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Riona

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大学

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揺られる電車は、知らない電車。
気付けば周りは知らない場所だった。
誰も知らない。どこかも知らない。
特にこの街は人が多いらしくて、毎日通る道でも、毎日違った場所に見える。
高いビルに押し潰されそうになりながら、今日もよくわからない不安と一緒にぎこちなく歩いてる。

順調に人生を走ってたはずだ。
生まれた家は贅沢はできないけど、お金に不自由することはない程度に裕福なところだった。
小学校に入って、リレーでアンカーを任されて褒められた。
一位になって褒められた。
友達もたくさんできて、毎日誰かの家に行って遊んでいた。
勉強もそれなりにできたから、高校受験もそこまで困らなかった。
どちらかというと進学校で、あそこに行けたの?おめでとうって近所の人に褒めてもらえる高校に進学した。
陸上部の部長になった。
仲間と一緒に走るのが楽しかった。
大学受験が迫ると、部活を引退して塾に通い始めた。
結構勉強して、第一志望の東京の大学に進学が決まった。
また、近所の人が、やっぱりすごいわねぇって褒めてた。
親も喜んでくれて、寂しくなるわなんて言いながら引越しの準備を手伝ってくれた。
ありきたりな感動的な別れをして、この一人暮らしは始まった。

ありきたりな道を走ってきた。
どこにでもいるような大学生だ。
でも。
ありきたりな道は、いつの間にかいばらの道になってた。
始まった大学生活は思ってたより過酷だ。
ここでの一人暮らしは、思ってたより寂しかった。
思ってたより簡単に友達はできたけど、思ってたほどうまく付き合えなかった。
どうやら自分は、世間知らずだったらしい。
水道代ってどうすればいいんだっけ、
郵便ってどうやって出すんだっけ、
ネットで調べなきゃ
気付けばなんでもケータイ片手にやってた。
1人でなんでもできると思ってた。
自分は順調に大人になってると思ってた。
実際、そこまで困ってることはない。
でも。毎日が必死で、なんとなくしんどい。
人生って、こんなに疲れるものなのか。
初めてそう思ったのは、こっちに来て初めて半袖を着た頃。
なにもそんなに親に頼ってたわけでもないのに。
きっと自分は、自分のことをよくわかってなかった。
やばいな。どうしよう。
これから。どうやって乗り越えていこうか。
しんどいな。
とりあえず、明日の講義の予習をしないと。

就職?
そ。どーする?
どーするって。まだ先の話じゃん。まだ2年だよ。
もー2年だよ。先輩たち見てたら不安になってきて。
そーゆうものか。
せっかく大学になれたのに、また新しい世界に出なくちゃいけないのか。
自分で決めたレールは、思ったよりガタガタだった。
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