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第11章 USJ
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今日も、唇を離した後に圭一は旭の体を抱き締めてくれた。昼間に汗をかいたからか、圭一の匂いがいつもよりも強い。でもそれが全く嫌ではなくて、むしろ安心感が強まるような気すらする。
――もう自分の中で結論は出ているのかもしれない。
少し前から何となく分かってはいた自分の気持ちと、旭はその時初めて正面から向き合った。
楽しかった今日という一日。旭は圭一となら何も気にせずに素の自分でいられる。疲れたりせずずっと一緒に時間を過ごすことができる。何より、圭一は旭のことを好きでいてくれる。一緒にいると常にその気持ちが伝わってくる。誰かに好かれるという、何物にも代えがたい心地よさ。
そういう自分の実感を、これ以上否定しようとしても仕方がない気がした。女子に対する恋愛感情とは違うけれど、そして先に進むことに抵抗がない訳ではないけれど、それでも圭一はもう旭にとって手放すことのできない存在だった。こうやって抱き締められるのを心待ちにするほどに。
「――」
しばらくして、圭一がひとつ大きく呼吸し、それから体を離した。
「……ごめん」
「ううん」
「帰るか」
「うん」
踵を返すと同時に、さりげなく手が繋がれる。少しだけそのまま歩いて、ファミレスの敷地を出る前にまたさりげなく離された。
幹線道路沿いの歩道を、いつもよりゆっくりとした速度で家へと歩く。
「圭一、夏休みの宿題もう終わった?」
「ああ、大体な」
「へえ。すごいな、毎日部活あったのに」
そう言うと、圭一は薄く笑って一瞬だけ旭を見た。
「――あのさ、俺、最後の日、部活休みなんだけど」
「あ、そうなんだ?」
「空いてる? 31日」
「うん。多分何もない」
「んじゃ、また遊ぶ?」
「いいよ」
「……久し振りに、俺んちとか来る?」
前を見たまま、圭一は呟くようにそう言う。
「あー……うん、じゃあ」
旭も圭一を見ずに答える。なるべく普段と変わらないトーンで。
いつも別れる交差点を、圭一は立ち止らずに通り過ぎた。一緒に旭の家の方向へと歩く。もうあと少しで家に着いたら、今日という日も終わりだ。朝からずっと圭一と過ごした一日。道の先に自宅が見えてきたタイミングで圭一が口を開く。
「――31日、もし予定が変わったら連絡して」
「え? うん」
唐突な圭一の言葉に、旭はとりあえず反射的に頷く。そんな言葉を掛けられたのは初めてだった。どうせ予定なんて変わることはまずないけど、と怪訝に思った旭の表情を見て、圭一が苦笑する。すぐに家の前に着いた。
「今日、晩飯サンキュな」
「あ、うん。全然」
「じゃあ、またラインする」
「分かった」
じゃあな、と手を振りながら、圭一が踵を返す。旭も振り返した後、しばらくその背中を見送っていた。
「おかえり」
玄関から中に入ると、ちょうどバスルームから出てきた母親に声を掛けられる。
「次、お風呂入る?」
「うん」
そう答え、旭は部屋に荷物を置いてから、買ってきたお土産のお菓子と着替えを持って再び階下へ降りた。リビングでお土産を渡し、バスルームに向かう。今日は一日中遊びまわってかなり汗もかいた。先に全身を洗い、それからゆったりと湯舟に浸かる。
何となく31日のことを考える。やっぱりそういうことなんだろうな、と思いながら、それでも今までよりもずっと抵抗感は薄れているのを自覚していた。今日の圭一のことを断片的に思い出した。駐車場で自覚した自分の気持ちを思い出した。
そして別れ際の圭一の台詞を思い出した時、旭は圭一が本当に言いたかったことにやっと気付いた。
――もう自分の中で結論は出ているのかもしれない。
少し前から何となく分かってはいた自分の気持ちと、旭はその時初めて正面から向き合った。
楽しかった今日という一日。旭は圭一となら何も気にせずに素の自分でいられる。疲れたりせずずっと一緒に時間を過ごすことができる。何より、圭一は旭のことを好きでいてくれる。一緒にいると常にその気持ちが伝わってくる。誰かに好かれるという、何物にも代えがたい心地よさ。
そういう自分の実感を、これ以上否定しようとしても仕方がない気がした。女子に対する恋愛感情とは違うけれど、そして先に進むことに抵抗がない訳ではないけれど、それでも圭一はもう旭にとって手放すことのできない存在だった。こうやって抱き締められるのを心待ちにするほどに。
「――」
しばらくして、圭一がひとつ大きく呼吸し、それから体を離した。
「……ごめん」
「ううん」
「帰るか」
「うん」
踵を返すと同時に、さりげなく手が繋がれる。少しだけそのまま歩いて、ファミレスの敷地を出る前にまたさりげなく離された。
幹線道路沿いの歩道を、いつもよりゆっくりとした速度で家へと歩く。
「圭一、夏休みの宿題もう終わった?」
「ああ、大体な」
「へえ。すごいな、毎日部活あったのに」
そう言うと、圭一は薄く笑って一瞬だけ旭を見た。
「――あのさ、俺、最後の日、部活休みなんだけど」
「あ、そうなんだ?」
「空いてる? 31日」
「うん。多分何もない」
「んじゃ、また遊ぶ?」
「いいよ」
「……久し振りに、俺んちとか来る?」
前を見たまま、圭一は呟くようにそう言う。
「あー……うん、じゃあ」
旭も圭一を見ずに答える。なるべく普段と変わらないトーンで。
いつも別れる交差点を、圭一は立ち止らずに通り過ぎた。一緒に旭の家の方向へと歩く。もうあと少しで家に着いたら、今日という日も終わりだ。朝からずっと圭一と過ごした一日。道の先に自宅が見えてきたタイミングで圭一が口を開く。
「――31日、もし予定が変わったら連絡して」
「え? うん」
唐突な圭一の言葉に、旭はとりあえず反射的に頷く。そんな言葉を掛けられたのは初めてだった。どうせ予定なんて変わることはまずないけど、と怪訝に思った旭の表情を見て、圭一が苦笑する。すぐに家の前に着いた。
「今日、晩飯サンキュな」
「あ、うん。全然」
「じゃあ、またラインする」
「分かった」
じゃあな、と手を振りながら、圭一が踵を返す。旭も振り返した後、しばらくその背中を見送っていた。
「おかえり」
玄関から中に入ると、ちょうどバスルームから出てきた母親に声を掛けられる。
「次、お風呂入る?」
「うん」
そう答え、旭は部屋に荷物を置いてから、買ってきたお土産のお菓子と着替えを持って再び階下へ降りた。リビングでお土産を渡し、バスルームに向かう。今日は一日中遊びまわってかなり汗もかいた。先に全身を洗い、それからゆったりと湯舟に浸かる。
何となく31日のことを考える。やっぱりそういうことなんだろうな、と思いながら、それでも今までよりもずっと抵抗感は薄れているのを自覚していた。今日の圭一のことを断片的に思い出した。駐車場で自覚した自分の気持ちを思い出した。
そして別れ際の圭一の台詞を思い出した時、旭は圭一が本当に言いたかったことにやっと気付いた。
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