陰で魔王と畏怖されている英雄とお見合いしています

鳴哉

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「え?」


 私の発した問いかけに返されたのは、イオネル殿下の呆気に取られた顔だった。
 想像していた質問ではなかったのだろう。それにしても、その表情には純粋な疑問符しか浮かんでおらず、嫌悪感だとかめんどくささとかは感じられず、少なくともホッとする。

「王族との縁談をいただけるような身分ではないことも、私自身や我が家に特に魅力もないことも承知しています。それでも、一度きりではなく、お見合いを続けてくださっているのは、イオ様が今後こういったお席を他の方と設ける練習のため、ということですか?」

 そもそもあまり多く話す方ではない殿下に、選択肢を示して端的にお答えいただけるよう、言葉を継ぐ。

「……それとも、私との結婚の可能性が少しはあると、自惚れても、よいのですか……?」

 口にしてみたら思っていた以上に恥ずかしい内容に、情け無い声になってしまい、赤面する。殿下の顔を見ているのも難しくなって机に目を落とした。食べかけのデザートが所在なげで、自分自身に重なる。


 短くはない沈黙に、イオネル殿下が答えたくないのだろうと分かる。
 そんなこと、本人を前にしてハッキリ言うのは心苦しいよね。


「すみません、詮無いことを申し上げました」
 私は顔を上げて、何とか笑顔を作って謝罪した。


 だけど、衝撃的な言葉を聞くことになる。


「お見合い?」
 心底不思議そうな顔をして、イオネル殿下は言った。


「私は、ダグラス殿に孫娘の食道楽に付き合ってやってくれ、と言われていたのだが」




 ……お じ い さ ま~~~っっ!!!
 嵌められた!
 まさか、お見合いだと思っていたのは、私だけだったなんてっ!!

 自分の顔が赤くなっているのか青くなっているのかわからない。恥ずかし過ぎて、今すぐ逃げ帰り、その勢いのまま祖父を殴り倒したい!


 もちろんそんなことはできる訳もなく、私は顔から火を吹きそうな羞恥に耐え、何とか改めて謝罪を試みようとして……息を止めた。


 向かいの席に座るイオネル殿下の顔も、見たことないくらい、それこそ火を吹きそうなくらい真っ赤だった。それを隠そうとしているのか、大きな手で口元を押さえているけれど、それでもそれはハッキリと見えてしまった。


「そうか、お見合いのつもりで会ってくれていたのか」

 そう言った殿下は微笑んでいた。
 初めて見るその優しい笑顔の想像もできなかった破壊力に、思考の術を奪われる。


「それは光栄だ。私も貴女がこの店の食事だけが目当てでないといいのに、と思っていた」





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