ファンタジスタ 〜アオの奇跡〜

あす

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視界

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「ハル、もう少し視界を広げないと、、」

アオイが横から叫んでいる声が耳に入ってきた。そう言えばいつもと若干のポジションのズレがあることに気がついた。

確かにオレはシュートを決めたいがために普段より上がりすぎているのか。いつもは周りのみんながお互いのポジションを確認してカバーし合っていたんだ。

アオイのお陰で自分で気づけなかったズレを見つけることができたようだ、周りがオレに合わせないならこっちから合わせれば良いだけじゃないか。



──ここからがオレの番だ

3人でトライアングルを作りながら、短いパス回しを繰り返して相手のスペースを伺っていると、サイドバックの右に空間が現れる。すかさず、小室に視線を送り縦へのロングフィードを送る。その瞬間オレは逆サイドめがけて一気に走り出す。

──ダイアゴナルランか!?

ジュニアチームの監督はそう叫ぶと、まざまざと彼の動きに見入っていた。

センターバック2人がハルのマークに向かったと思ったらフォワード10番の黒咲がガラ空きのゴール前でボールを受けてそのままゴール。一瞬の出来事だった。

「あのボランチは誰だ」

エボルタジュニアの監督がコーチたちと話している。
あの年であの視界と技術を持っているヤツはうちのジュニアにもいないのでは無いか。あそこで彼がセンターバックを引き付けることが出来たのは、ただ走ったからでは無い。常に小室の動きに連動していたため、小室から彼にパスが入って来るだろうとセンターバック2人が錯覚していたようだ。

「あれだけの動きが出来るヤツがいるとは、、」

◇◇◇

紅白戦の結果は4-0、オレたちの圧勝だった。早速、小室がオレのところにやってきて喜びを爆発させていた。

「ハル、うちのチームに来ないか?」

オレはまんざらでもない顔をしながら、笑顔でこう言ってごまかした。

「オレは東山小で全国を制覇する。だからその時会おう」


仙台での練習会が終えロッカー室へ戻る途中、藤堂監督とジュニアの監督が真剣な顔で何やら話していた。

「・・・使えそうか?」

「フィジカルはまだまだだが、天性の才能を持っている。あれはこれからが楽しみだな」

「フフッ・・・」


◇◇◇

そう言えばアオイは何処に行ったんだ?せっかくオレのカッコいいところを見てて貰おうと思っていたが試合の途中で見かけなくなってしまったじゃないか。どうせアイツのことだから仙台のカッコいい男見つけて付いていったんじゃないか?

そんなことをブツブツ言っていると、後ろからドンっと背中に衝撃が走った、と思うのも束の間、

「おー、勝ったんだハル。えらい!」

いつもの調子で何処からともなくアオイが現れたと思ったら、

「お腹すいたー。監督、ハルご飯食べに行きましょう」

やれやれ、ハルはまんざらでもない様で、

「監督のおごりね」

「仕方ないなあ、焼肉でも食いに行くか」

To be continued.



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感想 1

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みんなの感想(1件)

ささみ
2023.01.07 ささみ

前回作も読ませていただいてましたが、また違った題材で面白いです。続きが気になります。

解除

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