全てを失った僕は生きていけるのだろうか?

ナギサ コウガ

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■.再び胡蝶の夢

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「ねぇ兄さん。わたし達これからどうなるんだろ?これって良くない状況だよね?」

 体育座りのように器用にスカートを挟んで妹は蹲りながら呟くように僕に話しかけてくる。
 僕は妹の横に座ってどのように答えようかと考えていた。いつの間にか妹は僕に体を預けていた。柔らかくて暖かいな。

「状況は確かに良くないね。そもそも情報が殆ど来ないからね。彼らが何をどう考えているか分からないからね」
「そうだよ!会長は一体何を考えているんだろ?無理やり力で屈服させようとしていない?お兄さんそう思いませんか?」

 妹の友人の■■■■さんが食いついてきた。彼女の不満たらたらのようだ。
 確かに生徒会だかの訳の分からない組織は勝手に何かを進めている。表向きは僕達のために行動しているんだと主張はしているけど。
 誰かが意見を取りまとめて代表として交渉するのは必要だ。だけど皆の意見が集約されているかと言えばそうでもないと思う。
 
「確かにね。僕は彼らを良く知らないから。普段からあんな感じなの?」
「全然違いますね。前までは物腰が柔らかい人でしたよ。今は独断専行ですね。意見を聞くと言いながら全く聞く気が無いですよ。気づけば不良達を部下にして更生隊とか訳の分からないグループ作ってますし。かんがえられないですよ!そうだよね?■■■っち」
「そうだね。会長さんはすっかり変わったと思うよ。仕方なく変わったのかもしれないけど」
「仕方なくは無いね!あんな優越感に溢れた顔みたら分かるっしょ!あれは暴君になるわよ。昔で言うと・・・・」

 憤っていた■■■■さんが挙動不審になる。過去の偉人か何かに例えたいらしいのだけど・・・多分思いつかなかったんだろうな。
 妹もゆっくりと顔を上げて呆れた顔をしている。これがいつもの二人のやり取りかもしれない。
 なんとなく妹の気がまぎれたようだ。その意味でも■■■■さんは良き妹の友人だなと僕は思った。こんな時でも普段通りにできるというのは凄い事だよ。
 何を言おうかなと考えていたらどこからか声が掛かってきた。もうそんな時間か。

「何をイチャイチャやっているんだ。■■■の兄貴いつもの見回りだ。早く来な」

 坊主頭の鋭い目をしたヤツが声を掛けてきた。今日はこいつと見回りか。重い腰を上げ定期見回りに向かう。
 ■■■■さんは怒りを含んだ目を遠慮なく向けている。僕はハラハラしながら視線を遮るように立ち上がる。気に障る事があったヤツは何をするか分かったもんじゃない。女性ですら容赦がないんだ。
 
「今行くよ。■■■■さん■■■を宜しくね」
「は~い。よろしくされま~す。ね、■■■っち」
「もう■■■■は忙しいね。兄さん気を付けてね」

 二人に挨拶をしてヤツの元に向かう。ヤツは面白くない表情をしている。こりゃ見回り中に何かされるかもな。注意しないと。
 周囲を見渡すと生気が抜けたような表情をしている女性達がばかりだ。
 ・・・やっぱり良くないよな。
 とはいえ僕には何もできない。能力が無いからな。
 
 ヤツの後について僕は見回り場所に向かう。
 ・・・筈だったんだけど方向が違うな。
 生徒会に向かっているのか?
 今日は見回りじゃないのか。ヤツはそのまま生徒会の天幕に入っていく。あまり良い事はなさそうだけど仕方ない。覚悟を決めて天幕に入る。
 中にいたのは三名の男達だった。
 真ん中に堂々と座っている男は良く知っている。関わりたくないけど今はここのボスのような存在だ。

 ■■■■■■■■■。この冷酷な男が混沌とした状況を作った張本人だ。この男がもう少し理知的に冷静に行動してくれたら今のような状況にはなっていなかった。
 今は■■■から聞く印象とは真逆な本性を隠そうともしていない。
 あと二人いるが僕は面識が無い男達だった。更生隊の構成員だとは思うのだけど。
 僕一人が呼び出された時点で悪い予感しかしない。今日はどんな無理難題を出されるのだろう。

「やあ、よく来てくれたね。まずは座り給え」

 顎で座れと指図をする。一応僕の方が年上なのだけど■■■■■■■■■にはそんな感情は捨ててしまったようだ。蔑んだ目で見ている。
 指示通り大人しく座ると突然後ろから軽く殴られ腕を固められてしまった。とても力強く僕の力では動けそうもない。
 
「いきなりこれはどういう事ですか?」
「君には不本意な事かもしれなけどこれは決定事項なんだ。■■■はこのままでは君に依存してしまう。君は知らないかもしれないが彼女が君に向ける好意は兄妹を超えていると私は思う。本来そのような感情は許されるものでは無い事は分かるだろう?」

 何を言っているのか分からない。■■■が僕に好意を?僕達は兄妹だぞ。そんな許されざる関係になる訳がない。これは■■■■■■■■■が作った言いがかりだ。
 適当な理由を作って僕から■■■を遠ざけようとしているのだ。
 これは決して承諾していい事案じゃない。
 
「それは誤解です。確かに仲良く過ごしているように見えるかもしれませんが僕と■■■は兄妹を超えようとは思っていない。それは■■■本人にも確認してもらえれば分かります」

 そんな事は無い。しかし■■■■■■■■■は疑いの籠った目を変えなかった。確信したかのような目のままだった。
 ■■■■さんも言っていたが矢張り聞く耳は持ってい無い様だ。疑惑を持った時点で確信にされてしまったようだ。
 僕はどうなってしまうのだろうか?
 ■■■■■■■■■は椅子から立ち上がりゆっくりと僕に近づいてくる。
 理解はできていないが何をされるかは分かっている。
 あの能力を使うのだ。噂では聞いている。■■■■■■■■■■■■■■とかいう能力だ。
 あれは不味い。振りほどこうとするが信じられない力で抑えられて動けない。
 更生隊のもう一人も僕に近づいてくる。
 何をするんだ。

「よせ!止してくれ!僕は何も間違いをしていないし。この組織に逆らおうという気も無い。■■■から離れろというなら近づかない。命だけは奪わないでくれ!」
「最初からそうしていれば良かったのですよ。でももう遅いですよ。君は生徒会の決定で不要な人材と決定したのです。これは処分です」

 何を言っても無駄という事か。くそっ!動けない。
 処分。
 行方不明という名目で不定期に生徒が居なくなる事が発生していた。最初は平静を保てなくて逃げたのだと思っていた。
 実際は違うのかもしれない。
 生徒会の意にそわない・・・否、■■■■■■■■■の気に入らない者は排除されるのだ。
 
 ■■■■■■■■■の性格を考えると殺害されるのは間違いないだろう。
 せめて■■■を元の・・・・・・・。
 
 僕は何も考えられなくなってしまった。
  
 ■■■・・・・。
 ごめん・・・・。

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