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296話 攻防
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いつの間にかユキムラの手をとって奥へと誘いざなっていく。
ソーカがまるで戦闘時の反応を見せてユキムラの隣へと飛び出そうとするが、レンとヴァリィが必死に抑えている。
「ソーカねーちゃん、ここは堪えて!」
「ソーカちゃん、ここは、我慢。我慢よー」
後ろの方でモゴモゴとやっている白狼隊も、大聖堂内の式典の場に参列する人たちの列に並ぶ。
美しい女神アルテスの像のもとに、ケラリス神国に預けられている女神の腕輪が置かれている。
ユキムラの到着に合わせて封印を解かれ皆の目前に置かれている。
年に一度の式典ぐらいでしか見ることの出来ない腕輪はその場に居るすべての人々の羨望を集める。
それと同じ物がユキムラの腕につけられ輝きを放っている。
見るだけでも光栄な物を自分の物として身につけている人物が目の前にいる。
ユキムラと教皇が歩くと自然と両側に並んだ人々が膝をついて敬意を示していく。
ひな壇に上がり、教皇は国宝である腕輪を台座ごと持ち上げる。
そのままゆっくりとユキムラの前に立つ。
「今、我が国の開祖の持つ女神の腕輪。
新たなる聖騎士と再び相見えん!」
跪き台座をユキムラの前に捧げると、凄まじい光の奔流が2つの腕輪から立ち上がり、女神の像を包み込む。
観衆は息をするのも忘れ、その光景をじっと見つめている。
【……いつも……見てますよ……】
小さな囁きにも似た声が聞こえたような気がした。
おおおおおおお! と感涙に咽ぶ人や、声が、女神様の声が!! と半狂乱になる人まで出る。
【サービスよ】
ユキムラの耳元で女神の声がハッキリとする。
悪い女神もいたものだ。
教皇もさめざめと涙を流して感動に震えている。
その姿はまさに聖女……
ピシッ……
ビクッとユキムラは背筋を正す。
「今、私達は奇跡の立会人となりました……
我らに奇跡をもたらした人物、ユキムラ様に最大限の敬意と謝意を示そうではありませんか!」
教皇は力強く美しい声でその場に集まった人々に熱演を振るう。
会場は興奮状態だ。
いつのまにかユキムラの隣で手を取り腕輪をはめた手を高々と上げたところで興奮は最高点に達する。
一方ソーカの周囲は場の興奮と反比例して冷え冷えだ。
「仕方ないんだ、ある程度ここで中枢にパイプを……」
レンの立場上ここで太いパイプを繋いでおきたい。
「お、抑えてねソーカちゃん。後でやけ食いなら付き合うから!」
必死にフォローする二人の心中は察するに余りある。
そんな二人の健闘もあって、なんとかその場でのソーカの爆発は避けることが出来た。
しかし、まだ、戦いは始まったばかりだ……
聖堂での奇跡が終わり、ユキムラ達は夕食へと誘われる。
誘われはするが、拒否権は基本的にはない。
いや、ユキムラ達にはそれこそ国をどうこうできるほどの権力を持っているが、それを行使するという選択肢がユキムラにない。という言い方が正しい。
「もう、一生分頑張った気がする……」
今はユキムラにピッタリとソーカがくっついている。
これ以上彼女を止められる人間はいないだろう。
唯一いるとすればタロだが、タロはソーカが可哀想だからそんなことはしたくない。
折衷案として、ユキムラの隣にはきちんと彼女であるソーカを立たせることにした。
「ユキムラ様、私ドーズの街で大司教をしているフッソと申します。
この度はあのような奇跡に出会えたことを心より感激しております」
立食式のパーティになると、ユキムラの周りにはひと目ユキムラを間近で見ようとする人間や、沢山の人々が代わる代わる訪れてくる。
「よろしくお願いします。こちらは白狼隊のメンバーで私の彼女のソーカです」
「おお、流石ユキムラ殿可憐な女性と……」
幾度となく繰り返されるやり取りだ。
さすがのユキムラも空気を敏感に読み取り、壊れたテープレコーダーのように同じセリフを繰り返している。
昼間に散々我慢させたので、レンはいそいそと定期的にソーカのもとに料理を運びながら、様々なパイプ作りに勤しんでいる。
ヴァリィも白狼隊の揃いの衣装について興味を持った人々との会話に華を咲かせている。
そんなユキムラの元へ教皇アリシアが近づいてくる。
自然とユキムラ達の周囲の気温が数度下がったように感じる。
「ユキムラ様。いかがでしたか聖都の食事はお口に合いました?」
「ええ、素晴らしい料理がたくさんあって、つい食べすぎてしまいました」
「もし言ってくださればお持ち致しますので言ってください。
お連れの方もまだご満足頂けていなかったようなので……」
ふわりとした笑顔でソーカに会釈をする。
サラッと聞いていれば何でもない会話だが、女同士のマウンティングがバチバチと繰り広げられている。
ユキムラは外見上は青年だ。
内面の所為もあるかもしれないが、幾千の戦闘を繰り返してきたおかげか、いまではただの優男というよりは、精悍な顔立ちの男としての魅力あふれる姿になっている。
ソーカはまだあどけなさの残る少女で、アリシアのような大人の女性ではない。
確かにこの旅でかなり魅力的なスタイルと戦いを乗り越えた凛々しい姿を手に入れているが、未だに女性らしい魅力という点においては、要成長な面がある。
一方アリシアは、今がまさに瑞々しい魅力にあふれるベストの時期だ。
女性として、忌憚なく言えば女としての魅力が溢れ出ている。
横に立つと、まぁ、大抵の人はアリシアに軍配を上げてしまうだろう。
アリシア自身もソーカのような小娘に負けないという自負は持っている。
そしてソーカも今までのユキムラとの積み上げた時間は、アリシアなんぞに負ける訳がない自信がある。
ユキムラを挟んでの女同士の戦いが、今、始まる。
ソーカがまるで戦闘時の反応を見せてユキムラの隣へと飛び出そうとするが、レンとヴァリィが必死に抑えている。
「ソーカねーちゃん、ここは堪えて!」
「ソーカちゃん、ここは、我慢。我慢よー」
後ろの方でモゴモゴとやっている白狼隊も、大聖堂内の式典の場に参列する人たちの列に並ぶ。
美しい女神アルテスの像のもとに、ケラリス神国に預けられている女神の腕輪が置かれている。
ユキムラの到着に合わせて封印を解かれ皆の目前に置かれている。
年に一度の式典ぐらいでしか見ることの出来ない腕輪はその場に居るすべての人々の羨望を集める。
それと同じ物がユキムラの腕につけられ輝きを放っている。
見るだけでも光栄な物を自分の物として身につけている人物が目の前にいる。
ユキムラと教皇が歩くと自然と両側に並んだ人々が膝をついて敬意を示していく。
ひな壇に上がり、教皇は国宝である腕輪を台座ごと持ち上げる。
そのままゆっくりとユキムラの前に立つ。
「今、我が国の開祖の持つ女神の腕輪。
新たなる聖騎士と再び相見えん!」
跪き台座をユキムラの前に捧げると、凄まじい光の奔流が2つの腕輪から立ち上がり、女神の像を包み込む。
観衆は息をするのも忘れ、その光景をじっと見つめている。
【……いつも……見てますよ……】
小さな囁きにも似た声が聞こえたような気がした。
おおおおおおお! と感涙に咽ぶ人や、声が、女神様の声が!! と半狂乱になる人まで出る。
【サービスよ】
ユキムラの耳元で女神の声がハッキリとする。
悪い女神もいたものだ。
教皇もさめざめと涙を流して感動に震えている。
その姿はまさに聖女……
ピシッ……
ビクッとユキムラは背筋を正す。
「今、私達は奇跡の立会人となりました……
我らに奇跡をもたらした人物、ユキムラ様に最大限の敬意と謝意を示そうではありませんか!」
教皇は力強く美しい声でその場に集まった人々に熱演を振るう。
会場は興奮状態だ。
いつのまにかユキムラの隣で手を取り腕輪をはめた手を高々と上げたところで興奮は最高点に達する。
一方ソーカの周囲は場の興奮と反比例して冷え冷えだ。
「仕方ないんだ、ある程度ここで中枢にパイプを……」
レンの立場上ここで太いパイプを繋いでおきたい。
「お、抑えてねソーカちゃん。後でやけ食いなら付き合うから!」
必死にフォローする二人の心中は察するに余りある。
そんな二人の健闘もあって、なんとかその場でのソーカの爆発は避けることが出来た。
しかし、まだ、戦いは始まったばかりだ……
聖堂での奇跡が終わり、ユキムラ達は夕食へと誘われる。
誘われはするが、拒否権は基本的にはない。
いや、ユキムラ達にはそれこそ国をどうこうできるほどの権力を持っているが、それを行使するという選択肢がユキムラにない。という言い方が正しい。
「もう、一生分頑張った気がする……」
今はユキムラにピッタリとソーカがくっついている。
これ以上彼女を止められる人間はいないだろう。
唯一いるとすればタロだが、タロはソーカが可哀想だからそんなことはしたくない。
折衷案として、ユキムラの隣にはきちんと彼女であるソーカを立たせることにした。
「ユキムラ様、私ドーズの街で大司教をしているフッソと申します。
この度はあのような奇跡に出会えたことを心より感激しております」
立食式のパーティになると、ユキムラの周りにはひと目ユキムラを間近で見ようとする人間や、沢山の人々が代わる代わる訪れてくる。
「よろしくお願いします。こちらは白狼隊のメンバーで私の彼女のソーカです」
「おお、流石ユキムラ殿可憐な女性と……」
幾度となく繰り返されるやり取りだ。
さすがのユキムラも空気を敏感に読み取り、壊れたテープレコーダーのように同じセリフを繰り返している。
昼間に散々我慢させたので、レンはいそいそと定期的にソーカのもとに料理を運びながら、様々なパイプ作りに勤しんでいる。
ヴァリィも白狼隊の揃いの衣装について興味を持った人々との会話に華を咲かせている。
そんなユキムラの元へ教皇アリシアが近づいてくる。
自然とユキムラ達の周囲の気温が数度下がったように感じる。
「ユキムラ様。いかがでしたか聖都の食事はお口に合いました?」
「ええ、素晴らしい料理がたくさんあって、つい食べすぎてしまいました」
「もし言ってくださればお持ち致しますので言ってください。
お連れの方もまだご満足頂けていなかったようなので……」
ふわりとした笑顔でソーカに会釈をする。
サラッと聞いていれば何でもない会話だが、女同士のマウンティングがバチバチと繰り広げられている。
ユキムラは外見上は青年だ。
内面の所為もあるかもしれないが、幾千の戦闘を繰り返してきたおかげか、いまではただの優男というよりは、精悍な顔立ちの男としての魅力あふれる姿になっている。
ソーカはまだあどけなさの残る少女で、アリシアのような大人の女性ではない。
確かにこの旅でかなり魅力的なスタイルと戦いを乗り越えた凛々しい姿を手に入れているが、未だに女性らしい魅力という点においては、要成長な面がある。
一方アリシアは、今がまさに瑞々しい魅力にあふれるベストの時期だ。
女性として、忌憚なく言えば女としての魅力が溢れ出ている。
横に立つと、まぁ、大抵の人はアリシアに軍配を上げてしまうだろう。
アリシア自身もソーカのような小娘に負けないという自負は持っている。
そしてソーカも今までのユキムラとの積み上げた時間は、アリシアなんぞに負ける訳がない自信がある。
ユキムラを挟んでの女同士の戦いが、今、始まる。
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