老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件

穴の空いた靴下

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314話 激戦

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「来るぞ!!」



 デュラハン騎士は前足で2回地面を掻くと突進チャージが来る。

 基本的には向いている方向へと直進するが、結界によって閉鎖された空間の端に沿って曲がることもあるので、出来る限りフィールドの縁で戦わないように注意する。



 超高速突進、周囲に落雷を落としながら暴風の鎧を纏っての体当たりだ。

 馬防柵なんかで撃退しようにも、まるで何もなかったかのように破壊して突っ込んでくるし、落とし穴などもスレイプニルが空中を駆けるので意味がない。



「ふんっ!」



 気持ちのいいガード音とともに、まるでスポンジに吸収されるように、突進がユキムラの正面で停止する。

 デュラハンに頭がついていれば、その不可思議な光景にあっけにとられていただろう。

 スレイプニルは自らの自慢の突進が突然停止させられて、なにがなんだかわからないと言ったように嘶く。

 暴走特急のような突進を防ぐ方法は、今ユキムラが行ったように絶対防御でシステム的な防御をするか……



「タロそっち行くよ!」



 凄まじい突進がタロの姿を捉える。

 タロの姿が突進に巻き込まれると思われる刹那、ニュルリと通り抜けるように通過し、その突進の勢いを無くす。

 目の前の獲物を弾き飛ばして愉悦に浸ったはずの感触がなく、突進を停止させられ、スレイプニルのイライラは積もっていく。

 完全回避による攻撃判定の消費で避けるのが安全だ。

 安全と言っていいのかはわからないが……

 

 どちらも一撃喰らえば命を落としかねない突撃を、絶妙なタイミングで防御するか、避けることで発動する神業的な技術で、事故を起こすことなくその仕事をこなせるのはこの二人しかいない。

 突進を終えた直後の僅かな時間に味方が一斉に攻撃を与え、最後にユキムラかタロが大技を打ち込むことでターゲットを維持する。

 ほんの僅かでもタイミングがずれればタゲが分散され戦線は混乱に包まれる。

 敵の無慈悲な突進の前に多数の犠牲が出ることは想像に容易い。

 

「みんな落ち着いて自分の仕事をしっかりしよう」



 冷静なユキムラの指示が全員を落ち着かせる。

 今までの戦いとは別次元のユキムラやタロ、そして白狼隊の本気の戦いを目の当たりにして、同行組は少し肩に力が入っていたが、すっかりその緊張もほぐれていた。

 

「これほどの魔物と対峙しても体が動く!」



「ユキムラ殿の凄さを改めて知ったわい……」



 幾度の攻撃を繰り返し、ついに巨馬スレイプニルが膝を屈し光となって消えていく。

 その凶悪な突進攻撃のターンでさえ、この戦いの前座と言っても良い。



「さぁ! ここからだ!」



 ユキムラは得意の格闘スタイルに換装し突っ込んでいく。

 デュラハン単騎となり、その両手に巨大な大剣を構えて突っ込んでくる。

 ユキムラは華麗なステップで嵐のように振り下ろされる剣戟を避けて肉薄する。



「奥義 龍虎翔波!」



 すれ違いざまに振るわれた大ぶりを見逃さず、ユキムラは大技を放つ。

 デュラハンの巨体がユキムラの強力な打ち上げで一瞬浮遊する。

 ユキムラはその速度を維持したままデュラハンの背後へと回り込む、一瞬の浮遊の隙に強力な攻撃がクロスポイントのように降り注ぐ。

 

「烈火震地氷雪暴風陣!」



「セイントクロススラーッシュ!!」



「ホーリーストーム!!」



「猛虎砲弾!」



「ガイアウェーブ!!」



「千仞万傷血風陣!」



「降り注げ斧顎大豪雨!!」



 皆この気を逃すまいと自分が持つ奥義を惜しむこと無く放つ。

 事前に打ち合わせをしていたわけではないが、皆即座に反応する。



 白狼隊メンバーは前線でデュラハンを釘付けにする役目を担う。

 レンが敵への阻害と味方への支援を一人でこなしていく。

 パーティのメンバー一人ひとりが全体としての明確な意思を理解して動ける。

 理想的な形が出来上がっている。



「しかし、流石に死の体現者とも呼ばれるデュラハン……攻め込める隙が少ない!」



「暴風に巻き込まれるような攻撃……合わせる暇もないですね……」



「もー、攻撃が重くて重くて、ずっと受けていたら圧死するわね……!」



「皆さんが前で保ってくれていれば後方からの攻撃で削れます! 頑張りましょう!」



 肉薄してしまうと最初のような体勢を崩せるチャンスはそうそう訪れない……



【ゴアアアアアアアアア!!】



 腹の底から響くような音を出して双剣を叩きつけてくる。

 こういう大技をユキムラが捌いた直後に残りのメンバーで体勢を崩し、大技を叩き込む。

 淡々と冷静に、数少ないチャンスを物にしていくしか無い。



「下がってー!!」



 ユキムラの合図で全員が距離を取る。

 直後デュラハンが双剣を大地に突き刺し巨大な衝撃波が全方向に放たれる。

 全方位完全防御不能攻撃、近距離で受けるとユキムラたちの装備でも深刻なダメージを受けてしまう。

 猛烈な攻撃の最中に一瞬、頭上で剣を交差させる。

 そのサインを見落とすと一気に前線が崩壊する。

 どんな攻撃の中でも冷静にユキムラがそのサインを伝えてくれる。



「流石に、しんどいねぇ……」



「師匠、多重魔法陣、4層完成してます!」



「うっし、次の時に起動しよう!」



 そのセリフが合図だったかのようにデュラハンが大剣を頭上に構える。



「距離を取れ、直後の硬直に最大火力!」



 迫りくる衝撃波を受け止めるギリギリで我慢して一気に縮地で距離を詰める。

 デュラハンを中心に多層式魔法陣が複雑に絡み合い発動する。

 

「アルティメットテトラストリーム!!」



「絶技!! 虚空滅牙斬!!」



「昇龍天駆鳳凰破星翔!!」



「そ~れ大旋風棍!」



 後方から味方の援護も雨あられとデュラハンの身体を撃ち抜いていく。

 全員の渾身の一撃がデュラハンへと降り注ぐ、もちろんその後も戦闘が継続する可能性もある。

 それでも、ここで決めるという強い意志がこもった攻撃は、デュラハンを包む鎧に軋みを生む。



「ワオーーーーン!!」



 その軋みに白光と化したタロが突き刺さる。



【GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA】



 デュラハンの断末魔であった。



「アオーーーーーーーン!」



 タロは鎧を突き破り空中で勝利の雄叫びを上げる。

 長い戦いに終止符が打たれた。

 激闘を征した一同はその場に座り込んでしまう。



「やったーーーー!」



 少し遅れて歓喜の声が響く。

 強敵を打ち破る興奮がつかれた身体に心地よく響くのであった。

 
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