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コミュ障吸血鬼、事なきを得る
しおりを挟む「アン……ナ?」
僕がそう呟くと、アンナの般若のような表情がコロッと笑顔に変わる。
「ティアナ! よかった、無事だったのね!」
そう言いながら僕を抱き締めるアンナ。
あ、よかった、いつものアンナだ。
「ティアナというのね! 教えてくれて、どうもありがとう。規格外の化け物騎士さん」
言われてみれば、アンナが僕の名前を言ったせいで、あの吸血鬼に名前を知られてしまった。
「アンナの……バカ……」
「えっ!? そ、そんな……ティアナから罵倒の言葉が出るなんて……! もっと言って!」
そう言って再び僕を抱き締めるアンナ。
おまわりさん、こっちです。
このドMさんを早く牢屋にぶちこんでください。
……というか、リオナは?
やっぱり、僕が言い過ぎたから来てない……のかな……。
そんな僕の思考を読んだかのように、アンナが僕の耳元で「大丈夫」と呟いた。
「リオナは、入り口の吸血鬼達の相手をしてるから来れないだけよ」
「そう……なの?」
それを聞いて、なんだかホッとした。
そんな僕の様子を見て、アンナが優しく僕の頭を撫でた。
「先に入り口に行っててくれる? 私はあの吸血鬼にきっちりと落とし前をつけさせてから行くから」
「……? うん、わかった」
一瞬どんなことをするのかと不安に思ったけど、聞かない方がいい気がしたので、頷いて入り口に向かうことにした。
「ちょ、ちょっと! なに勝手に帰らせようとしてるの!? ティアナはもう私のものなのよ!?」
未だに壁にめり込んだままの吸血鬼がそう言った。
その次の瞬間、
――ドゴォォォォォン!!!
と後ろから大きな音が鳴った。
何事かと思っていると、すぐ目の前にいたはずのアンナがいなくなっていることに気づいた。
後ろに振り返ると、壁に向かって腕を突き出しているアンナの姿があった。
あの一瞬のうちに吸血鬼にパンチを繰り出すなんて、アンナって本当に強いんだ……。
「ティアナ、今のうちに入り口に向かって」
こっちに振り向いたアンナがそう言ってきたので、僕は頷いて入り口に向かった。
アンナの表情は……相変わらずの秀麗な笑みだった。
◆
入り口まで戻ってくると、元北村の人達がリオナに迫っているところだった。
しかも、元北村の人達の動きがおかしい。
これってもしかして、吸血衝動?
リオナが危ない……!
そう思った僕は、なぜか体を動かすより先に口を動かしていた。
「やめて!」
吸血衝動が起こっているのに言葉で止まるわけがないのに、勢いで言ってしまった。
しかも、あの吸血鬼の命令じゃないと聞かないはずなのに……。
ところが、僕の言葉で、吸血衝動が起こっているであろう元北村の人達の動きがピタリと止まった。
――あれ? 止まった? なんで?
どういうことなのか理解できずにいると、リオナが僕に気づいて駆け寄ってきた。
「ティアナ! よかった、無事だったんだね!」
そう言って僕を抱き締めるリオナ。
アンナもそうだったけど、二人とも僕を抱き締めすぎじゃない?
今までに何回抱き締められたことか。
いや、嫌ではないよ?
ただ、何かにつけて抱き締めてくるから、さすがに自重して欲しい。
今回は仕方ないけどね。
いや、今はそれよりも、来てくれたことにお礼を言わないと。
「……来てくれて、ありがとう……リオナ……」
そう耳元で囁く。
「……っ!? ちょっ、ティアナ、不意打ちはやめて! 心臓に悪いから!」
……なにが?
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