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恋とはどんなもの?9
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先ほどからどうもコリンはひっかかるものを感じていた。いつもは定位置にあるものが置き換わっているかのような違和感だ。しばし考え込み、その正体に気づく。
「ブラムって、前から自分のこと『俺』って言っていたっけ?」
コリンが尋ねると、ブラムは照れたような笑いを浮かべた。
「いや……アデルジェスさんが自分のこと『俺』って言っていたから。ちょっと変えてみようと思って」
アデルジェスの影響だったらしい。本当にブラムはアデルジェスのことを尊敬しているようだ。
「ふぅん……そっか」
コリンは窓枠に手をついて伸びをする。
今、この部屋にはコリンとブラムの二人しかいない。
アルンは店に出る日が近づいてきているので、最近では打ち合わせや決め事のために呼び出されることが多くなっているのだ。
「ミゼアス兄さんは島を去っていったし……アルンだってもうすぐ店に出ちゃうんだよね……何だか寂しいなぁ……」
ブラムが自分の呼び方を変えたことも、これから起こる変化の予兆という気がしてならない。
ミゼアスが去り、アルンも遠くなる。その上、ブラムまでどこかに行ってしまうのではないかと、コリンは胸の奥が痛むのを感じた。
「アルンは店に出るようになっても、遠くに行っちゃうわけじゃないだろう。部屋は変わるだろうし、学校まで一緒に行くこともなくなるだろうけれど……。でも同じ館内にいるんだし、いつでも会えるよ」
「うん……」
「俺たちだって、来年には店に出るんだ。そうなれば、時間だって合うようになる。今までのような三人同室ってわけにはいかないけれど、今度はある程度の自由と稼ぎがあるだろう。一緒にどこか食事に行ったり、芝居見物に行ったり、別の楽しみがあるよ。できることの幅は今より広がるし、きっと面白いよ」
ブラムの言葉が、頬を優しく掠める風のように、コリンの心を穏やかに撫でていく。見えない不安に怯えていたコリンを温かく包み込んでくれるようだった。
「うん……そうだね……」
コリンは目を伏せ、頷く。変化に怯えるよりも、新しい楽しみに目を向けるのだ。ブラムはいつもそうやってコリンを励ましてくれる。
「アルンはちょっと離れているけれど、俺とコリンは店に出る時期は大体同じだし、一緒にいられるよ。寂しがりやで甘えっ子のコリンの側にいてあげるから、安心して」
悪戯っぽくそう言って、ブラムはコリンの頭を撫でる。
「もう……僕、そんなに子供じゃないもん……」
唇を尖らせてコリンは抗議するが、ブラムの手を振り払うことはしなかった。優しく頭を撫でる手が心地よく、この安らぎに浸っていたかったのだ。
結局、恋とはどういうものか、コリンにはまだわからない。
でも、焦るのはやめようとコリンは思う。今は頭を撫でてくれる手の温もりが、心を満たしてくれる。コリンが不安になれば、慰め、励ましてもくれる。側にいるとも言ってくれた。それで十分だ。
ブラムの手は優しく、温かく、まるで波間に漂うかのような浮遊感を呼び覚ます。心もふわふわと軽く、和らいでいくようだった。
今はこの心地よさに身を委ねてしまおう。コリンは目を閉じ、そっとブラムに寄りかかった。
「ブラムって、前から自分のこと『俺』って言っていたっけ?」
コリンが尋ねると、ブラムは照れたような笑いを浮かべた。
「いや……アデルジェスさんが自分のこと『俺』って言っていたから。ちょっと変えてみようと思って」
アデルジェスの影響だったらしい。本当にブラムはアデルジェスのことを尊敬しているようだ。
「ふぅん……そっか」
コリンは窓枠に手をついて伸びをする。
今、この部屋にはコリンとブラムの二人しかいない。
アルンは店に出る日が近づいてきているので、最近では打ち合わせや決め事のために呼び出されることが多くなっているのだ。
「ミゼアス兄さんは島を去っていったし……アルンだってもうすぐ店に出ちゃうんだよね……何だか寂しいなぁ……」
ブラムが自分の呼び方を変えたことも、これから起こる変化の予兆という気がしてならない。
ミゼアスが去り、アルンも遠くなる。その上、ブラムまでどこかに行ってしまうのではないかと、コリンは胸の奥が痛むのを感じた。
「アルンは店に出るようになっても、遠くに行っちゃうわけじゃないだろう。部屋は変わるだろうし、学校まで一緒に行くこともなくなるだろうけれど……。でも同じ館内にいるんだし、いつでも会えるよ」
「うん……」
「俺たちだって、来年には店に出るんだ。そうなれば、時間だって合うようになる。今までのような三人同室ってわけにはいかないけれど、今度はある程度の自由と稼ぎがあるだろう。一緒にどこか食事に行ったり、芝居見物に行ったり、別の楽しみがあるよ。できることの幅は今より広がるし、きっと面白いよ」
ブラムの言葉が、頬を優しく掠める風のように、コリンの心を穏やかに撫でていく。見えない不安に怯えていたコリンを温かく包み込んでくれるようだった。
「うん……そうだね……」
コリンは目を伏せ、頷く。変化に怯えるよりも、新しい楽しみに目を向けるのだ。ブラムはいつもそうやってコリンを励ましてくれる。
「アルンはちょっと離れているけれど、俺とコリンは店に出る時期は大体同じだし、一緒にいられるよ。寂しがりやで甘えっ子のコリンの側にいてあげるから、安心して」
悪戯っぽくそう言って、ブラムはコリンの頭を撫でる。
「もう……僕、そんなに子供じゃないもん……」
唇を尖らせてコリンは抗議するが、ブラムの手を振り払うことはしなかった。優しく頭を撫でる手が心地よく、この安らぎに浸っていたかったのだ。
結局、恋とはどういうものか、コリンにはまだわからない。
でも、焦るのはやめようとコリンは思う。今は頭を撫でてくれる手の温もりが、心を満たしてくれる。コリンが不安になれば、慰め、励ましてもくれる。側にいるとも言ってくれた。それで十分だ。
ブラムの手は優しく、温かく、まるで波間に漂うかのような浮遊感を呼び覚ます。心もふわふわと軽く、和らいでいくようだった。
今はこの心地よさに身を委ねてしまおう。コリンは目を閉じ、そっとブラムに寄りかかった。
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