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11.両親からの連絡

偉央が求める結葉の役割

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 こんなことがあった日の偉央いおは、結葉ゆいはをいつも以上に激しく求めて、酷く抱く。

 偉央いおが満足した頃には結葉ゆいははグッタリとして動けなくなることが常で。

 だけどそうなってしまった、役立たずの結葉ゆいはを、偉央いおは決して責めたりはしないのだ。

 温かなお湯で湿らせたホカホカのタオルで結葉ゆいはの身体中を綺麗に清めてくれた後で、

結葉ゆいははゆっくり休んでおいで? 家事は僕がやっとくから。お風呂も溜めておくから動けるようになったら入ってね」

 散々偉央いおに泣かされて乱された結葉ゆいはの長い髪の毛を一房ひとふさ持ち上げて、ふわりといたわるような口づけを落とすと、そう言って結葉ゆいはの頭を愛しくてたまらないと言った手付きで優しく撫でる。

 そんな彼に、嬌声を上げ過ぎて掠れた声で「偉央いおさ、ごめ、なさ……」と答える結葉ゆいはに、偉央いおは「謝らなくても大丈夫だよ。結葉ゆいは務めをしっかり果たしたんだから、僕に気を使う必要なんて微塵もないんだ」と慈愛に満ちた視線を投げ掛けてくる。


 御庄みしょう偉央いおという男は、結葉ゆいはに「おんな」としての役割は過剰なほどに求める代わりに、「専業主婦」としての役目はそれほど求めては来なかった。

 あくまでも偉央いおにとって結葉ゆいはは「女」であって「家族」という枠組の中での彼女の存在価値は希薄なんだろう。


「元々僕は家事とか嫌いじゃないからね」

 最初のうちはそれでも偉央いおに家事をさせてしまうことを気にしていた結葉ゆいはに、偉央いおがニッコリ笑ってそう告げたことがある。

 その言葉の通り、偉央いおは料理もとても上手で、結葉ゆいはなんて足元にも及ばないようなご馳走をさらりと作れたし、掃除洗濯など、他の家事も卒なくこなしてしまう男だった。


「僕が結葉ゆいはと結婚したのは、家政婦としてのキミを欲したわけじゃないから」

 必要ならば金でハウスキーパーを雇えばいいと言い切った偉央いおに、結葉ゆいはこと、情事の後の自分の不能ぶりについては目をつぶることにした。
 あまり言い募ったら、偉央いおは本当に家政婦を雇ってしまいかねないと思ったからだ。


「夫婦の時間を確保するのが何よりも大事だからね」

 それが、偉央いお結葉ゆいはに求める唯一無二の役割なのだと、いつしか結葉ゆいはも諦めるようになっていて。

 そこにはきっと「母親」としての結葉ゆいはは想定されていないし、当然「父親」としての偉央いおも居ないように思われた。



 飴とむちと言うのだろうか。

 酷く抱かれた後、そんな風に甘やかされるたび、結葉ゆいはは分からなくなってしまうのだ。

 自分が偉央いお性奴隷せいどれいのごとくしいたげられているのか、ひとりの女性として大切に愛されているのか。


「愛してるよ、結葉ゆいは

 結葉ゆいはが戸惑いに揺れる瞳で偉央いおを見上げるたび、まるで結葉ゆいはの不安を見透かしたように偉央いおが愛の言葉をくれるから。

 結葉ゆいはは結局「愛されている」のだ、と自分を納得しかなかった。
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