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43.彼らとの関係
しおりを挟む暖かい感触に気づいて目が覚める。
柔らかい感触が心地よい。
ん?
あれ?僕は攻撃されて・・・意識を失ったような。
「ケイ君、気づいたようです」
「良かった~。事前にリナさんから聞いていたけど、やっぱり不安だったわ。やっと安心ね~」
「そうですよね。ケイ君、私達が分かります?」
聞きなれた二人の女性の声がする。状況はまだ分からないけど助かったという所か。
ゆっくりと目を開ける。
視界に入ってきたのはエリナさんとアイナさんの二人だ。僕は仰向けに寝ているようだから二人は上から覗き込むように僕を見ているみたいだ。
だけどアイナさんは横から覗き込んでいるから僕の横にいるんだろうだけどエリナさんの位置はおかしい。僕の頭側から覗いているようだ。
あれ?柔らかい感触って?もしかしたら。慌てて起きようとしたら頭をガッチリと掴まれてしまう。
ああ、これは・・・。
「駄目ですよ。大丈夫だと確認できるまで寝ていてください」
・・・やっと認識する。この後頭部の感触はエリナさんの太ももなんだ。僕はエリナさんに膝枕されているらしい。
うわわ。これは嬉しいやら、恥ずかしいやら。ここは素直に従うべきか。エリナさんの声の調子から推測するに、今の体勢をずらそうとすると怖そうだ。
手に力入りすぎでしょ・・。このまま話を聞くしかなさそうだ。
「・・・・はい。では暫く膝借りますね。確認したい事があるんですけど聞いていいですか?」
「ええ!どうぞ、そのままで休んでいてね。。ここはキュメネ邑に近い草場なんです。アイナさんに確認してもらいましたが今の所この場所は安全のようですよ」
「あ、そうなんですね。僕はまたアイナさんに助けて貰ったという事ですか」
「そんな事は無いわよ~。私は逃げる手伝いをしただけ。ケイくんを助けたのはリナさんよ。勇ましかったんだから。あの姿は見ておくべきだったわよ~」
「いえ、私が出来たのはあの人達に退いてもらうだけでした。アイナさんがいなければケイ君を運ぶことすらできませんでしたから。私も助けて頂いてありがとうございます」
「うふふ、ではそういう事にしておきましょう。それにしても驚いたわ~。二人でキュメネ邑に向かうなんて。最初はなんで無謀な事をと思ったのだけど。二人の能力を見たら少し安心したわ~。でも危ない事はして欲しくなかったわ~。実際ケイくんは重傷だったんだし」
「はい、そこは反省しています。少し邑の様子を確認したかったのです。相手があれほど手ごわいと思っていませんでした。確かに無謀でした」
「そうね。無謀と勇敢は違うわね~。二人は私の知らない能力があったみたいだから結果として助かったともいえるけど。だからといって何でも出来ると思うのは違うわよ~」
「私もそう思いました。相手の能力について慎重になるべきでした。言い訳になりますけど相手の情報を少しでも知りたかったのです。これは私達の安全のためにも譲れない点でした」
「ええ、そうね。必要ね~。他の邑でも相手の情報は欲しいと思っているのだから~ね。でも、今の所殆ど分かっていないのが現状みたいよ~」
「どこまで分かっているのです?」
「キュメネ邑に関係がある人達みたい。人数は不明。今の所キュメネ邑を拠点にして行動していてイキシ邑、ネルヤ邑を制圧しようとしているみたい。交渉相手は異能持ちで外壁を一瞬で壊すみたい。そんな所かしら」
「交渉は続いているのですか?」
「私はそこまでは分からない。また聞きだけど交渉の余地が無い交渉相手みたいよ~。さっさと降参しなさいと言う事なのでしょうね~」
「余程自分達の力に自身があるのですね。外壁を壊せるほどの異能持ちであれば頷けます」
あらま?
なんだかエリナさんとアイナさんで話が盛り上がっているな。僕はいなくてもいいんじゃないか?
ま、まぁ。なんとなく状況は分かってきたけど。二人っていつの間に仲が良くなったんだ?そんな感じがするよ。
二人の話はまだ途切れないぞ。でも悪くない。ふんふんと頷きながら聞いている。うん、本当に落ち着くな。
「ケイ君?私達何か面白い事話してました?」
「へ?・・あ、いや。二人の空気感が心地良くて」
いきなり覆いかぶされた。視界が塞がれ、柔らかい感触が顔全体に当たる。
「へぶ・・」
く・・・苦しい。
軽く暴れたら視界が戻る。
「も~、リナさんったら~。ケイくんを窒息させるの?いくら嬉しいからといってもダメよ~」
「ご、ごめんなさい。恥ずかしいのか嬉しいのか分からなくなってしまって」
エリナさんはフードに顔を隠したままだけど顔が赤いのがなんとなく分かる。アイナさんがいると恥ずかしがり屋になるのかな?ここ数日のエリナさんとはちょっと違って面白い。
そんな僕の表情が気に入らなかったのか僕の顔を固定した手を動かして頬の肉をぷにぷにと揉み始める。なぜかエリナさんは僕の頬の感触が好みらしい。今はニヤけた顔を無くしたかったのかもしれないけど。
フードが陰になっているからはっきりと表情は分からないけど。可愛らしい顔をしていると思う。
「な~に、その親密なイチャつきは~。随分と仲が良いのね~」
あ、アイナさん。目・・・ちょっと怖いっす。そんな起こる事・・・だね。離れているとはいえ敵地の近くだ。気が緩みすぎなのは確かだ。
慌ててエリナさんの手を外し、名残惜しいけど起き上がる。
「あ・・・」
エリナさん。そんな残念な表情にならないで。こじれる前に強引にでも話題を変えよう。
「仲が良いかはともかく。敵地の近くで油断しすぎでした。僕の体調は大丈夫そうです。早くこの場から立ち去りましょう。二人は大丈夫ですか?」
「あ、うん。そうね~。ここまでは追いかけてこないと思うけど。安全な内に戻るべきね。ケイくんは無理していないよね?」
「暫く歩いてみないと分かりませんけど。多分大丈夫だと思います。まだ感覚は馴染んでいませんが少しづつ理解できてきましたし」
「ケイくんのそれって異能よね?」
あ、そうだった。話の流れ的にそうなるのか。エリナさんはどう説明したんだろ?アイナさんには僕の異能を伝えるのは問題無いし。でもどう説明したら良いんだろ?
チラリとエリナさんを伺う。それだけで理解してくれたようだ。
「状況説明する中で少しだけケイ君の異能を話ましたわ。私もはっきりと理解でき所もあるから概要だけね。戦闘向きの異能と怪我を治癒する異能という程度です。この二つがあるから戦闘も対応できると万が一怪我をしても異能で治癒できると」
「そう。その程度の説明ね~。二つも異能を持っているのね~。それって私達に知られたくないから黙っていたの?」
「あ、いいえ。実は知らなかったんです。信じられないと思うのですけどイキシ邑を出てから異能が発現したんです。だから上手く仕えていないと思うんですよね。後から反動もあるし。上手く使わないと結構大変な異能なんです」
「へ~。やっぱりケイくんって特別な人なのね~。私は信じるか信じないかと言われたら信じるよ。ケイくん、そんな人じゃないと思うのね~」
「あ、ありがとうございます。とりあえず体は大丈夫だと思いますので洞穴に戻りましょう」
意外な事にアイナさんはあっさり納得してくれたみたいだ。僕を信じてくれているのか、僕が寝ている時にエリナさんが納得のいく説明をしてくれたのか。
ちょっと分からないな。でもアイナさんは信頼できる女性だから詳しく伝えても構わないと思う。だけど、その流れでエリナさんの異能を説明しないといけなくなると思う。
エリナさんの安全を確保するためにはエリナさんの異能は秘匿する必要がある。
アイナさんはソリヤ家の人で且つイキシ邑の住人だ。特に”家”という縛りがある以上アイナさんがソリヤ家の面々にエリナさんの異能を話す可能性はある。
だから異能については慎重に説明しないといけない。
エリナさんの異能は特異なものだ。ネルヤ邑の蔡家固有の異能だ。その”家”の事情の詳しい所は僕には分からない。その”家”から追放されたエリナさんを欲しがる邑は絶対にある。
だからセランネ家はエリナさんを亡き者にするため刺客を送ったんだ。幸いにも僕の異能で対処できたから良かったのだけど。これが他にも知れたらとてもじゃないけど逃げるしかない。
どこまで話すのかが難しい。
そんな事を考えながら洞穴に戻っていった。幸い体はすっかり回復したから僕は問題なく歩けている。寧ろエリナさんを助けながら歩いたのだけどね。
結果的にアイナさんが助けに来てくれたから生き延びる事ができた。
異能の使い方を覚えたとはいえ僕はまだまだだったんだ。増長はしていないと思っていたけど、どこかに油断は確実にあったと思う。
だけど油断をしないと注意してもキュメネ邑を占拠している者達は危険な連中だった。全く敵わなかった。今後相手にする時はなるべく一対一の状況を作らないといけない。
一体どういう異能なんだろう。
他にも気になる事はある。
あの男達は僕を知っているようだった。
記憶を失う前の僕はどの程度の知人だっのだろう。
『どうやって生きていた?』
生きていたと言っていた。それは死んでしまったと思っていたと事だ。
僕は彼らに殺されたのか?
『僕を忘れたとは言わないよね』
全く思い出せない。
仮に知人であるのなら僕の本来の立ち位置は彼らの下という事になるのか?
『大事な人がいるからね。簡単には諦められないか』
大事な人?
誰の事だ。
『彼女には会わせない』
彼女?
僕に関係のある女性が彼らのもとにいるのか。
だけど全く思い出せない。どうにかして戻らないものか。
唯一確かな事がある。
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それは、どうにも良い関係では無いと思う。
不要になったのか、存在が邪魔だったのか、あるいは別の理由で僕を殺そうとした。
何故かは当然分からない。
過去に何があったのだ。
でも、やはり思い出せない。
しかし、このまま逃げ続ける訳にはいきそうもない。
僕は彼らと対峙しないといけないのだ。
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