不良だった俺が極道にならず医者になった理由

Arara

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風邪5

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 道を行きつ戻りつ、やっと家の前までやってきた。
 が、ここに来て、また尻込みしてしまう。
 
 昨日、自分がやらかした事を考えると、自分で穴を掘ってでも埋まりたい気分である。
 でも、あの時は! あの時は、本当にそれが自然な事でとても良いアイデアに思えたのだ。
 愛美に会えたのが五日ぶりで、きっとテンションがおかしな具合に振り切れてしまっていたに違いない。

 ああ、くそっ、自分の愚かさに腹が立つ。
 だが、後悔先に立たず。
 いくら嘆こうとも、昨日には戻れない。
 潔く審判を受けるのだ。


 己を奮い立たせて、玄関のチャイムを鳴らす。
 迎えに出てきたのはなんと愛美本人だった。

「お、お前、もう起きていいのか?」

 声がひっくり返ったけど、なんとか平静を装って話す。

「あ、うん」

「これ、・・・お見舞いの花とアイス」

「あ、ありがとう」
 
 門前払いされなかったのは良かったけど、どこかぎこちない。よそよそしい気がする。
 やっぱり、怒ってるのだろうか?

 リビングに通されて、おばさんを交えて三人で和やかにお茶を飲む。
 そこで、休んでいた間のノートやプリントを届けた礼を言われた。
 愛美の様子がいつも通りになって、気のせいだったかなとも思える。
 流れで宿題の話になり、愛美の部屋へと移動する事になった。
 
 二人きりになって謝るチャンス到来だけど、怒ってないなら、このままうやむやに・・・
 いや、ダメだ! やはり、ここは男らしく謝罪すべきだろう。
 しばらくの逡巡の後、俺は覚悟を決めて愛美の前に土下座した。
 そして、頭を下げる。

「昨日は、ごめん! 本当に申し訳ないことをしたと反省している。どうか、赦して欲しい。この通りだ。俺はただ、お前の風邪が治ればいいと思って・・・・・・でも、考えが足りなかった。結果的にお前のファーストキスを奪うことになってしまい、本当に申し訳ないと思っている。すまなかった!」

 愛美は何よりも思い出を大切にしている。 
 友達とのたわいもない会話すら、日記に書き残すくらい。
 それなのに、一生に一度の記念すべきファーストキスが、ただ風邪を治すために奪われただなんて、きっと耐え難いほどの屈辱に違いなかった。
 
「取り返しのつかない事をして、どう詫びればいいのかわからないけど・・・一生をかけて償っていくつもりだ。だから、どうか赦してくれ! 頼む!」

 普通の女にとってさえ、ファーストキスイベントは特別らしいのに、俺はその一生に一度きりしかない愛美の大事なイベントを、すっかり台無しにしてしまったのだ。

「お前の気が済むまで殴ってくれていい。それとも、頭を丸めた方がいいか? なんなら、落とし前に腕の骨一本今すぐ折ってもいいぞ」

 落とし前はつけなければならない。

「ちょっと待って! なんで骨を折るとかって話になるの?!」

「詫びる気持ちがあるなら、当然誠意を見せるべきだろう?」

「大和くんは何か誤解してるようだけど、あの、・・・昨日の事なら気にしてないよ? いきなりだったから、びっくりしたし、ショックだったけど、大和くんは私の事を思ってしてくれたわけだし! それに、不思議だけど本当に風邪が治っちゃったみたいで、すごく元気になったの。私の方こそ、お礼を言うべきだったのに、ごめんなさい。ファーストキスっていうのは、今言われて初めて気づいたけど、全然大丈夫だから! っていうか、大和くんみたいなカッコイイ男の子がファーストキスの相手なんて、すごくラッキーだと思うし」

 愛美がマジ天使に見えた。
 やらかした俺を責めないばかりか、気遣ってラッキーなどと・・・
 兄ちゃん嬉しくて涙が出るよ。
 やっぱり、早く本物の家族になりたい!
 感激した俺は、愛美に抱きついてお礼を言う。
 
「愛美・・・ありがとう! 兄ちゃん嬉しい。良かった! 俺、お前に嫌われたら生きていけない。赦してくれてありがとう、ありがとうな!」


 俺はもう、二度とあんな惨めで悔しい思いはしたくなかった。

 看病を断られ一目も会わせて貰えず閉め出されたあの日、俺は己がいかに無力な立場にあるかを知った。
 いくら俺が家族のように大切に思っていても、戸籍上は他人。
 一番近いところで愛美を守るためには、やはり愛美と正真正銘の家族、つまり兄妹になる必要があるのだ。

 だから、俺は医者になって高岡家の跡継ぎになるという妙案を思いついた。
 愛美は一人っ子だし、体力的に医者になるのは無理だ。
 代々医者をやってる高岡家としては、医院を継いでくれる優秀な息子が欲しいに決まってる。
 
「愛美のこと、ずっと大切にするから」

 本物の家族になった暁には、兄妹仲良くずーーーーーーーーーーーーーっと一緒に暮らす!
 俺なら、甲斐性もあるし、愛美に苦労なんて絶対させねーし。
 誰よりも俺に任せるのが安心だ。
 手元において、ずうぅぅぅっと可愛がってやるんだ。

「約束する」

 それに・・・

 一緒に暮らしていたら、愛美が「お兄ちゃん、早く起きないと仕事に遅れちゃうよ!」なんて、朝起こしてくれるかも知れないし?
 でもって、寝ぼけた俺が愛美を布団の中に引き込んだりしちゃったりして?
 うん、すげー楽しそう!! 
 兄妹バンザイ!!

「大和くん、くるしいよ」

「あ、ごめん」

 楽しい妄想に耽っていて、つい力が入ってしまった。
 腕の中の愛美が赤くなって俯く。

 ・・・・・・

 ああもう、早く一緒に暮らしてぇー!!






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