黒の文明 ─無人島からのメッセージ─

あす

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「絶対に、あの二人を逃がすな」

長い黒髪を結った男は、怒りを露わにして男たちに叫んだ。もし盗掘の秘密を知られていたら大変なことになる、一刻も早く探しだして捕まえなければならぬ...

◇◇◇

古代ポリネシアの先住民は高度な文明を築き上げ、長きに渡り繁栄を続けていた。彼らは現代の文明とは全く異なる科学技術を生み出し、皮肉にもそれが滅亡に向かわせることとなった。彼らが生み出した巨人によって全てを滅ぼされたのだ。小柄な方の男が得意気に話している。

そして先住民の作り出した「ケオ ヌイ(白い巨人)」は彼ら盗賊によって掘り起こされてしまった。彼らは島のことをGPSや探知機などを使ってくまなく調査し、既に神殿のことも見つけていた。

「私たちは最強の力を手にいれたのだ。何も恐れることはない」

小柄の男は、長い黒髪の男にそう言い聞かせながら、煙草を咥えた。巨人は彼らのキャンプで眠ったままその場を動かない。

「あいつらだ、神殿にいるぞ」

息つく間もなく、私とハルは男たちに見つけられると、咄嗟に螺旋階段に逃げ込み一目散に走った。男たちはニヤッとしながらこっちに駆けてくる。

「あの先は行き止まりだ」

長い黒髪の男は、しめたとばかりに追い詰めにくる。壁画を見る余裕もなくカツカツと石段を踏む音が狭い空間に響き、その大きさを増してくる。階段を終えて、石の扉の前まで来ると二人で口を揃えて叫んだ。

「アオ」

スーと音を立てずに、扉が開くと男たちから驚きの息が溢れる。「どういうことだ」調査したときはこんなものは無かったと言わんばかりに小柄の男がブツブツと言いながら迫ってくる。

草の茂みをかき分けて真っ直ぐに水色に輝く「彼女」のところを目指した。その時は何も考えず、ただただそこに向かって走っていき、祈り続けていた。

その直後に銃声が聞こえたと思ったら、甲高い金属音がこだました。銃弾は「彼女」の眠る球体に突き刺さったと思った瞬間、それはガラスのように崩れ落ちた。

「あぁ、なんてことだ」

私は叫ぶと同時に、恐ろしさのあまりここまでかと観念しかけた。その時だった。

中世の鎧を身に纏った少女がゆっくりと立ち上がり、その直後に右手に持っていた銀の剣を宙に高く振り上げた。その場で高く飛び上がると目にも見えぬ剣さばきで、銃を持った男を切りつけた。男は胸から血しぶきを上げてその場に倒れ込んだ。

「まずい、このままでは...」

小柄の男は、カバンからスマホのようなものを取り出し赤いスイッチを押すと、微弱な地震のような揺れが空間を包んだ。

そして、キャンプで眠っている白い巨人がギシギシと音を立てながら起き上がり、ゆっくりと歩き始めた。

長い黒髪を結った男は、鎧の少女とじっと睨みあいながらタイミングを見計らっているようだ。一瞬の隙を見て男が鎧の少女に襲いかかると、銀の剣が男の顔を霞める。結った髪がサッとほどけ、黒い長髪がフワッと宙を浮く。

そして一瞬で勝負はついた。男はその場で膝をついて苦しそうにしている。少女はトドメは刺さず今度は小柄の男の持っているスマホのようなものを剣で叩き切り、

「まずい、急がないと」

少女は呟き、階段を駆け上がって行った。私たちもすかさず男たちを尻目に階段を上りながら、目に入ってくる壁画を見つめていた。

白い巨人、太陽神、これらは私たちに何を伝えようとしているのだろう。

To be continued.
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