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リオナ 2
しおりを挟む現れたその幼女は、間違いなく、私を襲おうとした吸血鬼だった。
「へぇ? そっちから出向いてくるなんて、よっぽど私に敵討ちされたいんだ?」
「たかが人間ごときに、吸血鬼である私が負けるはずないでしょう? この前は邪魔が入ったけど、今度こそ、貴女を私のものにするわよ、リオナ」
「気安く名前を呼ばないでくれる? あなたに名前を呼ばれると、虫酸が走る」
そう言った後、私と吸血鬼は数秒間見詰め合う。
そこへ、アンナが割り込んできた。
「シリアスな場面に水を指すようで悪いのだけれど、あなた、本当にティアナを誘拐しようとしてるの?」
吸血鬼にそう訊ねる。
「……そうだと言ったら?」
「可愛い可愛いティアナを誘拐するだなんて、万死に値する重罪よ。灰も残らぬように殺してあげる」
「……ふ、ふふ、あはははははははははははっ! たかが人間の騎士が私を殺す? 笑わせないで! どうやら身の程を知らしめる必要がありそうね!」
そう言って、吸血鬼がアンナに向けて巨大な炎の塊(魔法)を放った。
こんなものは、勇者の末裔である私でも捌けない。
騎士のアンナなら尚更だ。
「アンナ……!」
私が叫んだのとほぼ同時に、巨大な炎がかき消えた。
「「へっ……?」」
私と吸血鬼の呆けた声が重なる。
なにが起きたのか、全くわからなかった。
いや、よく考えたら、アンナって吸血鬼なんかじゃ足元にも及ばない〝邪神〟を倒した人だった。
でも、本当になにが起きたのかわからなかった。
「あ、貴女、なにをしたの!?」
吸血鬼が訊ねる。
「なにって……斬ったのよ、細切れになるまでね」
「なっ……!?」
規格外過ぎでしょ!
いつ剣を抜いたのか、全くわからなかった――というか、剣が鞘に戻ってるから抜いたのかすら定かじゃない。
けど、現にあの巨大な炎がかき消えたところを目の当たりにしているから、アンナがやったことなのだと認めざるを得ない。
「あと、ついでに、あなたの首も斬っておいたから」
「「……は?」」
アンナの言ったことに吸血鬼と同時に困惑していると、次の瞬間、吸血鬼の首がポロッと落ちた。
……うそ。
「分身だったみたいだから、遠慮なく斬ったのだけれど、問題ないわよね? 本体だったら、これだけじゃ済ませてないから」
そう言ってニッコリと笑うアンナ。
でも、全く笑ってない。
あれは、内心相当怒ってるやつだ。
というか、分身であの強さってことは、本体はもっと強いんじゃないの?
そう思っていると、アンナが歩き始めた。
「私がそこに行くまでに、ティアナになにかしたら……」
そう言いながら、落ちた吸血鬼(分身)の頭の傍に立つアンナ。
そして、しゃがんで良い放った言葉が……
「首を撥ねるだけじゃ済まさないから、覚悟することね」
だった。
まるで、分身と本体が繋がっていることをわかっているかのような言い方に疑問を持ったけど、吸血鬼の表情に怯えが見えたことで、真実なのだと受け入れる。
「ぶ、分身だから油断したけど、本体ではそうはいかないから、覚えてなさいよ!」
完璧な負け犬の遠吠えを言い放つと、吸血鬼(分身)は複数のコウモリとなって散っていったのだった。
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