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2章 様々な初めて
2-6 衝突
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2日後の放課後。
駿は、6月の後半に行われる地区大会に向けた練習を終え、汗を拭いながら部室を出ようとしていた。
このあとはいつもように果奈と帰る。
そのことだけを考えて、自然と足取りが軽くなっていた。
「浅村」
背後から、低い声がかかる。
振り返ると、隆二が立っていた。
いつもの余裕のある表情はなく、どこか硬い。
「ちょっと、いいか」
「……手短で頼む」
果奈を待たせたくない。
そう思いながらも、立ち止まった。
「浅村のクラスに、早川っているよな」
「いるけど……早川さんがどうかした?」
隆二は一瞬、視線を逸らした。
その仕草だけが、果奈に告白する時の自分を見てる感じがして、嫌な予感が胸をかすめる。
「明日、告白しようと思ってる」
空気が、一瞬止まった。
「……だから」
「情けないのは分かってるけど、協力してほしい」
動揺が、胸の奥を突いた。
分かっていた。
言われる前から、どんな話か察していた。
「……今、早川さんも大変そうだし」
「やめた方がいいんじゃないかな」
本当は――
「やめろ」と言いたかった。
隆二は何も言わず、唇を噛む。
沈黙が重く落ちた。
ざらついた感情が、胸に広がる。
「……どうして、早川さんを好きになったの?」
自分でも意外なほど、静かな声だった。
「隆二ってさ」
「女子に興味ない感じだったじゃん」
けれど、隆二は逃げなかった。
「1年の時、同じクラスでさ」
「話す機会が多くて……気づいたら、意識してた」
「クラスが別になったら、そのうち落ち着くと思ったんだ」
一度、言葉を切る。
「でも、逆だった」
「気づいたら、好きになってた」
“好き”。
その言葉が、胸を打つ。
聞きたくなかった。
分かりたくもなかった。
「俺のやり方が正しいとは思ってない」
「でも……この気持ちを、押し殺すのは辛い」
「頼む、浅村」
隆二は、頭を下げた。
その瞬間、胸の奥で何かが弾けた。
果奈に告白する前の、自分。
声もかけられず、遠くから見ているだけだった日々。
必死で踏み出した、あの瞬間。
――それを。
「……ふざけんなよ」
「浅村?」
「ふざけんなって言ってるんだよ!」
声が、思った以上に荒れた。
「おまえなら、俺に頼らなくても告白できるだろ!」
「俺よりかっこよくて、女子からも告白されまくってるくせに!」
「なんで……なんで俺なんだよ!」
嫉妬も、僻みも、全部混じって噴き出す。
「……すまない」
「俺だって果──」
喉の奥で、言葉を噛み殺す。
「……悪い」
「言い過ぎた」
それだけ言って、背を向けた。
振り返らずに歩き出す。
振り返れば、何かが壊れてしまいそうだった。
遠くで、隆二が立ち尽くしている気配を感じながら、
その場を後にした。
駿は、6月の後半に行われる地区大会に向けた練習を終え、汗を拭いながら部室を出ようとしていた。
このあとはいつもように果奈と帰る。
そのことだけを考えて、自然と足取りが軽くなっていた。
「浅村」
背後から、低い声がかかる。
振り返ると、隆二が立っていた。
いつもの余裕のある表情はなく、どこか硬い。
「ちょっと、いいか」
「……手短で頼む」
果奈を待たせたくない。
そう思いながらも、立ち止まった。
「浅村のクラスに、早川っているよな」
「いるけど……早川さんがどうかした?」
隆二は一瞬、視線を逸らした。
その仕草だけが、果奈に告白する時の自分を見てる感じがして、嫌な予感が胸をかすめる。
「明日、告白しようと思ってる」
空気が、一瞬止まった。
「……だから」
「情けないのは分かってるけど、協力してほしい」
動揺が、胸の奥を突いた。
分かっていた。
言われる前から、どんな話か察していた。
「……今、早川さんも大変そうだし」
「やめた方がいいんじゃないかな」
本当は――
「やめろ」と言いたかった。
隆二は何も言わず、唇を噛む。
沈黙が重く落ちた。
ざらついた感情が、胸に広がる。
「……どうして、早川さんを好きになったの?」
自分でも意外なほど、静かな声だった。
「隆二ってさ」
「女子に興味ない感じだったじゃん」
けれど、隆二は逃げなかった。
「1年の時、同じクラスでさ」
「話す機会が多くて……気づいたら、意識してた」
「クラスが別になったら、そのうち落ち着くと思ったんだ」
一度、言葉を切る。
「でも、逆だった」
「気づいたら、好きになってた」
“好き”。
その言葉が、胸を打つ。
聞きたくなかった。
分かりたくもなかった。
「俺のやり方が正しいとは思ってない」
「でも……この気持ちを、押し殺すのは辛い」
「頼む、浅村」
隆二は、頭を下げた。
その瞬間、胸の奥で何かが弾けた。
果奈に告白する前の、自分。
声もかけられず、遠くから見ているだけだった日々。
必死で踏み出した、あの瞬間。
――それを。
「……ふざけんなよ」
「浅村?」
「ふざけんなって言ってるんだよ!」
声が、思った以上に荒れた。
「おまえなら、俺に頼らなくても告白できるだろ!」
「俺よりかっこよくて、女子からも告白されまくってるくせに!」
「なんで……なんで俺なんだよ!」
嫉妬も、僻みも、全部混じって噴き出す。
「……すまない」
「俺だって果──」
喉の奥で、言葉を噛み殺す。
「……悪い」
「言い過ぎた」
それだけ言って、背を向けた。
振り返らずに歩き出す。
振り返れば、何かが壊れてしまいそうだった。
遠くで、隆二が立ち尽くしている気配を感じながら、
その場を後にした。
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