老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件

穴の空いた靴下

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300話 特訓開始!!

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 聖騎士と司教は大聖堂裏の訓練場に集められていた。

 今日から白狼隊、ユキムラによる技術指導が予定されていた。

 訓練の一環として希望者の参加という形にしたが、手の空いている人間はほぼ全員参加となった。

 キーミッツとデリカの話を聞けばこの結果もうなずける。



「それでは、話し合った結果、キーミッツさんを除く大司教5人。デリカさんを除く各街の隊長5人。

 聖騎士親衛隊隊長と副隊長4人。まずはその順番でダンジョンへ入ります」



 発表とともにその場にいる人達はざわざわと少し動揺を含んだ喧騒に包まれる。

 その理由を代表してアリシアが代弁する。



「私の名が呼ばれませんでしたが……それに、その組み合わせは、その……

 バランスが悪いのではないかと愚考致します」



 最初の提案は置いておいて、たしかにバランスが悪い。

 本体なら聖騎士と大司教、それに半々くらいの聖騎士と司教。

 そんな組み合わせがバランス的には良さそうだ。



「えーっと、大変失礼な物言いになりますが、最初の頃は皆さんを連れて行っても堅牢な防御結界の中で見学してもらう形になるので、あまりバランスを考える必要がありません。

 あとアリシアさんは他の皆さんの育成が戦えるレベルに達してからお連れいたします。

 万全を期しますが、万、万が一にも何か起こすわけにはいきませんので、万全に万全を重ねた状態でお連れします」



 ユキムラの発言は、アリシア変換によると、私のことをとても大事に想ってくれている。となる。

 ぽーっと呆けたような表情でユキムラの説明を聞いている。

 国の最重要人物なのだから、大切に扱うのは当然で、そういう意味の大切とは異なるが、恋する乙女に何を言っても無駄なことは、数少ない真理であろう。



「予定では3日ほどで基礎訓練(見てるだけ)は終わると思います。

 詳しくは一度体験してないと説明がしにくいので、とりあえず行きましょう!」



「それじゃぁ最初のメンバーの皆さんにこれを……」



 まずは大司教の方々にリングとマントを支給する。

 簡単に言えば『つければ超人になれるリングとマント~~』である。



 大司教ともなると、ご高齢な方も多いが、流石は歴戦の一流の人間だ。

 皆、年齢を感じさせないオーラがある。

 それでもリングとマントを着けた瞬間、自身の内側から滾るエネルギーに驚きの声が上がる。

 キーミッツが見違えるほどに若々しく充実した肉体を取り戻した理由の一端に触れる。



「うおおおおおお……漲る! 漲るぞぉ!!」



 周囲の人間も驚きを隠せない、まさか綺麗なリングと美しいマントをつけただけで大司教達に漲る精気が宿った。

 しかし、本当の驚きは、ダンジョンに入り、4時間程で帰還した一同を見たときだ。



 やや腰も曲がり、真っ白な髭を蓄えた第二の街ドーズの大司教フッソは、筋骨隆々ムキムキ、髪は黒ぐろと短く切られ、その昔、散々に絞られた経験のある司教たちは当時を思い出し震え上がった。



「咆哮のフッソ様が復活した……」



 パッと見たら30代後半ぐらいにも見えそうな充実した肉体を取り戻した大司教達がずらりと並ぶ。

 皆、目の光はキラキラと輝き、ユキムラを始め白狼隊の全員に絶対な信仰を捧げていた。



 その光景をまざまざと見せつけられて聖騎士隊長達の興奮は最高潮に達する。

 すぐにブレスレットとマントを支給しダンジョンへと戻っていく。

 大司教達は、見ていただけのあの激戦を繰り返し戦い抜いた上で、休むこと無く次の戦闘へ向かう白狼隊にさらなる尊敬の念を抱かずにはいられなかった。

 そして、皆、新兵のように訓練場に戻り、取り戻した肉体の若々しさと、手に入れた強大な成長を実感し、揺らぐことのない白狼隊への信仰心を盤石なものへと成長させていく。



「ナオちゃん……可愛かったなぁ……」



「コウくん……カッコ良かったなぁ……」



 数名はちょっと違う洗脳を受けていた。



 その後、聖騎士隊隊長、親衛隊と副隊長と次々とダンジョンへ入り、見違える姿で戻ってきた。

 最後の部隊が返ってくるとすでに日は沈みどっぷりと夜になっている。



「ふー、今日はここまでだね~……やっぱ二週間ぐらいぶっ続けで戦うと疲れるね……」



「でも、このダンジョンはいい訓練になりますね。

 勉強になりました」



「ユキムラさん、さっきの戦闘での立ち回りですがー……」



 とんでもない世界の戦闘を繰り返した後に、それでも成長への意欲を見せる白狼隊への敬意はドンドン高まっていく。

 

「次にはアリシアさん連れていけそうだね。

 コウとナオが想像以上に成長してくれて、もうふた手になら分けられそうだね」



「……私は家に戻ったら倒れそうです……」



「流石に……疲れちゃいました……」



「ユキムラちゃん、あんまり二人に無理させないでねー、ただでさえ急激すぎるレベルアップで口には出さなくても凄く我慢してるんだから……」



「あ、そうだよね。ごめん……二人共よく頑張ってくれたね」



「師匠、それに商会の準備もありますから、みなさんレベルアップが馴染む数日は休憩を頂けませんか?」



「それもそうだね、そしたら次回は5日後にしようか」



 ユキムラの提案はすぐに教団側にも伝えられる。



「自分の身体が自分のものでは無いみたいです!

 これもユキムラ様についていったおかげです本当にありがとうございます!」



「もっともっと頑張ります! いっぱい斧投げて敵を倒しますね!」



 頼もしい二人である。

 事実、この二人は、戦い方と本人の資質ががっちりと合ったせいで、凄まじい戦士となっていた。

 アリシアが、この二人の戦闘を目のあたりにするのは次回のダンジョン訓練の時であった。

 

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