上 下
1 / 1

なんで私この国の第一王子にアタックされてるの!?!!

しおりを挟む
「レティーシャ」
私はこの国の第一王子ブレイブ様の専属メイドです。
「はい。なんでしょうか」
「好きだ」
まただ…
私がブレイブ様に仕えるとなった初日ブレイブ様は私を見て言った。愛してると。
いや…初対面ですが…となったけど1年経った今もまだ言ってる。
ちなみに第一王子といってもまだ17歳だ。
私は23歳。
婚期を逃した男爵令嬢だ。
私を育ててくれたお父様とお母様の為に私は必死に勉強をし王家のメイドとして働いていた。
まずまず結婚をする気はなかった。
男爵令嬢の私が結婚してもそんなにお金は期待できない。けれど私はとにかくお金が稼ぎたかった。
だからここは最高の職場だ。
別にここは問題じゃない。
そう…1番の問題はそんなことじゃない。
「聞こえてないのか?す」
「聞こえていますから…!!」
私が恋愛に全く慣れていないのだ。
だからブレイブ様が冗談で言っていても勘違いをおかしそうになる。
「なら返事をしてくれ…寂しくて胸が締め付けられてしまう。」
はぁ…!イケメン…!
ダメダメ!!!仕事に集中するのよ!!レティーシャ!
「早く支度してください。今日はブレイブ様の為のパーティーなのですから。」
そう。彼は結婚しない!結婚しない!と駄々をこねて今に至る。
第一王子なのだ。婚約者がいないと不利になる。
第二王子のバーバラ様は婚約者がいらっしゃいます。
バーバラ様の婚約者は由緒正しい公爵家。
そう、圧倒的不利なのです…!!!
もしかしたら王位継承者はバーバラ様になるかもしれないのです!!
それなのにこの人は全く焦る気がない。
「きちんとして下さい!良いのですか!?!王になれないのですよ!!貴方は第一王子なのですから!」
説得なんてできない。この人は面倒だから…
「ならレティーシャが俺と結婚してくれたら良いじゃないか」
「だから何度も言っているでしょう?私の家と繋がっても良いことなんてないじゃないですか。」
「別にそんな力を借りなくても俺の力で十分だ。」
「それに歳の差が…!!」
「何を言ってるんだ?レティーシャはたしかに俺より6つも上だが愛があれば文句はないだろう。」
「文句はありありです!!」
私はつい叫んでしまう。
「そうなのか!?!」
なんですか。その意外!みたいな顔…!!
「とにかく早く移動して下さい!!」
ブレイブ様が私の腕を掴んだ。
「いいのか?俺が他の令嬢と結婚しても…」
「何を仰っているんですか…貴方の幸せこそが私の幸せでございます。だから早く結婚して王になって幸せになって下さい。」
私が微笑むとブレイブ様はむすっとした顔になる。
いつも無表情だと言われているブレイブ様は2人の時は顔に出やすい。
「俺はレティーシャじゃなきゃ幸せになれない。」
「私と結婚する方が幸せになれませんよ」
私はなんの権力もない元令嬢のメイドだから。
私だって権力がある家出身の令嬢なら有り難くその気持ちを受け取っていた。
だが現実はそう簡単ではない。
「レティーシャがそばにいてくれるだけで幸せになれる」
「なら今は幸せですね」
そう言うとブレイブ様はよりむすっとする。
「それはそうだが…」
ブレイブ様は駄々をこねると長い。
だが早く会場に行かないといけない。
ただでさえ粘られて少し遅れているのだ。
「早くして下さいな!そうじゃないと嫌いになりますわよ!!!!」
つい口調が荒々しくなるが仕方ない事だ。
「わ、分かった。」
素直に会場へ向かい始めるブレイブ様に安心する。

会場に着くなり令嬢達は騒がしくなる。
「ブレイブ様よ!」
「なんて神々しいのかしら」
ブレイブ様ははちみつ色のふわふわな髪の毛をかきあげる。
「はぁ…最悪だ」
令嬢達が急足でブレイブ様に近く。
私はその間にそっと離れ仕事に戻る。
令嬢がブレイブ様を囲んでいる。
周りにいる令嬢と人通り挨拶が終わればブレイブ様は椅子に座って休憩できる。
その時の飲み物を用意しとかないといけないのだ。

ブレイブ様が椅子に座る。
その隣には王であるブレイブ様のお父上がお座りになっている。その隣に弟であるバーバラ様が座っているのだ。
私がバーバラ様にも飲み物を持っていく。
「レティーシャ」
バーバラ様に手招きされる。
「なんでしょう」
「大変だね。またお兄様が粘ったんだろう?」
「はい」
私が頷くとバーバラ様が微笑む。
「お兄様が嫌になったらいつでも僕のところにおいで。僕の専属メイドにしてあげる」
バーバラ様はブレイブ様の2個下の15歳である。
「遠慮しておきます。」
こう言わないと後でブレイブ様に怒られるのだ。
ほら…今もバーバラ様をお睨みに……、、はぁ…
私がブレイブ様に飲み物を渡すと小さい声で言われる。
「他の男になびくなよ」と。
はぁ…。
そう私はこの後仕事に戻るのだがその時よく殿方に声をかけられるのだ。
ブレイブ様は勘違いしてらっしゃるけど大抵が飲み物を持ってきて欲しいなどメイドとしての仕事を依頼されているだけである。
「分かりました」
ため息を我慢して頷く。

ブレイブ様から離れ他の貴族の方達の対応をする。
それをブレイブ様はずっと見ておられるのだ。
緊張してしょうがない。
「そこのメイド」
「はいなんでしょう」
「ワインを注いでくれ」
「わかりました」
私がワインを注ぎ終え立ち去ろうとすると令嬢に足をかけられる。
私は転んでしまった。
「きゃ!!」
令嬢の声でハッとする。
転んだ事で目の前にいた令嬢のドレスに私の持っていたワインがかかってしまったのだ。
「も、申し訳ございません!」
私が土下座をするとしめしめとかかってしまった令嬢が怒りだす。
これはよくあることだ。ブレイブ様に近い私に嫉妬しされてしまう。ただのメイドに対して神経質になりすぎなのではないだろうか…。
「どうしてくださるの?!!一流のドレスを…!」
弁償など私にはできない。
生活をできる最低限のお金以外は実家に送り
領地の民に分けているのだ。
「申し訳ございません…!!」
私が頭を床に下げていると凛とした声が響く。
「何をしている」
「ブレイブ様…!」
令嬢がうっとりした顔で呼ぶ。
「このメイドが私のドレスにワインをかけたのですわ!!」
ブレイブ様は令嬢を無視すると私に近づいてきた。
「大丈夫か?レティーシャ」
「ブレイブ様…」
そう…いつも助けて下さるのだ。
「膝が怪我をしている…」
私の膝からは血が出ていた。
「大丈夫です…申し訳ございません」
私が頭を下げるとブレイブ様は寂しそうな顔をする。
けれど仕方ないのだ。
私はメイドでありここにいるだれより立場が弱い。
「ふん!」
令嬢は怒りながら立ち去っていった。
多分わざとかかったんだろうが関係はない。
私の持っていたワインがかかったことが問題なのだ…。
「レティーシャ」
私を持ち上げると横抱きにする。
「ブレイブ様!?!」
いつもより無茶をなさっていますわ!
そ、それに周りの目が!!
なぜメイドに王子が???ってなってますわ!!
「大人しくしてくれ…君が傷つくのは嬉しくない」
私はあまりにも低い威圧的な声にびっくりし止まってしまった。



「大丈夫か?」
私の足を治療する。
あり得ないことだ。王子がメイドの足を労るなんて。
「大丈夫です。なので早く戻って下さい」
私がブレイブ様の目を見つめる。
「どうして?レティーシャを置いてはいけない」
「所詮私はメイドです。けれど貴方は違います。早く」
私の真剣な顔にブレイブ様は仕方ない…と立ち去った。
私は涙が溢れた。
正直とっても嬉しいのだ。
好意を持って下さることが。
けれど所詮メイドに過ぎないのだ。
メイドと結婚なんて笑い物だ。
けれど私も愛してしまったのだ。
私はその日決めた。





「ど、どうして…」
「貴方とこれ以上一緒にはいられません」
私はメイドを辞めることにした。
自分の気持ちに気づいてしまった時点でダメなのだ。
それにお金を稼ぐなら他の仕事を死ぬ気で頑張ればなんとかなる。
「だ、だめだ!!」
ブレイブ様の初めて見る顔は恐ろしかった。
「ブレイブ様…?」
「レティーシャが俺の元から離れるなんて…」
「ごめんなさい…」
私が呟くとブレイブ様は涙を流した。
「本当に…本当に辞めてしまうのか…?」
「えぇ」
私は涙を堪えた。
「ありがとうございました」
ブレイブ様は固まったまま動かなかった。
私はブレイブ様から離れた。


あれから結構大変だった。
仕事はとても忙しいし一個の仕事では足りないから何個も掛け持ちで頑張った。
好きだとか愛してるとか色んな人が言ってきたけど私はあの人が忘れられず断り続けた。
2年経ち私の元へ1人の男の人が現れた。
「久しぶり。レティーシャ」
「バーバラ様…」

「あれから大変だったんだよ~?レティーシャが辞めてお兄様は死んだみたいになってたんだ。でも仕事だけはちゃんとやるから王位継承者としては大丈夫なんだけど」
「そうですか」
私にはもう関係無いからなぁ…。
関係ないと自分で思いながら寂しくなる私は馬鹿だと思う。
「レティーシャ…もう一度お兄様に会ってはくれないか?」
「え?!」
そ、そんなのダメだわ…
「俺が全て用意する…!ドレスも全部!だから」
「ドレス??」
「お兄様の婚約者を決めるパーティーがあるんだ」
まだやってるのね…、
「だからそれに参加してほしい。」
「嫌です」
「な、なんで!?!」
「私は王妃にはなれませんので」
「大丈夫だ!それはお兄様がなんとか…いや!君が来てくれるだけで良いんだ!顔見せてあげてよ!」
「……」
どうしよう。でも仕事を休むなんてできないし…。
「頼む…!」
あまりにも頼まれるのでつい聞いてしまった。
「分かりましたわ…」
「ありがとう…!ありがとう!レティーシャ!!」






当日本当にドレスや靴色々なものが届いた。
「これを着るの…??」
少し胸元が開きすぎではないだろうか…。
私が着るのを迷っていると家のチャイムがなる。
「レティーシャ様準備を手伝いに来ました」
そこにはバーバラ様がお願いしてくれたのかメイド達がいた。
「え…?え!」
いつのまにか私は準備が終わっていた。
「さぁレティーシャ様こちらにお乗り下さい」
そう言うと王家の紋章が入った馬車に乗せられる。

少し経ってから城に着いた。
「久しぶりだわ…」
私が城に入るとざわざわしていた会場が静かになる。
「レティーシャ!!」
ブレイブ様が走って寄ってきた。
「ブレイブ様…」
2年ぶりに見る彼は少しやつれている。
「レティーシャ…来てくれたんだね…」
バーバラ様が微笑む。
ん?貴方が来てくれってどうしてもって言うから…?ん?なんだろう…この違和感…
「レティーシャ」
王の凛とした声でブレイブとバーバラ様が静かになる。
「お主。ここに来たと言うことは良いのだな?」
「…?」
どう言うことだろうか…。
「レティーシャ?」
何故かメイドの時のクセがあったのか頷いてしまった。
すると王は微笑む。
「ありがとう。レティーシャ」
「え?」
私が頭にはてなマークを浮かばせていると会場が騒ぎ出す。
「おめでとうございます!ブレイブ様!」
「おめでとうお兄様!!」
「ありがとう…ありがとうレティーシャ」
どういうこと!?!!!
何故か私はまたブレイブ様に横抱きにされ連れ出された。
え!?!本当にどういうこと!?!!
「レティーシャ君はもう俺のものだ」
え!?!!
「来てくれてありがとう…了承してくれてありがとう」
どう言うこと??
「まさか本当に来てくれると思わなかったんだ」
「???」
「君がこの会場につき了承してくれたおかげで俺たちは結婚できる」
「は?」
全然理解ができない。
「な、、え???」
「愛してる。レティーシャ」
そう。私はブレイブ様には甘いのだ。
だからつい許してしまう。
それがどんな事でも。




「で、どう言うことですの??!!」
「違うんだ!レティーシャ!!」
「説明して下さいな!!!」
私が暴れ出すとブレイブ様は慌てたように言う
「バーバラが君を会場に連れてきてくれると言ったんだ!それでお父上に頼んだ!君が会場に来たら俺との結婚を認めてくれ!と!!」
「えぇぇぇ!?!!」
「それにお父上は俺に早く結婚して欲しかったのか良いっていったから!!」
「ぇぇぇ!?!!」
「許してくれ!!レティーシャ!!」
「さ、さすがに怒らないと気が済みません!!」
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...