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第1部 勇者と狼の王女
第8話 元凶
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①
走る。走る。
どこまでも。
あの地平線の向こうまで――なんだか、今なら地の果てまであっという間に駆け抜けられそう。
ガシャンガシャンとけたたましい音をたてながら、私は走った。全力で草原を。
全身を私とはわからないくらいすっぽりと包んだ、ミスリル製の黒いフルプレートアーマーが、太陽の光を浴びてギラギラと光っている。
この装備を選んだときは、旦那様にスピードを活かした軽装鎧の方がいいのではないか?と驚かれたが、着てみると全然重さを感じなかった。
ミスリル製ということで、普通の金属鎧よりは軽いらしいが、それでも大の男でも走り回ることは難しく、仮に転倒して地面にふせてしまったら、3~4人くらいの人たちに助け起こされなければ起き上がることすらできないらしい。
しかし、試しにと着こんだ私を旦那様が足払いで転ばせてみたが、私はなんなく飛び上がるように起きることができた。今だって、こうやって全速力で走っても全然疲れない。
黒狼族に生を受けてさまさまだ。
このフルプレートアーマーを選んだ理由は、ただ一つ「一目惚れ」だ。
漆黒の武骨な全身鎧は、戦士であることに飢えていた私の心に電撃を落とすには十分すぎた。
渋る旦那様に、「一目惚れ」であることを告げると、「なら仕方がない」とあっさりと了承してくれた。
自分が一目惚れの経験があるだけに、私の気持ちをわかってくれたのだろう。
走る先に、ゴブリンメイジが大きな火球を作って、投げつけようとしている。
だが、私は怯むこともなく走り続ける。
やがて、メイジの手から飛んできた火球が私に命中し、その身体を炎で包んだが、私は構わず走りつづける。
熱くない。
ミスリルには、魔力を散らす効果がいくらかあるようだ。
それに加え、私は魔法を使えないが、旦那様より黒狼族は無意識に自分にバフ魔法をかけ続けているものだと言われ、魔力のコントロールを教えてもらった。
あいかわらず、人間のような魔法は使えないが、自分が身に着けているものや、自分が手に持っているもの、例えば剣などに、魔力の膜を纏わせて効果をアップさせることができるように…というより、旦那様との結婚式の決闘の時点でそもそもできていたそうだ。
爆炎から無傷で現れた私に、メイジは驚愕の表情を浮かべながら次の魔法を準備している。
遅い。
もう間に合うものか。
右手に握ったミスリルロングソードで、メイジの身体を横に薙ぎ払うと、真っ二つになって地面に零れ落ちた。
草原の向こうに、朽ちかけた石造りの建物がある。
建物は、情報によれば昔は神殿だったらしいが、このところ魔物の巣窟になってしまっていたそうだ。
今回の仕事は、この朽ちかけた神殿の制圧と調査だそうだ。
そこから、わらわらとコボルトやゴブリン、他にもグラスウルフといった魔物たちが噴き出してきた。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおんんん!!!!!」
私が叫ぶと、グラスウルフは急に腰砕けになり四方八方へ散っていく。
私は狼の王女だぞ!と気概をこめて叫んだ雄たけびに、敵わぬなにかを感じ取ったのだろう。
残ったコボルトにそのまま走って勢いをのせてタックルをかます。
私の全身鎧の重量と走ってきた圧、そして後ろの神殿の壁に挟まれて、コボルトが一匹ぺちゃんこになって地面に散っていく。
そんな私を全方位囲んでいく残ったモンスターたち。
ゴブリンメイジ、ゴブリンシャーマン、ゴブリンウォーリアーが2匹、コボルトウォーリアーが2匹、そして、コボルトアーチャー。
私には全く危険だとは思えない。
なぜなら…。
②
冒険者登録した僕達が最初に引き受けたのは、魔物の巣になってしまったいつの時代のものかもわからない、朽ちかけた神殿の制圧と調査だった。
勇者である僕の冒険者ギルドでのランクは、既にカンストのSであったが、マリーは初めての登録だったため、本来であれば最低ランクのFからスタートで、ネズミ退治や薬草拾いくらいしか仕事は無かったはずなのだが、町の人たちは僕とマリーの決闘を目撃しており、マリーの力は十分に知れていた。
そのため、特別配慮でDランクからのスタートとなった。
とはいえ、どんなに戦闘力が高くても、毒や麻痺の対処やスライムが頭に振ってきて窒息といった危険の予知は、経験から培われた勘が必要なこともある。
朽ちた神殿の調査は、程よくレパートリーを取りそろえた低級の魔物たちの殲滅と、トラップやスライムの危険を学習するには、丁度良い教材だった。
戦闘狂一族である黒狼族の血が騒ぐのか、マリーは獲物をその目に捉えると、重そうな全身鎧など着ていないかのように、素早く走っていくと、今僕の目の前で、あのスレンダーで可愛らしい妻とは思えない、力に任せた戦いぶりを見せている。
まさか、自分の鎧の重さを活かして、敵を潰してしまうとは…黒狼族の戦闘センスは凄まじい。
その後、敵に囲まれたが、敵の矢は全身鎧を貫くことはできず、ゴブリンメイジの火球は効いていなかった。
マリーは、そのままメイジを鎧の小手の固さを活かした殴打で顔を潰すと、左右から襲い掛かるゴブリンウォーリアーのその斬撃も、鎧を着ているとは思えない素早さで避けきると、そのまま持っていたロングソードで腹を突き刺したり、首を飛ばしたりして蹴散らしていた。
しかし、経験の無さが出てしまった。
ゴブリンシャーマンのパラライズという麻痺魔法には、耐性がなかったようでそのまま地面に倒れこんでしまう。
そこを、すかさずコボルトウォーリアーが鎧の隙間を狙って手に持っていた剣を突き刺そうとしたところで、僕の聖剣デュランダルが2匹をバターのようにスライスしていく。
2匹のいた地面が真っ赤に染まって、滴り落ちた色々なものが汚していく。
そのまま、聖剣をシャーマンに投げつけ心臓を貫くと、なんとか剣を引き抜こうともがきながらもそのまま絶命した。
たじたじになって後ろに一歩引いたコボルトアーチャーを、マリーが麻痺で地面に落としたロングソードを投げて首に刺し仕留める。
「だ、旦那様ぁああ…申し訳ございませんんんん」
顔を地面に向けて倒れこんだため、マリーの可愛いソプラノの声が全身鎧の中で反響したうえ地面の圧で打ち消されたことから、変なビビリ声になって聞こえてくる。
「これが、状態異常の怖ささ。どんなに強くてもかかってしまうと、あっという間にあの世行きだ」
「はいぃいいいいいい」
僕は早く治してあげたい衝動に駆られながらも、麻痺の怖さとどれくらいで治るのかを体験してもらうために、心を鬼にして放置した。
「ぴりぴりしますぅうぅうう」
と言うマリーの身体から麻痺が抜け切ったのは、それでも10分もしないくらいだった。
人間なら1時間は麻痺していたであろう。
さすが、黒狼族である。
「ひどい目に会いましたぁ…」
表情も全く読めない全身鎧ながら、マリーがしょんぼりとしている表情が容易に想像できる。
「何事も慣れだよ慣れ。僕がいる間は安心して色々かかりなさい」
「はぁい…」
朽ちた神殿の中を進んで行く。
石造りで、僕の世界で言うローマ時代の神殿のようなデザインのそれは、祭壇らしきものがある空間の更に奥に、地下に降りていく階段があり、中で魔物がひしめき合っていては…と思い、警戒しながら下へ進んで行く。
途中、天井に低級のスライムが何匹か連なっていたが、マリーに対処法を教えながら、氷魔法で固めた後に、コアを潰して倒していった。
地上なら、炎の魔法で焼いて溶かしてしまうのが楽だが、地下だと何があるかわからない。ガスがあったら爆発しているため、氷で固めてしまうのが安全だ。
10分ほど地下への階段を降りたところで、柱が何本か倒れてはいるが、比較的外の様子に比べて破損が少ない空間に出る。
明かりの魔道具を使っていたが、それを使わずともはっきりと視認できそうなくらい、何かの魔法か?ところどころが怪しく紫色に輝いている。
その輝きは、その地下空間が20畳くらいのスペースがあることと、真ん中に大きな鏡のようなものが、キラキラと輝く面を上にむけて置かれているのを示した。
「なんでしょうこれは」
とマリーが好奇心で目をキラキラさせているであろう声色で言ったが、僕は、なんとなく転送装置のような印象を受けた。なんでそう思ったかは、元の世界でのゲームでありそうな形だったからとしか言えないのだが…。
鏡の周りには、うねったパイプのようなもの、何かの土器のようなものが散らばっていて、鏡を支えている四角い箱のような陶器のような質感のものは、すこし割れている。
「こんなものが、今までギルドに発見されずにあったとは…」
僕も依頼を受けたときには、そんなところに神殿があるなんてと意外に思った。
僕達が住んでいる町から、北に20㎞程いったところに広がる草原。
魔物がうろつくくらいで、何もないと思っていた草原の真ん中にぽっかりとこんなものが口を開けて待っていたとは。
僕が近づいて、鏡に触れると、それは急にギラギラと輝いたかと思うと――。
僕とマリーの目の前の空間をどんどんと歪ませていき――。
やがて、黄金のオーラに包まれ、長い金色の髪を風も吹いていないのにゆらゆらと漂わせ、ギリシャ神話に出てきそうなやたら露出度が高い白い衣装に身を包んだ女が空中に現れた。
その瞳はルビーのように真っ赤で、目はややたれ目で表情は慈愛に満ちていて、口元もうっすらと微笑んでいる。
身体は真っ白いシミ一つなさそうな肌に、男が喜びそうな綺麗なプロポーションをしているが、なぜだか芸術品を見ているようで、性的な魅力は全く感じられない。
顔も整っていて美人だとは思うが、なんだか彫刻を見ているようだ。
「えぇ…」
という驚愕したようなマリーの傍で僕は、心がすーっと冷めていくのを実感する。
「女神…」
忘れもしない。
僕をこの世界に強制転移した女神…そのものが目の前に現れたのだ。
走る。走る。
どこまでも。
あの地平線の向こうまで――なんだか、今なら地の果てまであっという間に駆け抜けられそう。
ガシャンガシャンとけたたましい音をたてながら、私は走った。全力で草原を。
全身を私とはわからないくらいすっぽりと包んだ、ミスリル製の黒いフルプレートアーマーが、太陽の光を浴びてギラギラと光っている。
この装備を選んだときは、旦那様にスピードを活かした軽装鎧の方がいいのではないか?と驚かれたが、着てみると全然重さを感じなかった。
ミスリル製ということで、普通の金属鎧よりは軽いらしいが、それでも大の男でも走り回ることは難しく、仮に転倒して地面にふせてしまったら、3~4人くらいの人たちに助け起こされなければ起き上がることすらできないらしい。
しかし、試しにと着こんだ私を旦那様が足払いで転ばせてみたが、私はなんなく飛び上がるように起きることができた。今だって、こうやって全速力で走っても全然疲れない。
黒狼族に生を受けてさまさまだ。
このフルプレートアーマーを選んだ理由は、ただ一つ「一目惚れ」だ。
漆黒の武骨な全身鎧は、戦士であることに飢えていた私の心に電撃を落とすには十分すぎた。
渋る旦那様に、「一目惚れ」であることを告げると、「なら仕方がない」とあっさりと了承してくれた。
自分が一目惚れの経験があるだけに、私の気持ちをわかってくれたのだろう。
走る先に、ゴブリンメイジが大きな火球を作って、投げつけようとしている。
だが、私は怯むこともなく走り続ける。
やがて、メイジの手から飛んできた火球が私に命中し、その身体を炎で包んだが、私は構わず走りつづける。
熱くない。
ミスリルには、魔力を散らす効果がいくらかあるようだ。
それに加え、私は魔法を使えないが、旦那様より黒狼族は無意識に自分にバフ魔法をかけ続けているものだと言われ、魔力のコントロールを教えてもらった。
あいかわらず、人間のような魔法は使えないが、自分が身に着けているものや、自分が手に持っているもの、例えば剣などに、魔力の膜を纏わせて効果をアップさせることができるように…というより、旦那様との結婚式の決闘の時点でそもそもできていたそうだ。
爆炎から無傷で現れた私に、メイジは驚愕の表情を浮かべながら次の魔法を準備している。
遅い。
もう間に合うものか。
右手に握ったミスリルロングソードで、メイジの身体を横に薙ぎ払うと、真っ二つになって地面に零れ落ちた。
草原の向こうに、朽ちかけた石造りの建物がある。
建物は、情報によれば昔は神殿だったらしいが、このところ魔物の巣窟になってしまっていたそうだ。
今回の仕事は、この朽ちかけた神殿の制圧と調査だそうだ。
そこから、わらわらとコボルトやゴブリン、他にもグラスウルフといった魔物たちが噴き出してきた。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおんんん!!!!!」
私が叫ぶと、グラスウルフは急に腰砕けになり四方八方へ散っていく。
私は狼の王女だぞ!と気概をこめて叫んだ雄たけびに、敵わぬなにかを感じ取ったのだろう。
残ったコボルトにそのまま走って勢いをのせてタックルをかます。
私の全身鎧の重量と走ってきた圧、そして後ろの神殿の壁に挟まれて、コボルトが一匹ぺちゃんこになって地面に散っていく。
そんな私を全方位囲んでいく残ったモンスターたち。
ゴブリンメイジ、ゴブリンシャーマン、ゴブリンウォーリアーが2匹、コボルトウォーリアーが2匹、そして、コボルトアーチャー。
私には全く危険だとは思えない。
なぜなら…。
②
冒険者登録した僕達が最初に引き受けたのは、魔物の巣になってしまったいつの時代のものかもわからない、朽ちかけた神殿の制圧と調査だった。
勇者である僕の冒険者ギルドでのランクは、既にカンストのSであったが、マリーは初めての登録だったため、本来であれば最低ランクのFからスタートで、ネズミ退治や薬草拾いくらいしか仕事は無かったはずなのだが、町の人たちは僕とマリーの決闘を目撃しており、マリーの力は十分に知れていた。
そのため、特別配慮でDランクからのスタートとなった。
とはいえ、どんなに戦闘力が高くても、毒や麻痺の対処やスライムが頭に振ってきて窒息といった危険の予知は、経験から培われた勘が必要なこともある。
朽ちた神殿の調査は、程よくレパートリーを取りそろえた低級の魔物たちの殲滅と、トラップやスライムの危険を学習するには、丁度良い教材だった。
戦闘狂一族である黒狼族の血が騒ぐのか、マリーは獲物をその目に捉えると、重そうな全身鎧など着ていないかのように、素早く走っていくと、今僕の目の前で、あのスレンダーで可愛らしい妻とは思えない、力に任せた戦いぶりを見せている。
まさか、自分の鎧の重さを活かして、敵を潰してしまうとは…黒狼族の戦闘センスは凄まじい。
その後、敵に囲まれたが、敵の矢は全身鎧を貫くことはできず、ゴブリンメイジの火球は効いていなかった。
マリーは、そのままメイジを鎧の小手の固さを活かした殴打で顔を潰すと、左右から襲い掛かるゴブリンウォーリアーのその斬撃も、鎧を着ているとは思えない素早さで避けきると、そのまま持っていたロングソードで腹を突き刺したり、首を飛ばしたりして蹴散らしていた。
しかし、経験の無さが出てしまった。
ゴブリンシャーマンのパラライズという麻痺魔法には、耐性がなかったようでそのまま地面に倒れこんでしまう。
そこを、すかさずコボルトウォーリアーが鎧の隙間を狙って手に持っていた剣を突き刺そうとしたところで、僕の聖剣デュランダルが2匹をバターのようにスライスしていく。
2匹のいた地面が真っ赤に染まって、滴り落ちた色々なものが汚していく。
そのまま、聖剣をシャーマンに投げつけ心臓を貫くと、なんとか剣を引き抜こうともがきながらもそのまま絶命した。
たじたじになって後ろに一歩引いたコボルトアーチャーを、マリーが麻痺で地面に落としたロングソードを投げて首に刺し仕留める。
「だ、旦那様ぁああ…申し訳ございませんんんん」
顔を地面に向けて倒れこんだため、マリーの可愛いソプラノの声が全身鎧の中で反響したうえ地面の圧で打ち消されたことから、変なビビリ声になって聞こえてくる。
「これが、状態異常の怖ささ。どんなに強くてもかかってしまうと、あっという間にあの世行きだ」
「はいぃいいいいいい」
僕は早く治してあげたい衝動に駆られながらも、麻痺の怖さとどれくらいで治るのかを体験してもらうために、心を鬼にして放置した。
「ぴりぴりしますぅうぅうう」
と言うマリーの身体から麻痺が抜け切ったのは、それでも10分もしないくらいだった。
人間なら1時間は麻痺していたであろう。
さすが、黒狼族である。
「ひどい目に会いましたぁ…」
表情も全く読めない全身鎧ながら、マリーがしょんぼりとしている表情が容易に想像できる。
「何事も慣れだよ慣れ。僕がいる間は安心して色々かかりなさい」
「はぁい…」
朽ちた神殿の中を進んで行く。
石造りで、僕の世界で言うローマ時代の神殿のようなデザインのそれは、祭壇らしきものがある空間の更に奥に、地下に降りていく階段があり、中で魔物がひしめき合っていては…と思い、警戒しながら下へ進んで行く。
途中、天井に低級のスライムが何匹か連なっていたが、マリーに対処法を教えながら、氷魔法で固めた後に、コアを潰して倒していった。
地上なら、炎の魔法で焼いて溶かしてしまうのが楽だが、地下だと何があるかわからない。ガスがあったら爆発しているため、氷で固めてしまうのが安全だ。
10分ほど地下への階段を降りたところで、柱が何本か倒れてはいるが、比較的外の様子に比べて破損が少ない空間に出る。
明かりの魔道具を使っていたが、それを使わずともはっきりと視認できそうなくらい、何かの魔法か?ところどころが怪しく紫色に輝いている。
その輝きは、その地下空間が20畳くらいのスペースがあることと、真ん中に大きな鏡のようなものが、キラキラと輝く面を上にむけて置かれているのを示した。
「なんでしょうこれは」
とマリーが好奇心で目をキラキラさせているであろう声色で言ったが、僕は、なんとなく転送装置のような印象を受けた。なんでそう思ったかは、元の世界でのゲームでありそうな形だったからとしか言えないのだが…。
鏡の周りには、うねったパイプのようなもの、何かの土器のようなものが散らばっていて、鏡を支えている四角い箱のような陶器のような質感のものは、すこし割れている。
「こんなものが、今までギルドに発見されずにあったとは…」
僕も依頼を受けたときには、そんなところに神殿があるなんてと意外に思った。
僕達が住んでいる町から、北に20㎞程いったところに広がる草原。
魔物がうろつくくらいで、何もないと思っていた草原の真ん中にぽっかりとこんなものが口を開けて待っていたとは。
僕が近づいて、鏡に触れると、それは急にギラギラと輝いたかと思うと――。
僕とマリーの目の前の空間をどんどんと歪ませていき――。
やがて、黄金のオーラに包まれ、長い金色の髪を風も吹いていないのにゆらゆらと漂わせ、ギリシャ神話に出てきそうなやたら露出度が高い白い衣装に身を包んだ女が空中に現れた。
その瞳はルビーのように真っ赤で、目はややたれ目で表情は慈愛に満ちていて、口元もうっすらと微笑んでいる。
身体は真っ白いシミ一つなさそうな肌に、男が喜びそうな綺麗なプロポーションをしているが、なぜだか芸術品を見ているようで、性的な魅力は全く感じられない。
顔も整っていて美人だとは思うが、なんだか彫刻を見ているようだ。
「えぇ…」
という驚愕したようなマリーの傍で僕は、心がすーっと冷めていくのを実感する。
「女神…」
忘れもしない。
僕をこの世界に強制転移した女神…そのものが目の前に現れたのだ。
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