おっさん異世界転移。嫌いな言葉は労働です。

Argon

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 冒険者ギルドの外見を見た時から嫌な予感がしていたが、詳しい説明を受けて確信した。

 冒険者ギルドは搾取する側だ!

 おっさんは若いころにいろいろやった。
 飲食店アルバイト、ニート、専門学校生、ニート、コールセンター受付、ニート、同人ゲーム制作、ニート、派遣社員、無職、会社員、ニート。
 働いていない期間が長いように聞こえるが、気のせいだ。

 そんな派遣社員だったときに、仲良くなった派遣先の経理担当者から聞いたのだ。
 おっさんを雇うために会社が支払っている金額はおっさんがもらえる給料の2倍以上!
 間に数社を挟んでそれぞれが手数料を引き抜くおかげで、最終的におっさんがもらえた給料は周りの同年代正社員の7割ほどだったのだ。

 仕事を紹介してもらうために面接に行った人材派遣会社は、東京駅から徒歩5分の超高層ビルにオフィスを構えていた。出迎えてくれたのは3人の美人受付嬢。最初のしっかりした面接は若くてきれいな女性社員さんで、最後に高そうなスーツを着たおっさんと5分だけ軽く話をして面接は終わった。
 そのときは美人女性社員さんのタイトスカートの短さに目がくらんで深くは考えなかったが、後で自分の給料の話を聞いて理解した。

 おっさんは搾取される側なのだと。

 どこからそんな超好立地のオフィスの高い家賃が出ているのだ。おっさんが本来もらえるはずの給料からだ。
 しかも、派遣会社では若い社員が大半を占め、中堅らしい人物はほとんど見ることがなかった。
 なぜなら、中堅になる前に会社を去るからだ。
 受付嬢は派遣社員ならば数年たてば継続契約を切られ、正社員だとしても年を食えば、閑職へ回されて退職を余儀なくされる。
 若い社員は体を壊すまで酷使されて、自主的に退職するか、電車に飛び込むか。
 奇跡的に生き延びるとあの偉そうなおっさんの手下になれるのだろう。

 まぁ、半分以上は真偽の怪しいネットの情報と被害妄想だなのだが、きっとそうに違いない!!
 おっさんは伊達に年を食っていないのだ!!

 ハァハァハァ。
 いかん。
 過去のトラウマから、少し興奮してしまったようだ。
 少し落ち着こう。

 半分冗談としても、これから仕事をしていく上で、収入は多いに越したことはない。
 冒険者ギルドは孤児や日雇い労働者の受け入れ先として社会のために役になっているのだとしても、営利企業だ。
 この一帯の冒険者ギルド関連施設の運営費や受付のお嬢さんのしっかりした制服などは、全部依頼主からの依頼料の一部で賄っていることに間違いはない。

 何が悲しくて、せっかく異世界に来たのに、いつモンスターに殺されるかも分からない日雇い派遣労働者にならなければいけないのだ。
 
 以上の理由から、おっさんは美人受付が居て、こんな立派な建物を持っている上に、国からも独立し、しかもライバルのいない寡占企業になどくみすることはないのだ。



「はい。他に仕事がないか考えてからもう一度検討しようと思います。」

 おっさんは大人だ。冒険者になるつもりなんてまったくないが、そんなことは言わない。
 あくまでも穏便に。しかし、度重なる検討をした結果として永遠に冒険者ギルドに登録しないだけだ。

「そうですか…。」
 お嬢さんは新人登録をしたことはあっても、わざわざやってきた人間に冒険者登録を断られる経験が無かったらしい。
 ここは手助けをせねば。

「お手数ですが、このスライムの従魔登録というものをお願いしたいのですが。」
「従魔登録ですね。はい。ただいま!」

 お嬢さんは自分のするべきことが見つかったことで、ようやく調子を取り戻してくれたようだ。

 従魔登録とは、本来町にいるはずがない魔物を町で飼育する場合に必要な登録らしい。現代日本でもタカやらワニやらの危険な動物は飼育するには登録が必要だったはず。おっさんも大きめな自然公園で大型犬に襲い掛かられて顔を舐められた結果、少し、ほんの少しだけおしっこを漏らしてしまったことがあるので理解できる。納得の措置だろう。
 住所不定の無職なので、とりあえず、町にスライムを連れた旅人がいるよ。という書類を作成してもらった。

「お世話になりました。」

 おっさんは礼儀正しくお嬢さんにお礼を言うと、ドレイクと合流するべく、歩き出した。
 歩き出したのだが。

「へっへっへっ!ちょっと待ちな!」
「おう、おっさん。そんな年になって冒険者になったのかよ!」
「これはアレだな。ここは先輩冒険者の俺たちの助言が必要だよな!その年だ。授業料は高くつくぜ!」

 異世界テンプレなのか、そこには3人組の薄汚れた格好をした冒険者たちが居た。
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