全てを失った僕は生きていけるのだろうか?

ナギサ コウガ

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30.「家」を創設するなら

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「ところで貴女はどちらの邑なのか?何故ケイと一緒にいるのかな?」

 近隣の邑の状況を知った僕。
 情報の整理がまだできていない。そんな状態でのライラさんの質問だった。
 誰の事を聞いているのだろう。
 ふと我に返る?ああ、そうか。エリナさんか。初対面か。
 ちらりとエリナさんを見る。
 彼女は灰色のコートで全身を隠しフードを目深に被っているんだ。口元にはマスクするように布で覆っている。
 彼女の怪我の事を思えば顔や体は見せたくないだろう。これは仕方ない。
 ライラさんやアイナさんと僕はずっと話をしていた。二人はエリナさんやソニヤさんの存在は知っていたけど放置していたフシがある。
 話がひと段落してソニヤさんは紹介が終わったけどエリナさんは終わってなかったものな。
 それにしても何故僕と一緒にいるかって聞くか?
 あ、でも。僕とエリナさんの距離は近い。それである程度親しいと考えたのかも。
 ライラさんとアイナさんを見る。
 ライラさんはエリナさんを見つめて変事を待っている。
 アイナさんは・・・なんで僕を見ているの?なんで責めるような目をしているのですか?
 僕何かやってしまったかな?あ、目線があったら睨まれた。・・・なんか可愛らしい。アイナさんにもこんな表情あるんだ。へ~。
 
「私は・・・リナと申します。邑を追い出されました。ですが奴隷ではありません。理由は詮索しないで頂けますと助かります」

 あ、しまった。僕が紹介しないといけなかった。そういえばエリナさん”リナ”と偽名を使っている。ソニヤさんにも”リナ”と言っていたな。
 もしかしてエリナさんは有名人なのか?そう思うとエリナさんの受け答えも分かるような気がする。

「詮索するために話しかけたんだけど。貴女がケイに含む所があると私は困るんだよ。害意が無いという証明の為にも前に所属していた邑を教えて欲しいのだ。強引にフードを取っても良いのだよ」

 エリナさんが身構えてしまう。咄嗟にだと思うけど僕の背後に回り体を寄せてくる。おう・・・柔らかいものが・・・。
 
「そうよ。ケイくん。随分親しそうじゃないの~。この人と会ってまだ数日なのに~。どういう事なのかな~?」
 
 ア・・アイナさん。ち、近いです。何故?

「姉さん。話をずらさない。私はこの女性にに聞いてるの。ケイとの関係はその後でいいじゃないの」
「え~。とっても大事な事よ。ケイ君との関係で分かるかもしれないでしょ?」
「む・・。ケイ。お前が代わりに話してくれてもいいのだが。どうする?」

 あ・・・。ライラさんが冷たい目をしている。
 エリナさんを紹介していなかったのは悪かったけど。そんなに責めなくても。
 エリナさんは生れを知られたくなさそうだ。ライラさん達から漏れると生家からまた襲われる危険性があるから良く分かる。存在を知られるわけにはいかないのは僕も強く同意する。
 どう話せばいいのだろう。
 正直に話せないけど。正直に話さないといけないか。
 
「この人は知られたくない事情があるのです。顔を隠しているのもその理由です。自分の存在を可能な限り秘匿したいのです。そこを汲んでください。お願いします」
「ソニヤ殿。貴女もこの女性を知らぬのか?」
「え、はい。わたしは昨日助けられました。わたしの事情を理解して頂くのに必死で。こちらのケイさんについても邑を追い出されたとしか聞いていないです」
「そうなのか。ケイ。お前はリナという女性をどこまで知っているのだ?騙されていないのだな?」
「どのような事情でここにいるかは知っています。僕を騙しているという事はあり得ないです。僕は彼女の力になりたいと思っています。お互いに信頼関係は成立していますよね?」

 僕は背後のエリナさんに声を掛ける。エリナさんは僕の背中に抱きついているような感じだ。手が震えているのが伝わる。もしかして異能でライラさんやアイナさんを見たのかも。
 
「・・・はい。私達はお互い信頼を寄せています。現在の私は彼無しには生きていくのも覚束ないです。お互い正直に話をしています」

 なんか誤解されそうな言い方をしている気もするけど。信頼関係がある事を伝えるしかない。

「多分なんですけどリナさんの過去を話したとしますね。そうなると何者なのかはいずれ分かると思います。それは彼女が望んでいないのです」
「ケイはリナ殿からは信頼をされているから知っている。私達は信頼されていないから話せない。だが、人となりは問題ないから一緒にいても問題無いと言いたいのか?」
「はい。僕はリナさんの安全を守りたいのです。それが第一優先です。そこに該当する話はできません」
「それは我々が信用できないと言っているのか?」

 ライラさんが冷たい目をしてきた。
 怖い。
 舐めた事言ってんじゃないぞという所か。エリナさんのしがみつきが強くなってきた。きついけど・・・柔らかい。・・・イカン。

「違います。信用云々では無いです。彼女を知っている人は少ないほうが良いのです。何が切っ掛けで漏れるか分からないからです。悪意が無くても情報が漏れてしまう、もしくは悟られてしまうという事はあると思います」
「仮に今回の各邑で発生している良くない事象について有用な情報があったとしてもか?」

 ライラさんの目は変わらない。怒りもにじんでいる気がする。
 僕はエリナさんの震える手を握る。震えながらもエリナさんも握り返してくれた。
 頑張りますね。

「・・・はい。僕は詳細な情報を知りません。ですが彼女の事情には何も関係はありません。そこは僕が保証できます」
「どこの邑にも所属しておらず且つ、”家”も無いお前が保証するのか?何を担保に私はその話を信じればいいのだ?」

 ・・・きた。
 
「邑も”家”もこれから作ります。きちんと生活できる基盤を築けたら創設します。これはあなた方から聞いたことですよ。二人だけでも”家”は創設できるし誰の認可も要らないと。正式では無いですけど僕はもう”家”を作っているつもりです」

 ライラさんは怖い顔になった。”家”に拘るなら宣言してしまえばいい。”家”に形式は必要ないというのはライラさん達から聞いている。問題無しだ。
 ”家”があれば問題ないというなら宣言してしまえばいいんだ。
 勿論、屁理屈を言っているのは僕自身理解している。
 これで怒らせてしまっても殺されるわけでもない。絶縁されるかもしれないけどもとより追放されているんだ。強気でいく。でもアイナさんには謝らないと。
 さて、ライラさんはどうする?怒りの表情のままだけど。・・・殺されるのかな?

「は~い。そこまで。ライラもこれ以上ケイ君やリナさんを虐めてはダメよ。ライラは他の”家”の当主に喧嘩を売っているのかしら?ケイ君はソリヤ家の人では無いのよ。あなた達が決定した事でしょ?」
「違・・・私が決定した訳じゃない。あれは・・・否。それは言い訳か。確かに他の”家”の当主を理由もなく咎めてはいけないか。ましてやリナ殿はケイの”家”の人だ。過度に詮索はできないか。分かった」
「はい、決まりね。リナさんの詮索はしない。ライラは勿論ソニヤさまも宜しいですね?」
「承知」「あ、ええ。承知しました」

 おお~。なんとかなった。ホッとした。アイナさんのおかげです。感謝します。
 エリナさんのしがみつきが少し緩くなった。手の震えもなくなっているな。でも絡めた手は放してくれない。一層強く握ってきている。
 ・・・・・。

「ね~。ケイくん?リナさんとはどういう関係なのかしら?そんなにぴったりくっついちゃって。わたしちょっと気になるんだけど~」

 あ、そうですよね。僕もなんでエリナさんがこんなにくっつてくるのか分かってないんですよ。
 ちょ、ちょっとエリナさん更に体ひっつけないで・・・・。

「えっと。それは・・・彼女の事情を話す事になるので・・・ちょっと」
「ふ~ん。そういう事に使うのね?へ~、わたしにも話してくれないの~。へ~」

 うう・・・・。
 なんでこうなってしまうんだ。僕なにか悪い事したのかな?なんでそんなに責められるの?
 ライラさんは最早興味はなさそう。
 ソニヤさんは視線を外しているフリしてチラチラこっちを見ている。・・・興味はあるけど無関心を装っているのか。
 アイナさんは微笑んでいるけど目が怖いですよ。

「はは。時期がくればいずれ話せるかもしれません。い、今はちょっと。でもアイナさんがもしかして想像しているような事は無いと思いま・・・。痛っ」

 エリナさん空いている手で僕の背中をつねらないで。話しているときにそれは厳しいです。そんなお気に召さない回答でした?
 一方のアイナさんは変わらず疑いの目。ちょっと。アイナさん近いですって。

「ふ~ん。それにしては随分親しそうじゃない~?あの時に私に告白してくれたのは嘘だったの~?」
「へっ?痛っ」

 アイナさん何言っているの?いくら僕が記憶喪失でもそんな告白なんて記憶無いですよ。
 あ~痛い。痛い。エリナさん勘弁して。肉が千切れます。そんなにネジらないで。・・・もげる。

「三人で何の寸劇をやっているんだ。見て居られない。すまないが本来の目的の話を続けてもいいか?」

 ライラさんが仲裁に入ってくれた。アイナさんは不満顔だけど。とりあえず安堵。
 でもこの騒動はアイナさんが原因ですよ。知っていますか?

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