老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件

穴の空いた靴下

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227話 テンゲン和国

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 光に包まれた白狼隊の一行は暖かな浮遊感という不思議な感覚を覚えていた。

 どちらが上か下かもわからないが、不快ではない、むしろ心地よくまどろむような感覚だ。

 どれくらいの時間が経ったのか感覚が鈍くなっているが、段々と身体が重力を感じてくる。

 スッと足が地面を捉えて重力も強くなる。

 暖かい感覚が消えていくのが名残惜しい、同時に森の、緑の香りが鼻孔を刺激する。

 肌が風を感じる。そして包み込んでいた光が弱くなっていく。

 ユキムラ達は森の中の少し開けている花畑に立っていた。



「テンゲン……なのかな?」



「ついたみたいですね……」



「花の香りがする……」



 全員少しづつ感覚を取り戻している。

 いつも通り、RPGで言えば布の服みたいな格好になっているので、タロの道具箱から各種装備を取り出す。これもいつもどおりだが、華美な装飾は排除して偽装している。

 一見するとまぁ初級から中級冒険者の装備だが、実際にはとんでもない装備だ。



「さてと、ここがどこかはわからないけど、獣道がこっちに続いているからまぁ普通に進もうか」



 あっという間に必要な道具の作成、アイテムバッグなどを作り出し旅に必要な準備は揃う。

 時空をまたげるアイテムボックスの容量もほぼ困ることの無い容量まで拡張している。

 転移後からバリバリ全開で動き始められる。

 車でぐわーっと移動しても良いのだが、村落が想像よりも近くて騒ぎになっても困るのでホバーボードで移動を開始する。

 しばらく獣道を進んでいきながら周囲のマップを作成しながら採取などをする。いつもの行動をしながら進んでいくと小さな村が現れる。

 マップで把握できる範囲内では基本的には森の内部。

 周囲を木製の柵で囲まれた小さな小さな村だ。

 獣道と村を挟んで反対側には少し整備された道が続いている。

 人の生活圏内はあちらへと伸びているんだろう。

 村の建物もいかにも周囲の木を切り出して作られたと思われる木造、それでも建築様式が独特で合掌造りと呼ばれる美しい屋根を始め決して見窄らしい印象は受けなかった。



「どうしようか、ここまで奥地の村だと警戒されないかな?」



「なんかファス村思い出しますね……」



「私もそう思ってた」



「二人の出身地よね、サナダ街って最初こんな感じだったの!? ユキムラちゃんってほんと恐ろしいわね……」



 まぁ、悩んでいても仕方ないので冒険者として村へと入ることにする。

 獣道がわからいくとあまりに不審なので回り込んで大きな道から村へと入ることにする。

 特に門番もいないのでそーっと村へと入ろうとする。

 近くで野菜を干していた中年の男性が村へと入ろうとする白狼隊に気がつく、なんでもないように目をそらし、驚いて二度見する。



「お、お前ら!? な、何者だ!?」



 尋常じゃない驚き方に少しびっくりしてしまったユキムラたちだが、とりあえず想定通り自己紹介をする。



「冒険者をしているユキムラと申します。こちらに村が見えたので少し休憩させてもらおうかと……」



「お前ら、あの道から来たんだよな!?」



「あの化物を退治してきたのか!?」



 すぐに人が集まってきて質問攻めにあってしまう。



「えーっと、実は道に迷って……」



「道に迷うったって、この村はフォージ山に囲まれて街へ出るにはあの崖の道を通るしか無い!

 そうしたらあの化物を倒さなきゃ通れないだろ!?」



「あ、その、えーっと。実は私来訪者でして、その、森の中に転送されたりしたんで……その……」



「来訪者!!! おおおおおお!! 救い主様じゃ!!」



「言い伝えの通りじゃ!! ありがたやありがたや!!」



 拝みだしたり涙を流して感極まったりする人まで出てくる。

 

「すみません。もしよろしければ詳しいお話を聞かせていただけませんか?」



 頼りになるのはレンである。

 この村、ライセツ村の村長の家で話を聞くことをまとめてくれる。





「儂がライセツ村の長をしておるブゲンじゃ」



「白狼隊のリーダをしています。来訪者のユキムラと言います」



 ブゲンは白髪交じりの長髪を後ろで結んで、見た目は60辺りと思わせる老人だが、妙に雰囲気がある。



「ユキムラ殿、名前が我が国のような雰囲気がありますな。

 伝説の来訪者……そしてこの村にとっては伝承の救世主様……」



「その救世主というのは?」



「この村は人里離れた場所にありますがその歴史は非常に古いのです。

 近くにある霊峰フォージ山から流れ込むトライ湖、そこから取れるサカケの枝や実はこの国の神事では欠かすことの出来ない神聖なものなのです。

 それを都に納めることでこの村は長い時を過ごしてきたのです。

 それが街へとつながる死の風穴を抜けられる、唯一の道にあの化物が突然現れたのです。

 それからは街からの連絡も取れず、たぶん侍衆も討伐に当たっているとは思うのですが、あの化物は死の風穴を巧みに利用するために難儀しているのでしょう……」



「そこに我々が現れたと……」



「古くから伝わる我が村の言い伝えに、この村が閉ざされ滅びる様な自体が起きた時、霊峰フォージ山より救いの主が降り立つであろう……と言うものがありまして。

 それが白狼隊の皆様のことであることは間違いありません。

 この村へ来る道はその道以外にない、つまりあなた方は霊峰よりいでし救世主にほかならない!!」



 おじーちゃんが興奮して顔を真赤にして力説する。

 ユキムラもまぁ村が困っているなら助けようか、そんな軽いノリで討伐を引き受けてしまう。

 詳しく話を聞くと死の風穴とは南にあるミツゲツ街とライセツ村を結ぶ道の両側に広がる谷で、冥府へとつながっているとされていて、落ちて助かった人間がいない死の谷になっている。

 ライセツ村は西北東はフォージ山の険しい山脈に囲まれており、森林と湖しかない。

 食事などは狩りと農地でまかなえているがこのままだといずれ塩などが尽きてしまう。

 その化物が現れて3ヶ月未だに外界との連絡は一切取ることが出来ていない状況だった。



 ユキムラはVOでの知識があるので位置関係は把握したが、イベントなどはまるで聞き覚えがなかった。

 強いて言えばフォージ山、トライ湖、死の風穴にはMDがあるだろうことを知っているだけだった。
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