軍将の踊り子と赤い龍の伝説

糸文かろ

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第二章

秋の散歩 1

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 リエイムに感情をぶちまけて以降、睡眠を取り食事を少しづつ再開した。
 オーフェルエイデの人々もサニを気に掛け、交代に顔を覗かせてくれた。
 ヘンリやフロレインはお菓子を差し入れ、オーフェルエイデ公は自らが育てた観葉植物を窓辺に置いてくれた。
 ティモシーは庭で作った雑草の花束を渡し、ベロニカは来るたびに髪を丁寧に編み込んでくれた。
 そしてリエイムは誰よりもこまめに一日に何度もサニの安否を確認するように部屋を訪れた。
 みんなリエイムから事情は既に聞いていただろうが誰一人その件には触れず、いつものように接してくれる。
 そのことに安心しつつも、心の中ではただの穀潰しになってしまって申し訳ない気持ちで一杯だった。
 しかしそれを口にしてしまうとオーフェルエイデの人たちが更に気を揉むのがわかっていたので、表には出さないようにした。
 身体を十分に休ませ体力が回復してくると、徐々に動けるようになって、普段と変わりない生活を送れるようになった。躍起になり過剰に舞うことはしなかったが、朝と夜の祈りだけは変わらず捧げた。
 リエイムにしばらく休養しろとは言われたものの、とはいえ一日中何もしないのは忍びなく、歩けるようになると城が飼う馬の世話を始めた。
 馬舎に毎朝出向き、飼われている馬たちの馬具を磨き一頭一頭の小屋を掃除し餌を与える。
 しなやかな筋肉を覆うみっしりと固い毛に、一筋ずつブラッシングを施すと馬たちは気持ちよさそうに目を瞑る。
 馬も人間のように、それぞれに性格が違うことがわかって面白かった。
 中でもサニはグラニという、パロモが生んだ一歳になったばかりの雄馬と仲良くなった。
 あれこれ無心で仕事をしているとすぐに一日は過ぎたし、馬たちはサニの心を癒やしてくれた。
 空いた時間で、苦手だった乗馬の練習も少しづつ始めた。
 いつかリエイムが言っていた通り、馬と心を通わせると、背中に乗るのが怖くなくなる。
 リエイムを背にしていてもあんなにしがみついてないと乗れなかったのに、今では自分の足の力だけでグラニの胴を支え、座ることができる。
そしてゆっくりではあるが城の庭を一周できるまでになった。
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