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第5話 お転婆な妹が
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『彼女欲しいの?』と、奏美から連絡が来る。
連絡先を交換して以来こうしてほぼ毎日やり取りをしていた。
『人数合わせに呼ばれただけ。今はそんなに欲しいとは思わない』
『ふーん。そうなんだ』
そんなやり取りをしていると、電話が鳴る。
【父さん】
「はい、もしもし」
『おう、大河。元気にしてるかー?』
「...用がないなら電話切るぞ」
『ちょちょ!そんな酷いこと言うなよー。あっ、本題本題。そろそろ夏休みだろ?瑞希《みき》さんとも話してさ、家族水入らずで温泉旅行でも行こうってなってさ』
「俺はいいよ。3人で行ってきなよ」
『そんな寂しいこと言うなよー。そんな寂しいこと言うとー、仕送り半分にするぞー』
「ははは、それは困るな」
『おーう。来なかったらガチで半分にするからなー』
「...がち?」
『ガチ。ガッチガチ』
「...わかったよ。行くよ」
『果南ちゃんもお前に会いたがってたぞー』
「...」(どんな嘘だよ)
––––––––––– 1年前
「父さん再婚することになったから」
「...ガチ?」
「おう、ガッチガチ」
「なるほどね。俺を無理やり帰省させただけのことはあるな」
「なんだよ偉そうに。どっちにしろ帰ってくるつもりだったんだろー?」
「まぁな。それで?どんな人?」
「聞いちゃう?それ聞いちゃう?」
「...めんど」
俺が5歳の頃に母が交通事故で亡くなった。
それから父さんが一人で俺を育ててくれた。
あまり手のかからない子供だったが、それでも父親一人で育てるというのは苦労することもあっただろう。
そうして、晴れて子供が親元を離れたこともあり、父の肩の荷が降りたということなのだろう。
俺は純粋にそれを喜んだ。
「母さんのこと...忘れたわけじゃないんだけどさ「いいっての。そういうの。父さんはここまで頑張ったんだ。母さんだって笑って許してくれるっての」
「...そうかな」と、少しだけ悲しげに笑う父の姿に少しだけ心が痛んだ。
「それで?どんな人なの?」
「おっ!そうだそうだ!これなんだけど!」と、写真を見せてくる。
そこには綺麗な美魔女的な人と、その隣には制服を着た可愛らしい女の子が立っていた。
「これって...もしかして?」
「そ!この歳で妹ができるとは...やったな!それもこんなに可愛い女の子!役得だなーおい!」
「...妹が出来るって...どうせ俺こっちに居ないし、ほとんど関わりないだろ」
「そんなこと言うなよー?好きだよー?妹。妹系のアニメ見まくってたもんなー」
「フィクションと現実をごっちゃにさせるほど俺は馬鹿じゃねーっての」
「向こうはどう思ってるだろうねー?」
ちょっと動揺した。
いかんいかん、俺には可愛い彼女がいるじゃないか!と、頬を叩く。
「んで、早速だけど今日の夜ご飯行くから。よろ~」
少しだけウキウキしながら夜を迎えた。
しかし、そんな淡い理想など現実があっさりと壊していった。
––––––––––––
「私は認めないから」と、開口一番彼女はそう言った。
「ちょっと、果南!」
「お母さんは私がいればいいんじゃないの!なんでまた結婚なんかするの!?お母さんが...私たちがどんな目にあったか忘れたの!?」
「忘れてないわ。...和幸《かずゆき》さんは私のことをちゃんと大切にしてくれて...「もういい!」と、そのまま店を出て行ってしまう我が妹。
「果南!」と、呼び止める声を虚しく、力無く椅子に座る。
「...ごめんなさい、和幸さん。それと、初めまして大河くん」
「あっ、どうも。てか、追いかけたほうがいいっすかね」
「...いえ。大丈夫。一人で帰れるだろうし...」
「いや、やっぱ追いかけます。兄として。あっ、ちなみに俺は全然賛成派なんで安心してください。じゃ」と、店を出る。
妹が居ないのでは顔合わせの意味もないだろうと思い、店を飛び出してキョロキョロしていると、遠くにトボトボと歩く彼女の姿が見えた。
そのまま小走りで向かって、あと数歩というところだった。
彼女は俯きながら歩いており、彼女の目の前にある信号は赤く光っていた。
そして、右からはトラック。
俺は全力疾走で彼女の元に向かい、彼女の肩を無理やり引っ張った。
そのまま勢いよく後ろに倒れ込む俺と妹。
プーーーーーー!と、クラクションを鳴らしながらトラックが通り過ぎていく。
「ちょ、何してんの!?危なく死ぬとこだったよ!」
「...」
呆然としている彼女。
そして、わんわんと泣き始める。
なんだこの情緒不安定な生き物は。
「私は絶対認めないんだからね!」
顔を真っ赤にさせながら怒る妹。
「お転婆なやつ」
連絡先を交換して以来こうしてほぼ毎日やり取りをしていた。
『人数合わせに呼ばれただけ。今はそんなに欲しいとは思わない』
『ふーん。そうなんだ』
そんなやり取りをしていると、電話が鳴る。
【父さん】
「はい、もしもし」
『おう、大河。元気にしてるかー?』
「...用がないなら電話切るぞ」
『ちょちょ!そんな酷いこと言うなよー。あっ、本題本題。そろそろ夏休みだろ?瑞希《みき》さんとも話してさ、家族水入らずで温泉旅行でも行こうってなってさ』
「俺はいいよ。3人で行ってきなよ」
『そんな寂しいこと言うなよー。そんな寂しいこと言うとー、仕送り半分にするぞー』
「ははは、それは困るな」
『おーう。来なかったらガチで半分にするからなー』
「...がち?」
『ガチ。ガッチガチ』
「...わかったよ。行くよ」
『果南ちゃんもお前に会いたがってたぞー』
「...」(どんな嘘だよ)
––––––––––– 1年前
「父さん再婚することになったから」
「...ガチ?」
「おう、ガッチガチ」
「なるほどね。俺を無理やり帰省させただけのことはあるな」
「なんだよ偉そうに。どっちにしろ帰ってくるつもりだったんだろー?」
「まぁな。それで?どんな人?」
「聞いちゃう?それ聞いちゃう?」
「...めんど」
俺が5歳の頃に母が交通事故で亡くなった。
それから父さんが一人で俺を育ててくれた。
あまり手のかからない子供だったが、それでも父親一人で育てるというのは苦労することもあっただろう。
そうして、晴れて子供が親元を離れたこともあり、父の肩の荷が降りたということなのだろう。
俺は純粋にそれを喜んだ。
「母さんのこと...忘れたわけじゃないんだけどさ「いいっての。そういうの。父さんはここまで頑張ったんだ。母さんだって笑って許してくれるっての」
「...そうかな」と、少しだけ悲しげに笑う父の姿に少しだけ心が痛んだ。
「それで?どんな人なの?」
「おっ!そうだそうだ!これなんだけど!」と、写真を見せてくる。
そこには綺麗な美魔女的な人と、その隣には制服を着た可愛らしい女の子が立っていた。
「これって...もしかして?」
「そ!この歳で妹ができるとは...やったな!それもこんなに可愛い女の子!役得だなーおい!」
「...妹が出来るって...どうせ俺こっちに居ないし、ほとんど関わりないだろ」
「そんなこと言うなよー?好きだよー?妹。妹系のアニメ見まくってたもんなー」
「フィクションと現実をごっちゃにさせるほど俺は馬鹿じゃねーっての」
「向こうはどう思ってるだろうねー?」
ちょっと動揺した。
いかんいかん、俺には可愛い彼女がいるじゃないか!と、頬を叩く。
「んで、早速だけど今日の夜ご飯行くから。よろ~」
少しだけウキウキしながら夜を迎えた。
しかし、そんな淡い理想など現実があっさりと壊していった。
––––––––––––
「私は認めないから」と、開口一番彼女はそう言った。
「ちょっと、果南!」
「お母さんは私がいればいいんじゃないの!なんでまた結婚なんかするの!?お母さんが...私たちがどんな目にあったか忘れたの!?」
「忘れてないわ。...和幸《かずゆき》さんは私のことをちゃんと大切にしてくれて...「もういい!」と、そのまま店を出て行ってしまう我が妹。
「果南!」と、呼び止める声を虚しく、力無く椅子に座る。
「...ごめんなさい、和幸さん。それと、初めまして大河くん」
「あっ、どうも。てか、追いかけたほうがいいっすかね」
「...いえ。大丈夫。一人で帰れるだろうし...」
「いや、やっぱ追いかけます。兄として。あっ、ちなみに俺は全然賛成派なんで安心してください。じゃ」と、店を出る。
妹が居ないのでは顔合わせの意味もないだろうと思い、店を飛び出してキョロキョロしていると、遠くにトボトボと歩く彼女の姿が見えた。
そのまま小走りで向かって、あと数歩というところだった。
彼女は俯きながら歩いており、彼女の目の前にある信号は赤く光っていた。
そして、右からはトラック。
俺は全力疾走で彼女の元に向かい、彼女の肩を無理やり引っ張った。
そのまま勢いよく後ろに倒れ込む俺と妹。
プーーーーーー!と、クラクションを鳴らしながらトラックが通り過ぎていく。
「ちょ、何してんの!?危なく死ぬとこだったよ!」
「...」
呆然としている彼女。
そして、わんわんと泣き始める。
なんだこの情緒不安定な生き物は。
「私は絶対認めないんだからね!」
顔を真っ赤にさせながら怒る妹。
「お転婆なやつ」
応援ありがとうございます!
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