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10.厳しい管理下

怖い……

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「僕はね、結葉ゆいは。キミが可愛くて仕方がないんだよ。だって払ってる。だけど――」

 そこで、結葉ゆいはの首をさらに強い力でグッと押さえつけて、偉央いおが彼女の唇を塞いだ。

「……んっ、ぁっ」

 偉央いおは、酸素を求めて小さく喘ぐ結葉ゆいはの口を割って舌を侵入させると、彼女の口のから唾液が落ちるのもお構いなしに口腔内を蹂躙じゅうりんする。

 息苦しさに結葉ゆいはの身体から力が抜け、意識を失いかけた頃、やっと偉央いお結葉ゆいはを解放してくれて。

結葉ゆいはがそのつもりなら僕もキミへの接し方を変えないといけないね」

 咳き込みながら一生懸命息を吸い込む結葉ゆいはを見下ろして、偉央いおはそう宣言したのだ。

 以来、結葉ゆいははとても厳しい管理下に置かれるようになってしまい、昼間の外出さえもままならない身になって今に至る。


***


結葉ゆいは、貴方旦那さんからDV受けてるんじゃないの?』

 低めるようにして告げられた琳奈りんなの声に、結葉ゆいははゆるゆると首を振った。

「DVだなんて……! 偉央いおさんはとっても優しい人だよ?」

 本当は、幼なじみの言葉に冷水を掛けられたような気がした結葉ゆいはだ。

 だけどそれを認めてしまったら、偉央いおとの結婚生活が破綻はたんしてしまう様に思えて認められなかった。

『だったら! 余計だよ、結葉ゆいは。同窓会、出ておいで? 幹事には私から出席って伝えておくから。ね?』

「あっ、でもっ」

 結葉ゆいはが慌ててそう言い募った時には、琳奈りんなから『じゃあ私、早速津田くんに連絡入れておくから。絶対来るんだよ⁉︎』と一方的に捲し立てられて電話を切られてしまっていた。

 結葉ゆいははツーツー、という音が聞こえてくる受話器を手に、琳奈りんなに折り返すべきか否かを迷ってやめた。

 電話機から履歴を消すことは出来ても、電話会社に問い合わせれば通話履歴が取り寄せられるというのを、結葉ゆいはは前に偉央いおから聞かされたことがある。

 だから小細工はしても無駄だよ?と妻を牽制けんせいしたんだろう。

 きっと今夜、結葉ゆいは琳奈りんなからの電話について、偉央いおから問いただされる。

 琳奈りんなが、結葉ゆいはも同窓会に参加すると伝えてしまうことになってしまった今、結葉ゆいはの前には乗り越えなければならない問題が山積みになってしまったように思えた。

(同窓会、すっぽかしたら琳奈りんなの顔に泥を塗ることになっちゃうかな)

(当日に、体調が悪くなって行けなくなっちゃった……とか連絡するのはどうだろう。ドタキャンはダメかな)

(今夜の偉央いおさんからの尋問を乗り越えるだけでも無理な気がするのに、私、どうすればいいの?)

偉央いおさんに素直に……話す? でも、成り行きとはいえ同窓会に行くことにされてしまったって言ったら、結局彼を怒らせてしまうよね。怖い……)

 結葉ゆいはの頭の中はそんな考えで一杯になった。

 とにかく結葉ゆいは偉央いおの機嫌を損ねてしまうことが、怖くて堪らないのだ。
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