129 / 136
ヴァレンの目標 4
しおりを挟む
「えっと……きみ、何か不安に思うようなことって、あるかい?」
海岸にてナマコたちを無事に帰した後、ふと思いついてミゼアスは尋ねてみた。
なるべくならば暗い情念など抱かせたくはなかったが、花月琴の音のために、ある程度は必要なことである。
ヴァレンが苦手とすることや、不安を抱く要素がわかれば、少しは手助けになるかと思われたのだ。
もっとも、お気楽に生きているヴァレンはあっさり『ない』と答えて終わるのだろうと、尋ねた本人であるミゼアスもさほど期待はしてなかった。
「はい……」
ところが、ミゼアスの予想に反して、ヴァレンは表情を曇らせて俯いたのだ。
「……え? それは何だい?」
俯くヴァレンを見て、ミゼアスはまさか不安に思うことがあったのかと驚く。同時に見抜けなかったことに罪悪感と不安を覚え、脈打つ胸をぐっと押さえてヴァレンの答えを待つ。
「実は……毎日、柔軟体操をしているんですけど、なかなか自分のアレを咥えられるところまでいかなくて……」
ぼそぼそと語るヴァレンの言葉を聞きながら、心配した自分がバカだったとミゼアスは頭を抱える。
以前、白花の仕事では客のものを咥えることがあるという話をしたとき、ヴァレンは自分のものを咥えるのだと勘違いしたのだ。
すぐに誤解は解いたものの、何故かヴァレンの中ではそれが目標として掲げられてしまったらしい。
「あのね……それは、できなくてもいいんだよ。というか、それをできるようになって、何をするつもりなんだい?」
「できるようになりたいんです」
「いや、だから……何のために?」
「できるようになりたいんです」
きっぱりとした口調で断言するヴァレン。瞳には強い決意が宿っている。
ミゼアスはその瞳を見返したが、ややあって目を閉じて深く息を吐いた。
「……うん、わかったよ……頑張ってね……」
ヴァレンの情操教育は、ミゼアスの意図したものとは別方向に向かっているらしい。
何かがおかしいと思いながらも、このまま当人の思うように突っ走らせてみるしかないと、ミゼアスは諦めの心境で答えるのだった。
海岸にてナマコたちを無事に帰した後、ふと思いついてミゼアスは尋ねてみた。
なるべくならば暗い情念など抱かせたくはなかったが、花月琴の音のために、ある程度は必要なことである。
ヴァレンが苦手とすることや、不安を抱く要素がわかれば、少しは手助けになるかと思われたのだ。
もっとも、お気楽に生きているヴァレンはあっさり『ない』と答えて終わるのだろうと、尋ねた本人であるミゼアスもさほど期待はしてなかった。
「はい……」
ところが、ミゼアスの予想に反して、ヴァレンは表情を曇らせて俯いたのだ。
「……え? それは何だい?」
俯くヴァレンを見て、ミゼアスはまさか不安に思うことがあったのかと驚く。同時に見抜けなかったことに罪悪感と不安を覚え、脈打つ胸をぐっと押さえてヴァレンの答えを待つ。
「実は……毎日、柔軟体操をしているんですけど、なかなか自分のアレを咥えられるところまでいかなくて……」
ぼそぼそと語るヴァレンの言葉を聞きながら、心配した自分がバカだったとミゼアスは頭を抱える。
以前、白花の仕事では客のものを咥えることがあるという話をしたとき、ヴァレンは自分のものを咥えるのだと勘違いしたのだ。
すぐに誤解は解いたものの、何故かヴァレンの中ではそれが目標として掲げられてしまったらしい。
「あのね……それは、できなくてもいいんだよ。というか、それをできるようになって、何をするつもりなんだい?」
「できるようになりたいんです」
「いや、だから……何のために?」
「できるようになりたいんです」
きっぱりとした口調で断言するヴァレン。瞳には強い決意が宿っている。
ミゼアスはその瞳を見返したが、ややあって目を閉じて深く息を吐いた。
「……うん、わかったよ……頑張ってね……」
ヴァレンの情操教育は、ミゼアスの意図したものとは別方向に向かっているらしい。
何かがおかしいと思いながらも、このまま当人の思うように突っ走らせてみるしかないと、ミゼアスは諦めの心境で答えるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!
タッター
BL
ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。
自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。
――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。
そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように――
「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」
「無理。邪魔」
「ガーン!」
とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。
「……その子、生きてるっすか?」
「……ああ」
◆◆◆
溺愛攻め
×
明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ふたなり治験棟 企画12月31公開
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる