ルグリと魔人

雨山木一

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第六章

三十三話

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「結果、班を編成し直し、選ばれた八名を灰菌症対策班として調査に送ることになった。しかし、先の誘拐事件の際に発生した業務の遅れがとり戻せておらず、今すぐに調査班を結成することが難しい。したがって三名を先行隊として選抜し、一足先に送ることになった」

 ラウルの声が響き渡る。皆真剣な面持ちで耳を傾けている。
 会議のあった当日の夕刻。緊急招集がかかり、現場に出ている職員を除いた監督職員が資料室兼会議室に集められることになった。
 室内は異様な熱気に包まれている。
 ラウルは全体を見回すと緊張した面持で会議で決定した内容を告げる。

「それでは灰菌症対策班の先行隊メンバーを発表する。トーラス・ウィンター。ミーシャ・シェルズ。そして、ラウル・イズデル。以上三名は、通常業務から外れ灰菌症対策班とする。人の抜けた班は追って指示を出すので、それに従って──」

「いや、ちょっと待ちなさい」

 ラウルの話を老齢の保護官が困惑した表情を浮かべて遮った。

「お前さんとトーラスは経験も豊富だし、どんな状況にも対応できるだろう。監督署内で代わりを務められる人間はおらん。そこに異論あるやつはおらんだろうよ。しかし、何故ミーシャがメンバーに選ばれているんだ。ミーシャはまだ帰ってきたばかりだろう。それに……あんなことがあって、まだ心の傷も……」

 老齢の保護官の主張にその場にいた全員が同意を示すように大きく頷く。

「そもそも、なんでミーシャが選ばれたんだ。灰菌症の調査は専用の講習を受けて、実技試験をパスした者でなければならない決まりのはずだ。ミーシャはまだ適正試験すら受けていないだろう」

 次第にラウルに向けられる視線が困惑から避難の色へと変わり始める。ラウルはその思いを正面から受け止め、黙って耳を傾けている。

「まだ、早いよ。代わりの人間がいないなら僕が変わろう。僕なら全ての試験をパスしているし、灰菌症に対処したのも一度や二度じゃない。経験があるんだから僕に行かせてくれ」

「それはできない」

 老齢の保護官の進言にラウルは即答した。

「皆の言いたいことは重々承知している。だが、現在モデールで発生している灰菌症を食い止めるにはこのメンバーが最適解だと俺は思っている」

「どこが最適解なんだ。ミーシャに無理強いをしているんじゃないか」

「そんなことはない。これはミーシャたっての希望なんだ」

「馬鹿な! そんなわけが……」

「あの子は自分で対策会議に乗り込んできた。そして、灰菌症に関してある可能性を示してくれた」

「可能性?」

「灰菌症の発生原因の特定だ」

 騒然とした空気が室内を駆け巡る。

「すまないが、ここで議論するつもりはない。この人事は決定事項だ。変更はないし、意見を聞くつもりもない。調査は明朝から行う」

 ラウルは手早く手元の資料をまとめると食堂を出て行った。
 あまりにも一方的な物言いに、一部から不満の声があがる。それを制止したのはトーラスだった。
 
「皆の不安や不満は承知している。だけど、この決定は覆らないんだ。だから代わりに俺が皆に約束する。ミーシャは必ず俺が命に代えても守ってみせる。必ず監督署に返してみせる。俺を、信用してください」

 腰を折って頭をさげるトーラスにその場にいる全員が口を噤む。
 それでも無言の室内に広がる抗議の空気をトーラスは全身で感じていた。ただ、感情のままに罵声を浴びせてこないのは彼らがトーラスを信用してくれているからということもわかっている。
 だからこそ、トーラスは情けなかった。皆の信頼を人質にこの場を鎮めようとしていることが。

 ◇◇◇

「ほら、これも持っていきな」

「これ、道中お腹が空いたら食べるんだよ。あと、防護服は熱いから水分補給もしっかりするんだよ」

「余ってた手ぬぐいをアレンジして作ったんだ。急いで縫ったから少し不格好だけど、防護服を脱いだときに使ってね」

 翌日、調査へ向かうために馬車に乗り込もうとしていたミーシャたちの前に職員たちが各々ミーシャに持たせるものを持って押し寄せていた。
 水筒に乾パンにハンカチ。それ以外にも役に立ちそうなものをミーシャに持たせようとする。両手に一杯になってもなお、これもこれもとあれこれ持たせようとしてくる。

「おいおい、そんなに持っていけねえよ。それに泊まりじゃねんだから、そんなにあったって使いきれないだろ」

 馬車の荷台にまで詰め込み始めたところでトーラスが声をかけた。そこまで大きくはない荷台に、調査で使う防護服と備品類。そこにさらに荷物が追加されて、足の踏み場がなくなってきている。

「こんなにいりませんよ」

「余ったら持って帰ってきて、次の調査に持っていけばいいから。遠慮しないで。これも持っていくかい?」

 さらに荷物を持たされそうになってミーシャは、大丈夫だからと足早に荷馬車に乗り込んだ。皆に見送られてようやく馬車が動き出したときには、どっと疲れが押し寄せてきた。

「少し予定を早める必要があるな」

 ラウルが地図を眺めながら独り言ちる。隣にいたトーラスが地図を覗き込み、指を差す。

「とりあえず今日は灰菌症に罹った狼が発見された場所に行くんだろ? 現場についたらなにすりゃいい」

「まずは発見場所の周囲に感染が広まっていないか確認する。感染した狼は回収済みで、すでに焼却処分されたが、もし他の動植物に感染が確認されれば、処置をしなければならないからな」

「狼が見つかったのって俺がアーリィ・リアトリスと遭遇した場所の近くだよな。そこからミーシャの言ってたパンパスグラスの群生地も見に行かなきゃだろ? 位置的に時間はギリギリか……」

「どれだけ遅れても夕暮れ前には帰路につきたい。でなければ、夜までに森を抜けることはできない」

「了解。それじゃあその手はずで行こう。ミーシャもそれでいいよな?」

「……構いません」


 素っ気なく答えるミーシャにトーラスは困惑顔になった。ラウルに助けを求める視線を送るが、一つ溜息をつかれただけで地図を畳むと目を閉じてしまった。

(とりあえず第一段階は達成した)

 荷馬車に揺れながらミーシャは密かに安堵した。
 ラウルは現場に出ることが他の職員と比べて少ない。理由もなく一緒に森に着いてきてくれと訴えてもまず成功しない。下手に誘って勘ぐられて警戒されては困る。それだけは避けたかった。だから、灰菌症に罹った狼が見つかったと聞いたときは、神に感謝した。責任感のあるラウルなら、灰菌症調査に自ら乗り出すのは容易に想像できたからだ。
 トーラスがついてきたのは誤算だが、それもなんとかなるだろう。キャスウェルと合流できればどうとでもなる。仮にラウルでの魂移しが失敗した場合のスペアにしてもいいかもしれない。
 こんなことを冷静に考えている自分に違和感を覚えないわけではない。しかし目的のためならば、その違和感も飲み込もう。
 その先にある幸せのために。

 ◇◇◇

「一昨日と昨日の調査では灰菌症の拡大は確認できなかった」

 荷台で行われるミーティング。ラウルが広げる地図のうえにペンで印しをつけていく。区画別に色分けされた地図には五つのバツ印が付けられている。
 調査三日目。さすがのラウルとトーラスも疲弊の色を隠せなくなっていた。

「灰菌症の感染が確認されたモデール狼が発見された場所も、パンパスグラスの群生地も灰菌症に感染している動植物は見られなかった。今日で調査は三日目になるわけだが、この二日間の調査では灰菌症は確認できなかった。これを喜ぶべきなのか、それとも嵐の前の静けさと考えるべきなのかは判断に迷うところだな」

 調査は順調に進んでいた。モデールに灰菌症は蔓延していないという最善の結果をもって。
 監督署の面々はこの調査結果に安堵と喜びを示している。もし、感染が拡大していればモデール森林公園を諦めることになってしまう。
 そんなことは避けたい。仕事がなくなるのは困るし、これまで多大な時間と労力を投じて維持してきたモデールを見捨てることは、我が子の首を刎ねるのと同義だ。
 だから、監督署の面々が、毎日調査を終えて帰ってきた三人を見つめる眼差しには様々な感情が込められていた。そして、報告を聞く度にあがる歓声は異常とも言えるものだった。

 ミーシャはその歓声を聞く度に胸やけのような気持ち悪さを覚えていた。
 父の犠牲で成り立っている幸せを享受している人間の声は悪魔の雄叫びに聞こえる。聞くに堪えない。毎回込みあげてくる吐き気を堪えるのに神経を集中しなければならない。地獄だ。
 さらにミーシャを追い詰めるのはそれだけではない、キャスウェルと連絡がとれないのだ。

 この二日間、幾度となくラウルと二人きりになる瞬間はあった。その度に周囲にキャスウェルが現れるのではと期待したが、キャスウェルは一度も姿を見せなかった。それどころか気配すら感じさせない。姿を消しているのかとも考え、わざと一人になることもあったが、それでもキャスウェルはミーシャの前に現れなかった。
 次第に焦りがミーシャの心を覆っていく。このまま灰菌症の拡大は確認されないと判断されれば、調査の一旦打ち切りも考えられる。一度灰菌症が確認されたのだから、詳しい調査をしないでお終いとはならないだろうが、今後の調査は都から派遣される研究員が担当することになるだろう。そうなればラウルを連れ出すことは難しくなる。難しくなればそれだけチャンスが少なくなるということだ。
 それは何としても避けなければならない。

「今日から特区を調査するんだよな」

 トーラスの問いに、ラウルは地図に目を落としたまま答える。

「そうだ。特区までは移動用道路を使っても半日以上かかる。そのために今回は宿泊用具一式を用意してもらった。今日は移動にほとんど時間をとられてしまうから、本格的な調査は明日からになる。明日から三日間かけて全ての特区を回る。明日は特区Ⅰを、明後日はⅡ、明々後日はⅢを回る。もしこれで異常が認められなかった場合は、我々の灰菌症の調査は一旦中止となる」

「他の調査班はどうする?」

「我々が特区の調査を行っている間、残りの調査班特区以外を調査する手はずだ」

 特区へ調査に向かうラウル班以外の調査班は、ラウルたちが調査できなかった範囲を優先して調べることになっている。

「ミーシャの言う灰菌症の発生原因が本当に特区の泉にあるなら、ここからが本番と言える。感染する可能性もあるから気を抜くなよ。今一度防護服に不備がないかチェックしておくんだ」

「そうだな。てか、その泉がどうして灰菌症の発生原因に繋がるんだ?」

「アーリィ・リアトリスと行動を共にしていたときに、彼女は泉にとても強い興味を示していました。何故かと問うと濁されましたが、タイミング的に無関係ではないはずです。もしかしたらアーリィ・リアトリスは灰菌症についてなにか知っているのかもしれません」

「ああ、だから特区の泉を回ってたのか」

「ええ。アーリィ・リアトリスが何故泉を調査していたのかがわかれば、灰菌症の発生原因特定に近づくはずです」

 ミーシャは調査に同行するために考えついた嘘を並べる。

「でも、それならさっさと特区を調べればよかったんじゃねえか?」

「そういうわけにもいかん。灰菌症に罹った狼が発見されたのは特区じゃないんだ。特区以外の場所に感染源がある可能性も十分あるんだからな」

「それもそうか」

 トーラスは特に気にも留めていない様子で頷いた。
 よかった。あまり詳しく突っ込まれると返答に窮するところだった。

「でも泊りになるっていうと、あれだろ?」

 不機嫌な顔を隠そうともしないトーラスが溜息まじりに言う。

「そうだ。我々が向かっているのは、三つある特区の丁度中心にある監視塔だ。あそこなら調査を終えて、いちいち特区外の監視塔に戻る必要もないからな。順調にいけば夕刻前には監視塔に到着できるはずだ。そこで夜を明かし、明日からの本格的な調査に望む」

「特区の監視塔かよ。あそこ、滅多に人が行かないから埃だらけ虫だらけなんじゃねえか?」

「嫌なら、お前だけ野宿でも構わないぞ。夜は狼に注意するんだな」

「勘弁してくれ」

 トーラスがおどけて肩をすくめる。

「全く。遊びじゃないんだからな。特区に灰菌症が発生していたら洒落にもならん。これまでより更に気を引き締めて調査を行え」

「りょーかい」

 トーラスが呑気に返事を返し、荷台にもたれて居眠りを始めた。ミーシャは膝を抱えて俯く。
 この三日間がチャンスだ。ここを逃せば、次はいつになるか分からない。
 不安要素はいくつもあるが、今は目の前の仕事をこなすしかない。

 ◇◇◇

 ミーティングを終え監視塔へ向かう道中、会話らしい会話はなかった。トーラスは荷馬車のうえにいる時間のほとんどを眠ってすごしていた。ラウルは時折、荷馬車の手綱を握る職員と雑談に興じていたが、ミーシャと言葉を交わすことはなかった。
 あの日、監督署で目を覚ました夜。ミーシャが口にした裏切り者という言葉。
 ラウルはなにも言わなかった。ただ視線を落とし、ベッドに戻るよう促して帰って行った。
 その日からラウルとはほとんど言葉を交わしていない。調査班に入りたいと名乗り出たときと、調査の際に必要最低限の会話をしただけだった。

 二人の様子を察してトーラスが意思疎通の役割を担っていた。が、トーラスには向かない役割だった。女絡みになれば饒舌になり、関係を深めることができるトーラスだが、このような歪の生まれた関係を修復する術はトーラスの辞書にはない。決して寝心地のよくない荷馬車のうえで半日も眠っていられたのは、この二日間の気疲れが出たからかもしれなかった。
 荷台で昼食を摂ってすぐに、侵入ポイントに到着した。荷馬車から荷物をおろし、帰って行く荷馬車を見送った後、監視塔を目指して歩を進めた。
 
 監視塔までの道のりもできるだけ調査を行いたいというラウルの意思の元、防護服を着こんでいる。春の日差しは柔らかく、気温も決して高くはないが、慣れない装備に慣れない作業で監視塔に着いたころには全身汗だくになっていた。
 傾いた太陽からのなけなしの日差しを頼りに手際よく環境を整える。
 監視塔とは言うが実際は木造の二階建てのログハウスで、最小限の環境負荷で抑えるために、無駄なものは一切ない。
 一階にはテーブルと四脚の椅子があり、二階には四つの簡易ベッドがあるだけだ。
 トーラスが危惧していた通り、監視塔内はカビと虫が競い合うように主張していて、換気と掃除、それに三日間調査活動に必要な備品の整備などをしていると、あっという間に夜を迎えてしまった。

「とりあえずこれだけやっときゃいいだろ。ベッドが若干カビ臭いのはこの際目を瞑ろう」

 最低限の掃除を終え、トーラスが椅子に腰をおろした。
 テーブルに翌日使う道具を並べ、丁寧に清掃をしていたラウルが言う。

「監視塔内なら火を使うことはできる。だが、燃料はそこまで余裕があるわけじゃない。火は極力夜にのみ使用し、それ以外は控えよう。食事は携帯食ですませる。飲料水はきっちり三日分しか持ってきていないから無駄遣いはしないように」

「あー。コーヒーが飲みてえ」

「今そんなもの飲んだら眠れなくなるぞ。さあ、さっさと食事をすませて明日に備えて寝よう」

 バックパックから乾パンをとり出し、もそもそと口に運ぶ。相変わらず味はよくないが、懐かしさが胸をかすめた。
 アーリィと始めて食事を共にした夜のことを思い出す。散々な言われようだった携帯食粥。見た目、味、共に最悪な食事は控えめに言って人間が食べる最低ラインをわずかに超えている程度のものだった。
 とても不味かった。決していい思い出とは言えない。だが、不思議と口元が緩んでしまう。

「お? なんだミーシャ、面白いことでもあったのか」

 トーラスが口の端に食べかすをつけたままの顔でミーシャの顔を覗き込む。ミーシャは慌てて口元を覆うと、顔を逸らせた。

「別に。それより口に食べかすついてますよ。子供じゃないんだから、ちゃんとしてください」

「なんだよ。母ちゃんみたいなこと言いやがって。あ、俺母ちゃんいなかったわ」

 一つのランタンが照らす室内にトーラスの乾いた笑い声が響く。無理をしている。トーラスが家族のことを口にするなど、これまでの付き合いのなかで一度もなかった。それもジョークに使うなど、明らかに重い空気を払拭しようとして無理をしている。
 その姿が痛々しかった。そして、原因を作っていることにミーシャもわずかに申しわけなさを感じた。

「じゃあ、親じゃないけどあたしが姉になってあげますよ。手のかかる弟の面倒は姉が見るもんなんですよ?」

 だから、その無理に乗ってやった。二人との付き合いはキャスウェルに差し出すまでだ。最後がきたら、二人を生贄にして父をとり戻す。
 これはそれまでの遊びだ。
 そう自分に言いわけをしてやると、不思議と口が軽くなる。

「いや、歳考えれば俺が兄じゃねえか?」

「精神年齢はあたしの方が圧倒的にうえだと思いますけど?」

「いやいや、俺の本当の姿を知ればその考えも変わるだろうぜ。きっとお兄ちゃんって呼ばせてってお前は言うな」

「ははは。きんも」

 こんなやりとりも久しぶりだった。心なしか薄暗い室内もわずかに明るくなったように感じる。

「きもって思われても兄っていうのはいつでも妹を思っているもんなんだぜ?」

「……ちょっと鳥肌が。気持ち悪すぎて」

「あん!?」

 頭の悪い会話も不思議と笑みがこぼれてくる。以前の雰囲気だ。まだ真実を知る前の、なにも知らなかった世間知らずな子供のころの。

「お前ってやつは兄心を全くわかってないな」

「しつこいのやめてっていつも言ってますよね。ラウルさんも、見てないで言ってくださいよ。この人本当に……」

 あまりに自然で懐かしいやりとりに、ついいつもの調子で話を振ってしまった。瞬間、トーラスの顔が冷水を浴びせられたかのように固まった。
 途端に神経質な空気が室内に充満する。話を振ったミーシャも、自分の犯した失敗に内心苦虫を噛み潰した気分だった。
 だが、ラウルは気がついていないのか、それともわざとなのか、大仰な溜息をついてから視線を落としたまま諫めるように言った。

「お前たちその辺にしておけよ。明日も早いんだからな。トーラス、賢い妹の言うことはちゃんと聞いておけ」

 素っ気ない一言。しかし、それは上司としての責務を果たしつつも、場の空気を慰める絶妙な線にあるものだった。

「ちっ。しょうがねえな」

 不満げに頭を掻くトーラスの顔は喜びをかみしめているように見えた。
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