老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件

穴の空いた靴下

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最終話 新しい世界。ある一つのエピローグ

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「おお! 見えたぞー!」



 既に拠点は作られ、転移門も存在していたが、ユキムラ達は船での新大陸上陸を選択した。

 通信機で状態を伺いながら転移をすれば安全に移動はできるが、ユキムラは自身の足で新大陸へと挑みたかった。

 外洋に出る船もユキムラ製の特殊使用。

 海上移動要塞と化している。



「これが……新大陸かぁ……」



 先立って拠点を作っている冒険者の街、ホーピングと名付けられた場所にほど近い砂浜に接岸する。

 周囲の安全を確かめてユキムラ達はついに新大陸に上陸を果たす。

 位置的にはフィリポネア共和国の南西に位置している。



「地平線まで遮るもののない広大な草原。この砂浜もどこまで続いているか……」



「釣れたー! ユキムラさ~ん見たこと無いお魚ですよー」



「なに? 本当ソーカ?」



「全く、あの子達は……」



「ヴァリィさん、あそこ採集ポイントみたいですよ……」



「レンちゃんまで……程々にするわよ……」



 結局似た者同士な白狼隊だ。

 彼らの前に広がる世界をユキムラとその仲間たちは、思いっきり楽しんで、この世界で生きていく。

 彼の人生をこの世界に刻んで行くことになる……





---------------------------------



 遠い場所、次元までも異なるかもしれない、少なくともその場所はこう呼ばれていた。



 地球、と。



 そして、地球という世界の日本と言う国の、さらにどこかの小さな街、別段珍しくもないアパートの一室に多くの人間が集まっていた。



 50半ばの神経質そうな男が手元の資料を読みながら、その部屋の中を見て回っていた。

 鑑識が部屋の内部や外を色々と調べて、今のところ事件性を示す物証は上がってきていなかった。



「葛城先輩! やはり死因は老衰、心臓麻痺のようです」



 この部屋の持ち主の検死結果が葛城と呼ばれた刑事に伝えられる。

 ただの老人の孤独死なら、ここまで大事にはなっていない。

 こんなふつうのアパートの一室で亡くなった人物は、普通の人間ではなかったのだ。

 残りの捜査は鑑識に任せて葛城はアパートを後にする。



「凄いですよねー! あの天下のレボリューションの会長があんなアパートに住んでるなんて!

 謎の人物ですもんね、凄いなー、俺刑事になってよかったですよ!」



「真下……少し落ち着け、煩いぞ」



 車を運転しているのは葛城の後輩、こんな騒がしい刑事がいるのかと言うほどおしゃべりだ。



「いや、だって先輩! レボリューションですよ?

 HDフルダイブMMMO VO2で世界中に大人気なあの企業、医療、工業あらゆる分野のそのノウハウで大成功を納めている押しも押されぬ世界最大の企業!

 その謎の会長が部屋で孤独死なんて、ミステリーじゃないですか!

 知ってますか先輩! レボリューションにまつわる謎の数々!」



 ㈱レボリューション。フルダイブ型MMORPG VO2を世界中でヒットさせ巨大企業へと成長した会社だ。

 前身であるVOはMMORPGとしては異質とも言える40年もの長い期間プレイヤー達に愛されていた。

 しかし、いくらなんでも40年も続いたゲームに限界は来るもの、そのサービスも停止されることになった。

 そして、このレボリューションの伝説の数々はここからはじまる。

 VOの伝説的プレイヤーであるプレイヤー名ユキムラ、後のレボリューション会長となる真田 英雄は自身の持つ財力を持って、レボリューションの株式を大量に取得。

 VOの終焉とともに静かに、ゲーム会社としての命数を終えようとしていた役員連は、真田氏に経営権を移譲することを決めた。人員もいない名前だけの会社を金持ちが道楽で買った。ほんの少しだけ三面記事を賑わせ、そして忘れられると誰もが思っていた。



 レボリューションの数々の奇跡が起きるのはそこからだった。



 レボリューションの経営権を手に入れたものの、すでに会社の中身は無に等しかった。

 そこに突然現れたのが、天才プログラマーであるレン=バイランを始めとする4人の社員であった。

 天才プログラマー、レン=バイラン。

 一人でVO2のシステムからハード開発まで行ったと言われる大天才だ。

 英雄氏のアイデアを最も素晴らしい形で現実世界に作り出した。

 会長のことを崇拝し、最後までその叡智をVO2に惜しみなく注ぎ込み、世界人口の7割がプレイするとまで言われる一大コンテンツへと成長させた。



 資産運用・デザイン担当 ヴァイツァーヴォルフ=ヴァリィ。レボリューションの資産、殆どが英雄氏の個人財産なのだが、を利用して、まるで未来でも見通せるかのように市場を利用し、莫大な資金をレボリューションにもたらした。

 同時に革新的なデザイン全般を担当しており、世界中の人々を魅了するゲームデザインに多大なる影響を与えたという。



 美人広報にして真田氏の妻であるソーカ=真田。

 天才的な広告手腕によって、あっという間に世界中でVO2の知名度を高め、大量のプレイヤーを夢中にさせた。

 また、VO2のプレイに用いるHMDヘッドマウントディスプレイによる他分野への応用など様々な分野でそのシェアを広げていった手腕は多くの企業の手本となった。



 そして、真田英雄氏の右腕にして、レボリューションの実質的な顔である。タロ=白狼氏。

 表に出ない真田氏の代わりに会社の代表として様々なメディアへと露出し、銀髪と甘いマスク、現実離れした幻想的な魅力によって世界中でその顔を知らぬものは居ないほどの人気だった。



 4人の出生は謎に包まれており、急成長する企業をやっかむ報道も多く行われたが、レボリューションの成長は留まることを知らなかった。

 15年もすると、比肩する企業は世界中を見渡しても存在しないほどの急成長を遂げた。



 ユキムラ、ソーカ、レン、ヴァリィ、タロはVO2内でも最強のプレイヤーでパーティだった。



 突然現れた4人の協力によって、レボリューションは世界一の複合企業へとその姿を変えていく。

 あらゆる事業において革新的なビジネスを展開していく。

 慈善事業や環境保護などにも積極的で、地球の自然の2割を回復させた企業としても有名だった。



 そして、その会長が亡くなった。



「真田会長の亡くなりかた……自分の大好きなゲームをしながらの老衰……

 彼は、幸せだったんだろうね……」



 検死結果に目を通しながら葛城は真田氏の人生に思いを馳せていた。



「ええ、とても幸せそうな笑顔だったそうですよ。

 あっ、それで最近の噂を知ってますか?」



「まだあるのか?」



「亡くなったはずの真田会長、そのプレイヤーであるユキムラ、そのユキムラが未だにVO2の世界で冒険を続けているって噂があるんですよ……」



「はっ! とうとうゲームの中に入れる時代か……

 もし本当なら、真田会長は幸せだろうな。

 自らの愛したゲームの中で永遠に生きていけるんだから」



「お、先輩も結構ロマンチストですねアイテ!」



「バカ言ってないで早く署に戻るぞ、会長が亡くなってから突然失踪した他4人との関連を調べないと」



「……その4人もゲームの中へ行ってたりして……」



「……もしそうなら、今頃大冒険を繰り広げてるんだろうな」



 葛城は車の窓から流れ去っていく街の風景を眺める。



 葛城もVO2のプレイヤーだった。



 あの現実と見紛う世界に入っている時、現実ではかたっ苦しい刑事である彼は、子供のように冒険の旅に心を踊らせていた。



 会長達が、この面倒くさい世界を捨てて、あの冒険の中に生きていくのなら、少し羨ましいと思うほどだった。



 この世界でも頭上に輝く星空はある程度美しかったが、VOの中の星空は、頭上全てを覆い尽くすほど、遥かに美しい、そう思えるのであった。

 

--------------------------------------------------





「いやー、周りに街の明かりがないから星が綺麗だねー!」



「そうですね……師匠と露天風呂を作っていた頃を思い出しますね」



「ははは、とても昔の話に思えるね」



「あの時は袖にされました……」



「い、いやだってあの時は……」



「なになに、楽しそうな話ししてるじゃないのー」



 新大陸でのキャンプ、周囲は星空に照らされている。

 白狼隊の笑い声は、そんな満天の星空にいつまでも響き渡る。



 彼らの目の前には無限に広がる冒険が続いている。

 目の前に冒険があれば、それがどんな困難な道であろうが、彼らは迷うことなく進んでいく。



 ユキムラ達の冒険は、今始まったばかりであった。

後書き
ユキムラ達の冒険は、一つの区切りを迎えます。

11ヶ月もこの物語を書き続けられたことは幸せでした。



ここまでお付き合い頂き本当にありがとうございました。

過分な評価をいただき、本当に楽しく執筆をさせていただきました。



まだまだユキムラ達の冒険は終わりませんが、一応の完結という形にさせていただきます。

終わり方だけははじめから決めていたのですが、これだけの長い作品になると本当に難しかったです。



ここまで続けられたのは全て皆様の応援のおかげです。

本当に、本当にありがとうございます。



まだ他にも書いているものがありますが、私自身がこの作品の完結による喪失感が大きいです。

初期の頃は毎日少しづつ読んでのんびり楽しめる作品を書いていこうと始めたのですが、自身で考えているよりも遥かに多くの方に読んでいただき、本当に驚いたことを今でも覚えております。

その後もたくさんの方に見ていただいて、毎日嬉しくて仕方ありませんでした。

ただ、作品の方向性的に、私の技量でこれ以上長期に連載していくことに限界を感じて、今回の完結と言う形になってしまったことは、自身の実力不足を痛感しております。

終わり方は想定していた形で追われたのですが、そこまでの運びにはもう少し違う形もあっただろうなと反省しております。

それでも、ここまでこの作品を書かせていただいたことは喜びしかありません。



また別の作品でも皆様にお会いしたいと思っております。



今後ともよろしくお願いいたします。





本当に有難うございました。
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