老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件

穴の空いた靴下

文字の大きさ
263 / 342

263話 訓練&訓練

しおりを挟む
「な、なぁユキムラ? 夜はしっかりと寝たほうが良いのじゃ……

 こ、こんなにたくさんは無理なのじゃ……

 ゆ、許して……」



「ダメですよ、他のメンバーの使う技も頭に入れないとパーティとして動けませんから。

 それに、まだ夕方です。2時間くらい『しか』やりませんよ。

 続きは食事の後ですよ」



 その日からオトハにもユキムラの笑顔が悪魔の微笑みに見えるようになった。

 昼間は戦闘に続く戦闘、早めに切り上げて拠点で座学だ。

 どっさりと積まれたユキムラ特製の教材の山。

 もちろんオトハだけではない。全員参加。

 白狼隊正規メンバーは全員の夜ご飯を作ったりしている。



「べ、勉強は嫌いなのじゃ……」



「勉強はあくまでも基礎ですよ、実際の戦場では無限に近い選択肢から最適解に近いものを瞬時に選ばないといけませんから、知っていてやらないのと、知らなくて出来ないってのは結果は同じですが天と地ほどの差があります。自分の命だけでなくて仲間の命がかかわっているんですから多少大変かもしれませんけど基礎知識として頭に入れておいて損はしないと思います。むしろ知らないことで仲間を危機に陥れて後悔するのは絶対に自分なんですから、その場面を想像すればこういった基礎的な最低限の知識を身に着けるのはむしろ必要最低限の準備だと思いますよ。もちろん同じメンバーでずっと冒険をすることで戦い方やチームプレイを作り上げるスタンスもありますが、それも大変長い時間が必要になります。色々なメンバーと冒険する際に毎回長い時間をかけて戦い方のスタイルを作っていくよりも基礎をしっかりと作っておけば短時間でそれぞれの役割を演じることが可能になります。稀に天才といわれる人は確かにいます。基礎的な知識がなくともその場面においての最適解を直感で把握して行動することができるタイプの人間です。もしもあなたがそういう人間ならこのような座学は必要ありませんね。そうなんですか?」



「いえ……ちゃんと勉強します」



 隣で聞いていたケイジ、ソーシ、ほかのメンバーもいつの間にか正座で教本に向き合っていた。

 こういう時のユキムラは、怖い。



 朝から昼までダンジョンで戦闘、夕方から夜まで座学、夕食や風呂などを済ませたら戦闘指導とミーティング。これが延々と続く。

 しかし、誰一人音を上げることはない。明らかに日々自身の力が成長していくのがわかる特訓にどんどん嵌っていってしまう。

 一週間ほど終えると一回帝都へ帰宅して休日。

 あとはメンツを交代しながらの繰り返しだ。

 もちろんダンジョン内での一週間なので外時間だと一日足らずだ。

 この生活を一か月も続けていると、立派な戦士はいじんが出来上がる。



「それじゃぁ龍の巣ダンジョンもクリアしちゃいましょうか。

 メンバーは白狼隊が10名、それにオトハとケイジで挑むことにします」



 数ヶ月も経過すると、パーティとしての動きは一つの塊として動けるようになり、ダンジョン攻略の準備が十二分に完成された。満を持してのダンジョン攻略である。



「ユキムラ殿、留守はお任せください。

 おかげで親衛隊も精鋭ぞろい、私自身もまさかこのような成長を遂げられるとは……

 オトハ様、ケイジ殿をよろしくお願いします」



 ソーシとライコは留守番だ。

 親衛隊を含めて交代で白狼隊キャンプに参加したおかげで帝都を守る兵士たちも屈強な精鋭に成長した。ギルドを介して冒険者の底上げにもユキムラは積極的に協力している。

 5チームに分かれての育成は今後魔神との戦いに向けての味方戦力の増強に有効な手段であることは間違いない。

 問題は、MDがクリア後には特殊仕様でなくなってしまうことだ。

 しかし、ユキムラには一つ案があった。

 すべての国での旅を終えて、戦闘準備に入ったらそれを利用しよう。そう考えてる手段がある。

 それが実行に移されるのはもう少し先の話となる。



「それじゃぁ、行きましょう!」



 ユキムラの号令でついに龍の巣ダンジョン最終攻略パーティは出発する。

 浅い階層の敵はすでにパターンも完全に理解しており、敵ではない。

 蹴散らしながらずんずんと山道を登っていく。

 龍の巣ダンジョンはリアルでの作りと似て、階層が上がると山道エリアと洞窟エリアが入り乱れる。

 山道エリアは翼龍、地龍、龍人がバランスよく襲ってくる。

 洞窟エリアは地龍と龍人が中心だ。

 たまに洞窟湖などがあって水龍なども出現する。

 龍属性の敵は強力で戦闘も油断は出来ないが、それでも特攻特防対策をしっかりとしている白狼隊パーティにかかれば危なげのない戦闘を行うことが出来る。

 最終回層まで踏破予定なので、疲れを残さないようにしっかりと余裕を持ってセーフエリアでの休憩も取っていく。

 まさに盤石の攻略スタイルを取っている。



「ふぅ、今日はこの階層までじゃの」



「そうですねオトハちゃん。だんだんペース掴んできたね」



「教える者が優秀だからじゃの!」



 がっはっはとオトハとユキムラが笑いあっている。

 ユキムラもオトハに敬語を使うのは止めて最近は息が合う用で戦闘でも近接戦闘スタイルでタッグをよく組んでいる。



「……最近オトハ様と師匠の仲がいい……」



「ユキムラ殿はオトハ様にとって対等以上で接してくれる貴重なお人だからでしょうな」



「なによレン、あっ! もしかしてヤキモチー?」



「な、なに言ってんだよソーカネーチャン!

 ただ、楽しそうだなーって思っただけだよ!

 ネーチャンだってほっとかれてふてくされてたじゃないか!」



「だ、だってー……」



「あらーユキムラちゃんは大人気ね~タロ?」



「わうん!」



「しかし、中腹以上まで上がってきて、このように気安く談笑できるとは……

 白狼隊の強さを垣間見てるような気がします」



「もうケイジさんも引けを取らないじゃないですか!」



「そうですな。私もまだここまで成長するのかと驚いています……」



 ケイジは白狼隊と共に過ごしてから、自分の限界を置いていた事に心の底から反省をしていた。

 勝手にここまでが限界だ。自分には無理だと考えて諦めていた。

 それをいとも簡単にユキムラ達がぶち壊してくれた。

 

 諦めていた気持ち、それを、諦めるなんて愚かなことだ。

 ケイジの心はある一つの決意を固めていくのでありました。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

yukataka
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...