそんなこと言われても……って状態だが、気をつけないとならないと心に刻みこむ。

 ユキムラにとっての未知なる世界。

 女性の扱い方。

 この分野ではユキムラはレンの師匠ではない。

 どちらかと言えばレンにユキムラが教えを請うことのほうが多い。

 レンも知識だけの耳年増なんだが。

 そこらへんは頼れる兄貴ヴァリィが力になってくれる。

 プレゼントから何からセンスの固まりだ。



 そんなことを説明している間に敵の一団は魔石へと姿を変える。

 このレベルの魔石はそれ一つで都市の魔道具を一年くらい賄えるほどのエネルギーを蓄えている。

 それでも異常な能力を誇るユキムラ達の装備では湯水のように魔石のエネルギーを使用してしまう。

 ようはいくらあっても困らない。

 まだまだストックは大量にあるが、限界戦闘を行う場合はびっくりするほどなくなってしまうのだ。

 魔力集積装置に入れておけばゆっくりと溜まってはいくが、容量の大きい魔石は貴重品となる。

 もちろんここで出るような魔石を市場に流したら大変なことになるのは間違いない。

 せっせと集めて貯めている。GUや結界装置もいい魔石を必要とする。

 いくらあっても嬉しいのだ。



 魔石補充も順調、ダンジョン攻略も順調、ソーカの機嫌もユキムラ特製スイーツで順調。

 二人のゲストもどんどん成長していく。

 攻略速度も加速していく、そしてようやく最深部と思われるエリアへと到達できた。



「雰囲気変わりましたね。ここで最後ですかね」



 今までは柱の隙間から海底部分の美しい風景が広がっていたが、壁に囲まれ空気も重い。

 重厚な雰囲気がユキムラたちを包み込んでいた。

 左右に立ち並ぶ石像がユキムラたちを監視するように見下ろしているような気がしてしまう。



「分岐はなくしばらく一本道だから、進むしか無いね……」



 石像が動いて襲ってくるんじゃないかとビクビクしながら一本道の通路を進んでいくと、正面に三叉の槍と大きな盾を構えた騎士のブロンズ像が、背後の扉を守っているかのように座っている突き当りに到達する。



「これはボスっぽいなぁ……」



 そうユキムラが言葉を発した瞬間、神殿全体が地鳴りのように揺れ始める。



「な、これは……イベント……?」



 何かを砕くような音がどんどんと接近してくる。



「皆注意しろ、なんかおかしい。全員集合して防御結界展開!」



 背後では石像がその地鳴りのせいで崩れて地面に落ちていく。

 柱はビリビリと震えてはいるものの、しっかりと神殿を支えている。

 

 バキャ!!



 轟音が天井から響き、天井がと言うよりは空間が裂けたようにヒビが入る。

 その裂け目から放たれた轟雷が、騎士の像を打ち付ける。

 バリバリと空気を震わせ騎士の像を激しく帯電させる。

 ユキムラたちを護る結界にも雷の余波がバチバチとぶつかり弾けている。

 段々と雷が収まっていき、空中の割れ目もみるみる修復されていく。

 背後の像は崩れたままだが、騎士の像がバチバチと音を立てている以外は神殿が元の姿を取り戻していく。



【あーあー】



 突然第三者の声が神殿に響く。



【お、動くな。おお、悪くねぇなこの身体。

 すげー、高純度なミスリル、いや、合材か……】



 目の前のブロンズ像が立ち上がり喋りだしている。

 手に持つ槍や盾を動かして身体の動きを確かめている。



「……嫌な予感がする……」



「私もよユキムラちゃん奇遇ね」



 ふと見るとヴァリィは少し顔色が悪く冷や汗さえ浮かべている。



【おーい! お前らがサラダトナスの報告にあった女神の来訪者かー?】



 その一言で石像に取り付いた人物がユキムラ達の悪い予感が当たっていることを示していた。



「魔人か……」



【おお! 俺は魔人ザッパル! まぁ、その思念体? っていやーいいのかな?

 実験みたいなもんだ。このまんまだと俺らが後手後手になるそうだから、まぁなんつーの?

 ちょっかい出しに来たわけだ!】



 喋りながらも試すような槍の扱いはどんどん洗練され、空気を切り裂き始める。



【まぁまぁ、動けるな。

 実験は成功ってとこだな、まぁ依代に依存しそうだがな。俺は大当たりだな】



「ダンジョンに無理やり割り込んできたわけか……」



【ああ、お前らの女神さんたちもなかなかやり手で、なかなか苦労したんだぜー!

 俺も、ここに何もなかったらそこいらの石塊に乗り移るしかなかったからな、ギャンブルだったが……

 大当たりだぜ!】



 ブンっと振るった槍から空気を引き裂く衝撃波がユキムラたちを護る結界にぶち当たる。

 ビリビリと結界が震え、異常な衝撃が結界発生装置を襲う。



【おお、すげぇな。壊れねーのかこれで。

 そりゃあいつも焦るわけだ……、さて、ユキムラっつたっけ?

 出来ることならあんたの命を置いてってほしいんだよね~。

 ま、俺はあんたと戦いたくて仕方ないから、答えはいらねーよ!】



 槍の切っ先をユキムラへと向ける。



「ラナイ、カイは後方に下がって3重に結界を貼って動かないでください。

 レン、ソーカ、ヴァリィ、タロ、最初から全開で行くぞ。

 間違いなく、強い」



 結界が受けた衝撃が目の前の敵の強力さを物語っている。

 あと数撃喰らえば結界は破壊される。軽く振るったように発せられた威力でそれだ……



「あーあ、こういう時でもワクワクしちゃうんだよなぁ……」



 ユキムラは小さくため息をつく。



「ザッパル! 簡単に命は置いていけない。

 ほしければ、俺達を倒すんだな!」



【おおおおお!! いいねいいね!

 報告よりも『戦士』じゃねぇかよ!

 やり合おうぜぇ!!!!】



 ユキムラは丸みを帯びた籠手に換装する。

 ユキムラが最も自信のある近接スタイルだ。

 それを見て白狼隊も引き締まる。本気だ。



 突然の乱入者との戦いが始まる。
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