無理やり攫ってきておいて、運命の番と出会ったからと捨てられました

九条 雛

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第23話

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 壇上に上がった王様の姿は、前に謁見したときよりも、派手な装いをしていました。

 もこもことしたファーの付いた赤いマントを羽織り、煌びやかな宝石類を身に着けています。
 たてがみのようなオレンジ色の御髪は撫でつけるように纏められ、ライオン獣人らしい、迫力のある顔が晒されております。頭の上には、王冠がシャンデリアの光を反射し、ギラリと輝いておりました。

 今さら改めて思いますが、周囲の様子はまるで、海外映画の中のような光景です。
 まあ海外というか異世界なんですけど……。

「皆の者、よく集まってくれた」

 王様は威厳のこもった低い声音で、労いの言葉を口にしました。
 ふと、その隣に佇んでいる黒猫の貴婦人が気になります。

 ……多分、あの方がフィルのお母様で、そしてこの国の王妃様なのだと思います。

 彼女は何も言わないのでしょうか?
 以前聞いたフィルの話だと、正統な王家の血筋はあの方のはずです。
 なのに王妃様は、ただじっと黙って、うっとりとした眼差しをライオンの王様に向けているだけのようでした。

 それはまるで、『番』に向ける眼差しのように見えました。
 リカルド様がミーシャ・フェリーネに向ける、あの狂った視線です。

「……聞き流しておけ、どうせ大した事は言っていない」

 ぼそりと、フィルがそう耳打ちしてきたように、王様の言葉はあまり含蓄のあるものではないようでした。
 纏めれば、獣人は凄い。獣人は素晴らしい。だから獣人の王たるこの自分はとても素晴らしい。……そんな感じです。

 長話が終わり拍手が起きると、フィルもおざなりな態度で手を叩きました。
 近くにいた貴族の方が、そっとフィルに話しかけます。

「『聖女様による祝福』については、やはりお話になりませんでしたね」

「……陛下の顔にも眼球はあらせられるという事だ。……いいのか? 余計な事を述べて、打ち首になっても俺は知らんぞ?」

「ははは。わたくしめは、殿下を信じておりますよ」

「俺は殿下ではない」

 どうやら彼も、フィルの『協力者』なのかな、と思います。
 ちらりと周囲に視線を巡らせてみると、ダンスを踊る前よりも、フィルに向けられる視線には友好的な雰囲気が感じられました。

 いまだそのどれもが、探るような……まるで値踏みをするような視線ですが、どことなく、何かを期待しているような空気が感じられます。

「さて……では、俺たちはそろそろ去るとしよう。ありがたいお言葉も拝聴したしな」

「え……」

 ただ、フィルはその期待に答えるつもりはない様子で、わざとらしい台詞を述べてから、くるりと踵を返しました。
 周りの貴族の方々から、がっかりしたような、肩透かしを受けたような声が漏れ聞こえます。

「ほう。この儂に、挨拶もなしに席を外そうというのか。……そもそも、招待した覚えもないのだがな」

 ふいに、低い、重苦しい声音が響きました。
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