全てを失った僕は生きていけるのだろうか?

ナギサ コウガ

文字の大きさ
46 / 57

43.彼らとの関係

しおりを挟む

 
 暖かい感触に気づいて目が覚める。
 柔らかい感触が心地よい。
 
 ん?
 あれ?僕は攻撃されて・・・意識を失ったような。
 
「ケイ君、気づいたようです」
「良かった~。事前にリナさんから聞いていたけど、やっぱり不安だったわ。やっと安心ね~」
「そうですよね。ケイ君、私達が分かります?」

 聞きなれた二人の女性の声がする。状況はまだ分からないけど助かったという所か。
 ゆっくりと目を開ける。
 視界に入ってきたのはエリナさんとアイナさんの二人だ。僕は仰向けに寝ているようだから二人は上から覗き込むように僕を見ているみたいだ。
 だけどアイナさんは横から覗き込んでいるから僕の横にいるんだろうだけどエリナさんの位置はおかしい。僕の頭側から覗いているようだ。
 あれ?柔らかい感触って?もしかしたら。慌てて起きようとしたら頭をガッチリと掴まれてしまう。
 ああ、これは・・・。

「駄目ですよ。大丈夫だと確認できるまで寝ていてください」

 ・・・やっと認識する。この後頭部の感触はエリナさんの太ももなんだ。僕はエリナさんに膝枕されているらしい。
 うわわ。これは嬉しいやら、恥ずかしいやら。ここは素直に従うべきか。エリナさんの声の調子から推測するに、今の体勢をずらそうとすると怖そうだ。
 手に力入りすぎでしょ・・。このまま話を聞くしかなさそうだ。

「・・・・はい。では暫く膝借りますね。確認したい事があるんですけど聞いていいですか?」
「ええ!どうぞ、そのままで休んでいてね。。ここはキュメネ邑に近い草場なんです。アイナさんに確認してもらいましたが今の所この場所は安全のようですよ」
「あ、そうなんですね。僕はまたアイナさんに助けて貰ったという事ですか」

「そんな事は無いわよ~。私は逃げる手伝いをしただけ。ケイくんを助けたのはリナさんよ。勇ましかったんだから。あの姿は見ておくべきだったわよ~」
「いえ、私が出来たのはあの人達に退いてもらうだけでした。アイナさんがいなければケイ君を運ぶことすらできませんでしたから。私も助けて頂いてありがとうございます」
「うふふ、ではそういう事にしておきましょう。それにしても驚いたわ~。二人でキュメネ邑に向かうなんて。最初はなんで無謀な事をと思ったのだけど。二人の能力を見たら少し安心したわ~。でも危ない事はして欲しくなかったわ~。実際ケイくんは重傷だったんだし」
「はい、そこは反省しています。少し邑の様子を確認したかったのです。相手があれほど手ごわいと思っていませんでした。確かに無謀でした」
「そうね。無謀と勇敢は違うわね~。二人は私の知らない能力があったみたいだから結果として助かったともいえるけど。だからといって何でも出来ると思うのは違うわよ~」
「私もそう思いました。相手の能力について慎重になるべきでした。言い訳になりますけど相手の情報を少しでも知りたかったのです。これは私達の安全のためにも譲れない点でした」
「ええ、そうね。必要ね~。他の邑でも相手の情報は欲しいと思っているのだから~ね。でも、今の所殆ど分かっていないのが現状みたいよ~」
「どこまで分かっているのです?」
「キュメネ邑に関係がある人達みたい。人数は不明。今の所キュメネ邑を拠点にして行動していてイキシ邑、ネルヤ邑を制圧しようとしているみたい。交渉相手は異能持ちで外壁を一瞬で壊すみたい。そんな所かしら」
「交渉は続いているのですか?」
「私はそこまでは分からない。また聞きだけど交渉の余地が無い交渉相手みたいよ~。さっさと降参しなさいと言う事なのでしょうね~」
「余程自分達の力に自身があるのですね。外壁を壊せるほどの異能持ちであれば頷けます」

 あらま?
 なんだかエリナさんとアイナさんで話が盛り上がっているな。僕はいなくてもいいんじゃないか?
 ま、まぁ。なんとなく状況は分かってきたけど。二人っていつの間に仲が良くなったんだ?そんな感じがするよ。
 二人の話はまだ途切れないぞ。でも悪くない。ふんふんと頷きながら聞いている。うん、本当に落ち着くな。

「ケイ君?私達何か面白い事話してました?」
「へ?・・あ、いや。二人の空気感が心地良くて」

 いきなり覆いかぶされた。視界が塞がれ、柔らかい感触が顔全体に当たる。

「へぶ・・」

 く・・・苦しい。
 軽く暴れたら視界が戻る。

「も~、リナさんったら~。ケイくんを窒息させるの?いくら嬉しいからといってもダメよ~」
「ご、ごめんなさい。恥ずかしいのか嬉しいのか分からなくなってしまって」

 エリナさんはフードに顔を隠したままだけど顔が赤いのがなんとなく分かる。アイナさんがいると恥ずかしがり屋になるのかな?ここ数日のエリナさんとはちょっと違って面白い。
 そんな僕の表情が気に入らなかったのか僕の顔を固定した手を動かして頬の肉をぷにぷにと揉み始める。なぜかエリナさんは僕の頬の感触が好みらしい。今はニヤけた顔を無くしたかったのかもしれないけど。
 フードが陰になっているからはっきりと表情は分からないけど。可愛らしい顔をしていると思う。
 
「な~に、その親密なイチャつきは~。随分と仲が良いのね~」

 あ、アイナさん。目・・・ちょっと怖いっす。そんな起こる事・・・だね。離れているとはいえ敵地の近くだ。気が緩みすぎなのは確かだ。
 慌ててエリナさんの手を外し、名残惜しいけど起き上がる。

「あ・・・」

 エリナさん。そんな残念な表情にならないで。こじれる前に強引にでも話題を変えよう。
 
「仲が良いかはともかく。敵地の近くで油断しすぎでした。僕の体調は大丈夫そうです。早くこの場から立ち去りましょう。二人は大丈夫ですか?」

「あ、うん。そうね~。ここまでは追いかけてこないと思うけど。安全な内に戻るべきね。ケイくんは無理していないよね?」
「暫く歩いてみないと分かりませんけど。多分大丈夫だと思います。まだ感覚は馴染んでいませんが少しづつ理解できてきましたし」
「ケイくんのそれって異能よね?」

 あ、そうだった。話の流れ的にそうなるのか。エリナさんはどう説明したんだろ?アイナさんには僕の異能を伝えるのは問題無いし。でもどう説明したら良いんだろ?
 チラリとエリナさんを伺う。それだけで理解してくれたようだ。

「状況説明する中で少しだけケイ君の異能を話ましたわ。私もはっきりと理解でき所もあるから概要だけね。戦闘向きの異能と怪我を治癒する異能という程度です。この二つがあるから戦闘も対応できると万が一怪我をしても異能で治癒できると」
「そう。その程度の説明ね~。二つも異能を持っているのね~。それって私達に知られたくないから黙っていたの?」
「あ、いいえ。実は知らなかったんです。信じられないと思うのですけどイキシ邑を出てから異能が発現したんです。だから上手く仕えていないと思うんですよね。後から反動もあるし。上手く使わないと結構大変な異能なんです」
「へ~。やっぱりケイくんって特別な人なのね~。私は信じるか信じないかと言われたら信じるよ。ケイくん、そんな人じゃないと思うのね~」
「あ、ありがとうございます。とりあえず体は大丈夫だと思いますので洞穴に戻りましょう」

 意外な事にアイナさんはあっさり納得してくれたみたいだ。僕を信じてくれているのか、僕が寝ている時にエリナさんが納得のいく説明をしてくれたのか。
 ちょっと分からないな。でもアイナさんは信頼できる女性だから詳しく伝えても構わないと思う。だけど、その流れでエリナさんの異能を説明しないといけなくなると思う。
 エリナさんの安全を確保するためにはエリナさんの異能は秘匿する必要がある。
 アイナさんはソリヤ家の人で且つイキシ邑の住人だ。特に”家”という縛りがある以上アイナさんがソリヤ家の面々にエリナさんの異能を話す可能性はある。
 だから異能については慎重に説明しないといけない。
 エリナさんの異能は特異なものだ。ネルヤ邑の蔡家固有の異能だ。その”家”の事情の詳しい所は僕には分からない。その”家”から追放されたエリナさんを欲しがる邑は絶対にある。
 だからセランネ家はエリナさんを亡き者にするため刺客を送ったんだ。幸いにも僕の異能で対処できたから良かったのだけど。これが他にも知れたらとてもじゃないけど逃げるしかない。
 どこまで話すのかが難しい。
 そんな事を考えながら洞穴に戻っていった。幸い体はすっかり回復したから僕は問題なく歩けている。寧ろエリナさんを助けながら歩いたのだけどね。
 
 結果的にアイナさんが助けに来てくれたから生き延びる事ができた。
 異能の使い方を覚えたとはいえ僕はまだまだだったんだ。増長はしていないと思っていたけど、どこかに油断は確実にあったと思う。
 だけど油断をしないと注意してもキュメネ邑を占拠している者達は危険な連中だった。全く敵わなかった。今後相手にする時はなるべく一対一の状況を作らないといけない。
 一体どういう異能なんだろう。
 
 他にも気になる事はある。
 
 あの男達は僕を知っているようだった。
 記憶を失う前の僕はどの程度の知人だっのだろう。
 
『どうやって生きていた?』

 生きていたと言っていた。それは死んでしまったと思っていたと事だ。
 僕は彼らに殺されたのか?


『僕を忘れたとは言わないよね』

 全く思い出せない。
 仮に知人であるのなら僕の本来の立ち位置は彼らの下という事になるのか?


『大事な人がいるからね。簡単には諦められないか』

 大事な人?
 誰の事だ。


『彼女には会わせない』

 彼女?
 僕に関係のある女性が彼らのもとにいるのか。
 だけど全く思い出せない。どうにかして戻らないものか。


 唯一確かな事がある。
 僕は彼らとは何らかの関係性があったのだ。
 それは、どうにも良い関係では無いと思う。
 不要になったのか、存在が邪魔だったのか、あるいは別の理由で僕を殺そうとした。
 何故かは当然分からない。

 過去に何があったのだ。
 でも、やはり思い出せない。
 
 しかし、このまま逃げ続ける訳にはいきそうもない。
 僕は彼らと対峙しないといけないのだ。
 
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

『召喚ニートの異世界草原記』

KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。  ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。  剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。  ――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。  面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。  そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。  「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。  昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。  ……だから、今度は俺が――。  現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。  少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。  引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。 ※こんな物も召喚して欲しいなって 言うのがあればリクエストして下さい。 出せるか分かりませんがやってみます。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

処理中です...