老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件

穴の空いた靴下

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225話 女神マルン

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 奥の扉にユキムラが手をかけるとレンが声をかけてくる。



「師匠、あの乗り移られた石像ってボスなんですよね?

 宝箱ないんですかね?」



 考え事をしてそのまま奥に行こうとしていたのでうっかりしていた。



「ああ、確かに。ありがとう。ちょっと考え事に集中してた」



「そういう顔してましたからねぇ」



 周囲を見渡すと宝箱が置いてあることに気がつく。

 石造りの作りの空間に石模様の宝箱はまるでカモフラージュでもされているかのようでわかりにくかった。

 石造りの宝箱は風合いがあってユキムラは気に入って持ち帰っていた。

 内容物はユキムラが一番嬉しい鉱石の詰め合わせだった。

 危うく見落とすところだったのでユキムラはレンに頬ずりをして感謝した。

 久しぶりのご褒美にヴァリィが興奮していたのは内緒だ。

 新刊を楽しみにしている読者が身近にいるので執筆に熱が灯るのはいいことなのだ。

 最近はユキムラとソーカが普通にカップル(死語)しているので、いまいち筆に力が乗らなかったヴァリィだが、同じくちょっとほっとかれて寂しいレンが、ユキムラの役に立てて嬉しい半面、久々のスキンシップで照れている表情なんかを見ると、湯水のように次回作への構想が溢れ出していた。

 

「ああああ~~~! やっぱりいいわぁぁぁぁぁ!!」



「な、何じゃいきなりびっくりした!」



「はっはっは、師弟の仲が良いことは良いことだな」



 ラナイもカイもヴァリィの発言を少し誤解していたが、別に訂正する必要もない。



 そんなこんなで、ボス討伐の宝も無事手に入れた白狼隊一行はダンジョン最深部最期の扉に手をかける。

 お約束のように最後の部屋の中央には上部から大量の水が流れており、その中には眠りし女神がいる。

 装置を操作することにより流れ落ちる水の堅牢は解き放たれ女神が顕現する。

 と、同時に世界の時間が止まったような毎度の感覚が起こる。

 天井から落ちる水滴も空中で停止している時間の中で、その女性は薄っすらと目を開いていく。

 文字通り水の羽衣のような美しい姿、眠る姿も女神の名に恥じない神々しい美しさ。

 フワフワとした服装でもわかる均整の取れた美しいプロポーション。

 正統派美人系女神の目覚めである。



【へーーーーーーっくし!! ってんだちくしょい!】 



「「「「え?」」」」



【あーったく! もうびしょびしょじゃねーかよ、くっそあんなとこ突っ込みやがって!

 へっくしょん! あー、鼻水出た。まあいいや拭いとこ】



 豪快にでた鼻水を美しい衣で躊躇なく拭こうとするので思わずユキムラはポケットっティッシュを取り出す。



「これ、使ってください!」



【お! サンキュー! 

 フン! ブビーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!】



 いろいろと台無しである。

 本当に綺麗なおねぇさんなんだが、見た目は。

 今も鼻かんだちり紙をその辺りにポイ捨てして、少し手についたのをスカートで拭こうとしてユキムラが使い捨てウェットティッシュで拭いてあげている。



「……アルテス様……お願いします……」



【ははは……いい子なのよマルンはとってもいい子なのよ。

 こう見えて料理も上手だし、掃除は……うん。料理は上手よ、作った後大変なことになるけど……】



【おー! アルテスじゃん! 久しぶりぶりのうん【言わせねーよ!?】



「……早いとこ現状説明してちゃっちゃとお願いします……」



 全員目が死んだようになってしまう残念女神だ。

 料理は上手で見た目はとても素晴らしい。

 素晴らしいのだ……



【オッケー! そしたらここにぶち込めば良いのねー!

 あ、今ぶち込むで変なこと想像したっしょーやだーエローい!

 それにしても真っ白いワンコの首に……真っ白い……わん……こ……】



「ガルル」



 小さなノド鳴り。それだけで残念女神マルンは滝のような汗がほとばしる。



【し、失礼します。全力を持って我が力を注がせていただきます】



 光り輝く女神の力がクロノスの箱へと注ぎ込まれる。

 さっきまでの下品で下劣だった女神は、借りてきた猫のように大人しくなる。



【それではユキムラ! あとは王様に話しつければこの国もおしまいね。

 あ、そう言えば、本格的にあちらも手を出せるようになってきちゃったみたいね……

 こちらはこちらで出来る限り頑張るから、ユキムラたちも頑張って!

 全部終わったら祠に来てね、そしたら次の国へ送るわ!】



【そ、それではタロ様、し、失礼致します】



 まるで女神のようにしずしずとアルテスの後を歩いて光のゲートに消えていくマルン、ずっとそのモードならそれはもう素敵な女神なのに大変に残念だ。



「なんかタロに怯えてたのかな?」



「わんこ苦手なんですかね?」



「わうん!」



「まぁ、アレくらいおしとやかな方が良いよね」



 白狼隊メンバーが談笑していると例の時間停止が終了する。



「ん!? 消えた……? ユキムラ殿今そこに女性の姿が??」



「ああ、女神マルンは無事に神界へと帰りました」



「おおおお!! まさか女神のお姿を見ることが出来るとは!

 我が王都を守護せし女神マルン様……フィリポネア王としてこれほどの僥倖はありませぬ……」



 カイは涙を浮かべている。

 本当に逢わせなくてよかった。

 白狼隊のメンバーは心の底からそう思わざるを得なかった……

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