星空に跳ぶ

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星空に跳ぶ

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朝起きたら母親も父親もいなかった。
家の中は私一人。
お腹が空いた。学校に行かないと。
でも朝ご飯が用意されているわけでは当然ない。

仕方なく、テーブルの上に無造作に置かれたウイスキーのボトルから、コップへまるで麦茶のように注ぎ、一気にあおった。
自転車をこいで学校へと向かう。
頬に当たる風が気持ちいい。

2時間目から気持ち悪くなって、それから給食まで保健室。

夕方家に帰ると母親も戻っていた。
「お母さん何もする気がおきないから、ご飯食べたいんなら自分で用意して。野菜とお肉はあるでしょう」
私も何もしたくないし、食べたくもなかったけど、こういう時に反抗するとさらにひどいことになり、父親から「お前ももっとうまく立ち回れよ」と言われるのがオチだ。
大人しく肉野菜炒めを作る。

TVではサスペンスドラマをやっていた。
妻が夫の不倫現場に乗り込んで叫ぶ。
「あんたたち何やってんのよ!!」

「昨夜、これと同じことしてきたわ」
母親がつまらなさそうに言う。
あぁだから、今朝いなかったのかと腑に落ちる。

「お母さんやっぱりお父さんと離婚するわ。近いうちにお母さんはこの家を出ていくから。あんたは学校やお金もこともあるし、残りなさい」

小さいころから夫婦仲が良いとは言えず、ここ数年は父親の不倫もあり、いつかはこういう日が来るだろうとは思っていたけど、そうか、この人は私を置いていくんだな。
私は置いて行かれるんだ。

黙って母親の顔を見ていたら、それまで能面のようだった母親の顔が崩れた。
「あんたは、『行かないで』とか『私も一緒に行く』とか言わないのね」
だって、「出ていく」って言ったのは貴方なのに。
母親は泣きながらさらに言い募る。
「お父さんとお母さんの結婚は間違いだったのよ」

その間違いから生まれた私は何なのかな。
間違いなのかな。
生まれてきたのは間違いだったのかな。

父親が戻ってきた。
泣いていた母親が目を吊り上げて玄関に向かう。
私は2階の自分の部屋へ。

階下の言い争う声を遮断するように、ドアをピッタリと閉ざす。部屋に入っても明かりはつけない。南に面した大きな窓を開ける。

夜空に星々が輝いていた。まぶしいほどにきれい。醜いものなど何もない。
あそこに行きたい。星空を見上げて祈る。

助けて。
誰か助けて。
私はここにいるよ。

聞こえてくる階下の怒鳴り声。
「子供がかわいくないの!」「かわいいなんてもう思えない!」
跳べたらいいのに。あの星空の中へ跳びこんでいけたらいいのに。
跳びたい。跳んでしまいたい。跳んで・・・。


自分たちの問題に夢中な親たちは、窓の外で何か大きな物が落ちるにぶい音に、当然気づきはしない。

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