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バカな異世界なんていらない
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残ったのは悪役の魔女です。
悪役らしく、国にあだなそうと思います。
私は確かに美しい。
綺麗め系の美人だと言われてきた。今時珍しい黒髪美人とか言われるけれど、髪を染めなかったのは友達に「染めないでぇえ」と懇願されたのと、その代わりに一緒に遊ぶときはデザートを一品おごってもらう約束をとりつけたからであって深い意味などはない。
心が見た目にそって清廉潔白で美しい聖女のような人間だなんてことはないのだ。それは私が一番よく分かっている。
私は心の醜い人間が大嫌いだ。
だからこそ、顔はちょっとひらめっぽくて美人とは言えない女の子だったその子のことは、とても、本当にとても優しくて良い子だったから気に入っていた。
いきなり二人で見知らぬ異世界に召喚されて、なんか偉そうなイケメンたちに言い寄られたりしながら、魔力の使い方を二人で学ぶ。という意味不明な現状でもそこそこ満足していられたのは心の綺麗な彼女が共にいたから。
私の心の清涼剤。ひらめちゃんまじ天使。一応言い置いておくと、ひらめちゃんの名前はひらめちゃんではない。
魔力を学んでいるうちにお互いの能力が光と闇のように相反する物で、どうやら光は聖女、闇は聖女の力を高めることができる魔女の力のようだと知った。
魔女は往々にして聖女に相反する者となり、世界に混乱をもたらす存在になったそうで、今回召喚の私たちのうちどちらがどちらであるか、この世界の人たちは見極めようと目をこらしている……つもりだったらしい。ハッ笑える。つまり無能のあつまりなのね。無能で短絡的で心が醜いなんて生きる価値もないと思うわ。
お気づきだろうが私が魔女だ。
そして一緒に召喚されたひらめ顔の女の子が聖女だった。
「……ひらめちゃん」
私の腕の中にはぐったりと力を無くして死んでいるひらめ顔の女の子がいる。
私の魔力は闇のものだから。
だから回復魔法は使えない。
私は知っている。文献に書かれていた。魔女の使う闇の力の意味を知っている。
この世界において私たち地球人が聖女だの魔女だのいわれる異様な力を持ち得る理由を。
魔女の力はこの世界の外側につながるものだ。地球で言うところの宇宙とでもいおうか。
この世界の人間があつかうエネルギーが、火をおこして物を燃やしてうみだした炎の熱のようなものであるなら、魔女があつかうのは太陽の熱だ。
それだけでは熱すぎて実用には向かないけれど、それを実用できるようにコントロールするのが聖女だった。
今までの魔女たちが、世界にあだなす存在にばかりなるのに、それでも召喚され続けてきたのにも理由がある。
外側のエネルギーを魔女が力を使うことでこの世界にもってくることができ、その持ってきたエネルギーを奪って聖女も力を使うのだ。魔女が力を使わなければ聖女の力は人並み程度で、聖女がいなければ魔女の力は加減を知らない災害だ。
その聖女が死んだ。魔女と疑われて。私の持ってきたエネルギーを奪って使うから魔女だってさ、ははは、お前ら馬鹿かよ勉強しろよ。仮に魔女であったとしても魔女を殺すこともまた世界の損失だというのに。ひらめちゃんが死んだ。殺された。顔がひらめだから間違いないってさ。何言ってんの。ねぇ、ひらめの何が悪いの。そりゃ嫌悪する人がいたってしかたないけど、しない人だっている。私は好きだった。私は好きだったよ。やさしくて、おだやかで、見ていてほっとする顔だった。私は好きだったよひらめちゃん。ひらめちゃんなんて呼んでいたのがいけないの? 私がさげすんでいるとか誤解でもされたのかな。もうとりかえしがつかない。聖女は死んだ。私は聖女ではない。聖女にしか回復魔法は使えない。私はひらめちゃんを回復できない。
「ああああああああ!」
「聖女様!?」
「うるさい死ね!」
驚いた顔をしたまま首が飛ぶ。はは、あははは。なにこれ、異世界。意味分からない。死ねって言ったら死んだよ。イメージしたらその通りになった。恐ろしいね。日本でだってムカつく奴のこと死ねって思うことはあった。それでも死ななかったのはそれがただの思いだったからだ。
でもここは異世界。私には異能があって、私をなだめる聖女はいない。
「ははは、この世界は終わりが決定したわけね」
悪人からブレーキをうばうなんてバカよね。
ああ、これだけなんでもできるのに、なんで地球に帰る魔法は使えないのかな。
何万人殺す力より、そっちの方が欲しかった。それならひらめちゃんが生きているうちに帰れたのに。
「あはは。こんな世界なくなればいいのよ。異世界の聖女と魔女頼りでできてるなんて間違ってる」
みんな殺そうと思った。みんなみんなみんな死んでしまえばいい。こんな世界に生まれた己を恨むのね。ははは。
でも、優しい人もいたから、もう魔女も聖女も呼ばない世界を作るって言う優しい人もいたから、私は泣いて諦めた。
「ひらめ、で」
「ええ? なんですかそれ、異世界の言葉ですか? どういう意味なんです?」
人が大勢いなくなった青空の下で、新しく建国しようという国王に私は言った。新しい国の名前は私の言う物にすること。それが私が暴れない条件。
「人に優しい、って意味だよ」
「へぇ、いい名前ですね。うん。ヒラメ国か。いいですね」
「ふふ」
「……嘘つきました?」
「なんのことかなー」
「嘘だ! 本当はどんな意味なんです! 教えてください!」
「人に優しいだってば。本当に」
「ええー」
「ほらほら、名前決まったんだから新しい国づくりがんばんな。私はムカつくことがないように隠居するー、たまになんかやってあげるから、お金だけよろしく」
「それはいいですけど、本当のこと教えてくださいよ。これからずっと名乗っていく名前がふざけたものは困ります」
「ふざけてないよ。私の、大切な名前だよ」
悪役らしく、国にあだなそうと思います。
私は確かに美しい。
綺麗め系の美人だと言われてきた。今時珍しい黒髪美人とか言われるけれど、髪を染めなかったのは友達に「染めないでぇえ」と懇願されたのと、その代わりに一緒に遊ぶときはデザートを一品おごってもらう約束をとりつけたからであって深い意味などはない。
心が見た目にそって清廉潔白で美しい聖女のような人間だなんてことはないのだ。それは私が一番よく分かっている。
私は心の醜い人間が大嫌いだ。
だからこそ、顔はちょっとひらめっぽくて美人とは言えない女の子だったその子のことは、とても、本当にとても優しくて良い子だったから気に入っていた。
いきなり二人で見知らぬ異世界に召喚されて、なんか偉そうなイケメンたちに言い寄られたりしながら、魔力の使い方を二人で学ぶ。という意味不明な現状でもそこそこ満足していられたのは心の綺麗な彼女が共にいたから。
私の心の清涼剤。ひらめちゃんまじ天使。一応言い置いておくと、ひらめちゃんの名前はひらめちゃんではない。
魔力を学んでいるうちにお互いの能力が光と闇のように相反する物で、どうやら光は聖女、闇は聖女の力を高めることができる魔女の力のようだと知った。
魔女は往々にして聖女に相反する者となり、世界に混乱をもたらす存在になったそうで、今回召喚の私たちのうちどちらがどちらであるか、この世界の人たちは見極めようと目をこらしている……つもりだったらしい。ハッ笑える。つまり無能のあつまりなのね。無能で短絡的で心が醜いなんて生きる価値もないと思うわ。
お気づきだろうが私が魔女だ。
そして一緒に召喚されたひらめ顔の女の子が聖女だった。
「……ひらめちゃん」
私の腕の中にはぐったりと力を無くして死んでいるひらめ顔の女の子がいる。
私の魔力は闇のものだから。
だから回復魔法は使えない。
私は知っている。文献に書かれていた。魔女の使う闇の力の意味を知っている。
この世界において私たち地球人が聖女だの魔女だのいわれる異様な力を持ち得る理由を。
魔女の力はこの世界の外側につながるものだ。地球で言うところの宇宙とでもいおうか。
この世界の人間があつかうエネルギーが、火をおこして物を燃やしてうみだした炎の熱のようなものであるなら、魔女があつかうのは太陽の熱だ。
それだけでは熱すぎて実用には向かないけれど、それを実用できるようにコントロールするのが聖女だった。
今までの魔女たちが、世界にあだなす存在にばかりなるのに、それでも召喚され続けてきたのにも理由がある。
外側のエネルギーを魔女が力を使うことでこの世界にもってくることができ、その持ってきたエネルギーを奪って聖女も力を使うのだ。魔女が力を使わなければ聖女の力は人並み程度で、聖女がいなければ魔女の力は加減を知らない災害だ。
その聖女が死んだ。魔女と疑われて。私の持ってきたエネルギーを奪って使うから魔女だってさ、ははは、お前ら馬鹿かよ勉強しろよ。仮に魔女であったとしても魔女を殺すこともまた世界の損失だというのに。ひらめちゃんが死んだ。殺された。顔がひらめだから間違いないってさ。何言ってんの。ねぇ、ひらめの何が悪いの。そりゃ嫌悪する人がいたってしかたないけど、しない人だっている。私は好きだった。私は好きだったよ。やさしくて、おだやかで、見ていてほっとする顔だった。私は好きだったよひらめちゃん。ひらめちゃんなんて呼んでいたのがいけないの? 私がさげすんでいるとか誤解でもされたのかな。もうとりかえしがつかない。聖女は死んだ。私は聖女ではない。聖女にしか回復魔法は使えない。私はひらめちゃんを回復できない。
「ああああああああ!」
「聖女様!?」
「うるさい死ね!」
驚いた顔をしたまま首が飛ぶ。はは、あははは。なにこれ、異世界。意味分からない。死ねって言ったら死んだよ。イメージしたらその通りになった。恐ろしいね。日本でだってムカつく奴のこと死ねって思うことはあった。それでも死ななかったのはそれがただの思いだったからだ。
でもここは異世界。私には異能があって、私をなだめる聖女はいない。
「ははは、この世界は終わりが決定したわけね」
悪人からブレーキをうばうなんてバカよね。
ああ、これだけなんでもできるのに、なんで地球に帰る魔法は使えないのかな。
何万人殺す力より、そっちの方が欲しかった。それならひらめちゃんが生きているうちに帰れたのに。
「あはは。こんな世界なくなればいいのよ。異世界の聖女と魔女頼りでできてるなんて間違ってる」
みんな殺そうと思った。みんなみんなみんな死んでしまえばいい。こんな世界に生まれた己を恨むのね。ははは。
でも、優しい人もいたから、もう魔女も聖女も呼ばない世界を作るって言う優しい人もいたから、私は泣いて諦めた。
「ひらめ、で」
「ええ? なんですかそれ、異世界の言葉ですか? どういう意味なんです?」
人が大勢いなくなった青空の下で、新しく建国しようという国王に私は言った。新しい国の名前は私の言う物にすること。それが私が暴れない条件。
「人に優しい、って意味だよ」
「へぇ、いい名前ですね。うん。ヒラメ国か。いいですね」
「ふふ」
「……嘘つきました?」
「なんのことかなー」
「嘘だ! 本当はどんな意味なんです! 教えてください!」
「人に優しいだってば。本当に」
「ええー」
「ほらほら、名前決まったんだから新しい国づくりがんばんな。私はムカつくことがないように隠居するー、たまになんかやってあげるから、お金だけよろしく」
「それはいいですけど、本当のこと教えてくださいよ。これからずっと名乗っていく名前がふざけたものは困ります」
「ふざけてないよ。私の、大切な名前だよ」
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