老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件

穴の空いた靴下

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267話 金龍戦

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 タロを中心とした対金龍メンバー。

 絶対的な信頼を置いて銀龍はユキムラとオトハに任せている。

 激しい戦いの気配が伝わってくるが、他に気を散らす様な事をさせてくれる相手ではないことは全員が肌で感じている。

 銀龍よりも明らかに金龍が格上だ。

 迂闊には動けない。



「アオーーーン!!」



 皆の過度の緊張を感じ取ってタロが闘いの雄叫びを上げる。

 タロの雄叫びには補助魔法のような効果があり、全員の身体に力がみなぎる。



「ごめんタロ、少し緊張してた」



 ソーカは優しい微笑みを見せる。



「いつも通り行きましょう。相手の長所を潰して、こちらの長所を活かすいつもの闘い方で」



「そうよー、ちゃんとしないと後でユキムラちゃんのお仕置き部屋行きよー」



「あ、有り難いことだが、今回は遠慮させていただこう……」



 ケイジが苦笑いを浮かべる。

 全員の緊張はすっかり取れていた。



 戦闘が始まると淡々としている。

 銀龍側からはノリノリの必殺技を叫ぶ二人の楽しそうな声が聞こえてくるが、金龍側は仕事のように戦闘を行っている。

 何と言っても変化したタロが、……圧倒的すぎた。

 

「タロが押さえ込んでる間に立体大魔法準備、近接部隊は遊撃に徹してください」



 しばらく戦ってその圧倒的な戦闘力を見せつけられ、レンもタロ頼りの戦術を選択することを躊躇しなくなっていた。

 組み上がった魔法陣に即座にタロが金龍の首根っこを咥えて放り込んでくれる。

 大きくなったと言っても金龍と比べれば小さなタロが、軽々と金龍にかじりつきさしたる抵抗もなく引きずっていく、もちろん金龍も必死に身体を動かして拘束を外そうとするが、まるで動じない……

 ぽいっとゴミ箱にゴミを放り込むように魔法陣に投げられ魔法が発動する。

 高速の水と風の刃が金の鱗を引き裂いていく、怒りに任せてその巨大な尾で皆を薙ぎ払おうとするが、タロは片手でその巨体の尾を地面に叩きつける。

 

【ギャッハ……】



 苦悶の表情を上げる金龍に他のメンバーからの追撃が襲いかかる……



 こんな一方的な戦闘が延々と繰り返される。

 銀龍側から凄まじい衝撃が伝わり、戦闘の終焉を知らせてきた頃……

 金龍はまさに心を折られたようにその鎌首を地に伏してもう動くこともなく、静かに光の粒子へと変わっていく。

 その綺羅びやかな外見とは裏腹に、静かな最期だった。



「お疲れ様でした。タロのおかげでだいぶ楽させてもらっちゃったね」



「タロー、強くなったねぇ~」



 スタスタと仲間のもとに歩いてきながらタロの姿が元に戻っていく。

 

「ソーカ様、周囲の魔物はどうしましょうか?」



 隊士はソーカに伺いを立ててくるが、周囲の魔物はまるでタロを新たな主に決めたかのように突っ伏して微動だにしないでいる。



「敵意がなければ無理に倒す必要はありません。先に進みましょう」



 淡々と事務連絡をしているところにオトハとユキムラが合流する。



「はっはっはー! どうじゃー! 大物退治と洒落込んだのじゃぞ!

 ワシとユキムラの必殺技で銀龍を懲らしめてやったのじゃ!!」



 オトハは上機嫌だ。思いっきり暴れたのだし仕方がない。



「タロー、凄い強くなったなぁ……ありゃ、俺も全く歯が立たないなぁ……

 でも、ありがとうなぁー。

 皆もご苦労様、驕ること無く実直に仕事に徹することができれば一人前だ。

 お疲れさま!」

 

 隊士の胸に感動の波が押し寄せる。我慢しきれずに泣き出すものもいる。

 あのユキムラに一人前と言われることはそれだけの名誉なのだ。



「師匠、ここが最後なんでしょうか?」



「うーん、なんか、ここはイレギュラーな中ボスだと思うんだけど、それにしては敵が強かったんだよねぇボスでもおかしくない……それに……あ、やっぱり宝箱もあるからボスなのかなぁ……」



 部屋の奥に宝箱が出現していた。

 そしてその横にはいつの間にか扉が現れていた。

 今までのパターンからだとあの扉を抜けるといつもの部屋になって神か女神を解放して攻略という流れだ。

 しかし、なんとなくユキムラは腑に落ちていなかった。

 取り敢えず宝の中身を吟味していると、その小さな予感は消えてしまっていた。



 しばしの休息を取り、最後の扉を開ける。

 ユキムラの予感とは裏腹に、いつも通りの真っ白な部屋。

 しかし、特に部屋の中央に女神や神の像はない。

 そして、ダンジョンを制覇した者に与えられる宝も見当たらなかった。



「あれ? なんにもないな……」



 ユキムラが皆の方を振り返ろうとした瞬間、真っ白な部屋の床一面が黒くなる。

 それが床の消失を意味することに気がついたのは身体が落下を始めてからだった。

 同時にユキムラの恐ろしい記憶が呼び起こされる。

 その真っ暗な床の奥から、暗闇よりも深い闇の影が迫ってくる。

 身体は自由落下を始めているはずなのにまだ中空に停止いている。

 その停止した時間の中を、影はにじり寄ってくる……

 この感覚は……あの感覚だ……



(タローーーーーー!!!)



 心の中で叫ぶ、声が声帯を震わせて形作るのを待っている暇はない。



「アオーーーーン!!」



 鋭い鳴き声と同時にタロ、ユキムラ、レン、ソーカ、ヴァリィ、そしてオトハの時間が取りもどされる。

 喉元まで近づいていた影を払い除け、その間にタロが『停止している時間にいる仲間』をまとめて保護してくれている。

 レンも魔法で落下を防ぎ、周囲から脱出の方法を探る。



【ちっ……油断してるからイケルと思ったんだがな……

 あの蜥蜴共余計なことしやがって、あんな変化聞いてねーぞ……】



 闇から声がする。

 同時に失われた足場が復活する。

 しかし、以前の白い部屋ではなくゴツゴツとした岩場の広場、龍の巣の洞窟部分に巨大な空間が出来たような作りだ。



【ま、あんだけ長い間待ち続けて、暗殺で終わるのも興が冷める……

 どっちにしろ殺けすが、楽しんだほうが良いよな】



 闇が人の形を成していく。龍人にも似ているが、禍々しいオーラは魔人のソレ。

 サラダトナス、ザッパルに続く3人目の魔人との対面であった。
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