老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件

穴の空いた靴下

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259話 新居祝いの夜

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「おおおおおおおおおお!!」



 照明がつき装いを変えていく庭園に招待客は歓声を上げる。

 傾いた夕日に照らされる木々は赤く燃えるように美しく、薄暗くなる湖は湖底から魔道具による照明によって光の演出の様に輝いている。

 暗くない程度に、しかし、過度に明るくならないように調節された照明。

 ロマンチックな空間に様変わりしていく。



「師匠すごいですよ! こんな景色見たことありません!」



「ユキムラちゃんがこういう造詣に深いとは思わなかったわぁ……」



 ヴァリィが感心しているなら大成功だろう。ユキムラは満足している。



「……すごいです……ユキムラさん……なんか、涙が出ちゃいました……」



 さっきまで食事に明け暮れていたソーカも目元をこすりながら、その変化に心を揺さぶられたようだ。

 ユキムラの日本でのイルミネーションを参考にしているが、こんな照明の使い方は、ある意味余裕がある使い方だ。この世界でそんな使用方法が出来るほどの余裕がある場所は無いだろう。

 誰も見たことのない初めての幻想的な景色はこの世界の人々の心を感動させたのだ。

 ライコとソーシもその風景にすっかり魅了されている。

 

「この景色を酒に映して飲む。これは天上の楽しみですな……」



「まさに……」



 酒の水面みなもに映した情景をくいっと飲み干す3人。

 大人な3人の所作にレンは少しかっこいいなと思う。しかし、翌朝頭痛を抱えて助けを求める大人たちを見て考えを改めるのでありました。



 いろいろなことがあったが、大成功で幕を降ろす新居祝いの集いなのでした。

 ユキムラも何人かの政治に関わる人達とパイプを作ることが出来た。

 特に軍事面の中枢にいる人間と関係を作れたことによって、今後白狼隊式ブートキャンプに国防に携わる人間の参加を期待できる。



 もちろん、テンゲン和国だけが屈強な軍隊を手に入れるのは長い目で見ると危険なので、世界がもとに戻った後にユキムラは各国でも同じような事をしようと考えている。

 もし、野心を持って軍を動かすような国がいればユキムラはGUを使ってでも潰す覚悟でいる。

 

 なんにせよテンゲン和国最後のダンジョンでの鍛錬の準備はここに整った。

 ギルド側と打ち合わせをしながら、白狼隊隊士の訓練と並行しての日々が始まる。

 ユキムラ達に隊員とギルド、そしてソーシの部下という混合部隊で浅い階層での訓練を慎重に始める。

 ギルドやソーシの部下達は見たこともないレベルの魔物に当然手も足も出ない。

 ユキムラたちや隊士達の人間離れした動きにただただ圧倒されるだけだ。

 それでも貸し与えられた武具は圧倒的性能で自分たちをサポートしてくれて、数度の訓練ですぐに戦力になれる動きが出来るようになっていく。

 交代で毎日の訓練をこなしていけば、数ヶ月で圧倒的な成長を遂げるのである。

 

 ソーシが自らの部下の圧倒的成長という形での結果も有り、テンゲン和国のトップである帝からの謁見の通達を知らせがユキムラ達に来るのも当然だった。

 レンも政治工作、といっても黒いものではなく至極まっとうな商会としての国への協力などを通して帝都においてもサナダ商店の存在感を増すことに成功している。



「ユキムラ殿、それに白狼隊幹部の皆様、テンゲン和国の帝が皆さんとの会見をご所望なさっている。

 ご同行願えないだろうか?」



 もちろん事前に先触れは来ている。

 ユキムラ達白狼隊幹部の4人と1匹はヴァリィ製の和装でビシっと決めている。

 テンゲン和国は確かに式典とかでは着物『風』衣装を使うこともある。

 ユキムラが用意したのは紋付袴に振り袖というガチガチの和装。

 これもまたひと目を引いた。

 ユキムラは正統派イケメンなので何を着てもそりゃーよく映える。

 ソーカはキリッとした顔つきに上げた髪型と着物の相性が抜群にいい。

 ユキムラもうなじらへんをチラチラと見てはデレデレしている。

 中身のおっさんのどストライクど真ん中を攻めている感じだ。

 レンも可愛らしい顔つきと着物の凛々しさのアンバランスが逆に魅力的で、より可愛らしさが強調されている。

 ヴァリィはガタイがいいので着物が非常に雄々しく格好がいい。

 しかし、やはりタロの紋付き姿は別格の可愛さで愛嬌が溢れ出てしまう。

 見るもの全てを笑顔にさせる兵器と化している。

 ソーシの部隊が先行してホロのないオープンなタイプの馬車で城までの道を進む。

 もうすでに街での知名度も人気も高まっているのでまるでパレードのようになっている。

 町の人達の歓声に見送られて城に通じる正面の大門を通過していく。



「ここからは馬車では進めませんので、ご一緒願います」



 ソーシは軽装ではあるが甲冑を着ているのだが、それがまぁ絵になる。

 まさに武士もののふ。ユキムラの時代劇好きな血が沸騰していた。



「街と違って城はキンキラではないんですね」



「白塗りの漆喰壁に深い青、遠目には黒く見える瓦。至高にして究極の組み合わせだよねぇ」



 四層天守の美しい城郭。

 美しいだけではなく堅城としても攻略が難しそうな威風堂々とした佇まいだ。



「しかし、巨大な城ですね……」



「ええ、有事には城に立てこもり生活が出来るようになっております。

 かなりの人数が立てこもれる作りになってますよ」



「有事と言っても、別に他国の侵略を受けたこととかはないんですよね?」



「ええ、残っている資料からだと人からの侵略はありませんでしたね。

 ただ、魔物や強力な魔人の攻撃を受けた記録はありますね」



「魔人ですか……」



「かなり古い記録なので正確にはわかっていませんけどね。

 そういった伝記が好きなので知っているって程度なので詳しくはちょっと……」



「そうですか、いえいえ、ありがとうございます。興味深い話が聞けました」



 そんな世間話をしていると天守へと到着する。

 頑丈そうな鉄製の扉を門を守る衛兵が開けてくれる。

 とうとう天守内部とご対面だ。

 

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