12 / 63
12.わずかな明かり
しおりを挟む
「そうそう、思い出した。この間、ミゼアス付きからはずした子がいるだろう?」
「ああ……いたね」
それなりに優秀な子だからと付けられたのだが、どうもミゼアスは気に入らなかった。やたらとミゼアスに対し、おべっかを使うのだ。それも口先だけで、実は裏でミゼアスの悪口を言っていた。
さらにミゼアスという五花付きであることを鼻にかけて、他の子たちをいじめていたといたことがわかり、ミゼアスは自分付きからはずしたのだ。
「ネヴィルっていう名前だったっけ。その子、それからガルト兄さんが拾ったんだよ。仲睦まじくやっているようだよ」
「ふうん……そう」
それはお互い、気の合うことだろう。あの子の性格上、ミゼアスのことを恨みに思っているのはほぼ間違いがない。
ここのところヴァレンにかかりきりで、いつも以上に他人が何をしているかなど考えている余裕もなかった。
「その子かどうかわからないけれど……あのヴァレンって子、嫌がらせをされているみたいだよ」
「え……?」
ミゼアスは驚きの声を漏らす。いつもヴァレンは明るく、つい先ほどだって元気に学校へと向かったばかりだ。
そのような仕打ちをされているなど、想像もつかない。
「物を隠されたり、悪口を言われたりしているっていう話だよ。ただ、本人はまったく気にしていないみたいだけれどね」
そういえば、ヴァレンは何も持たずに学校へと向かっていた。それは物を隠されるからなのだろうか。
しかし、一度読んだものを全て覚えてしまうヴァレンなら、たとえ教科書を隠されたところで困ることはないのだろう。
「今のところ問題はないようだけど、ちょっと気をつけてあげたほうがいいと思うよ。俺も少し見ておくからさ」
「……どうして、僕にそんなことを言うんだい? 僕に味方なんてすると、きみだってのけ者にされるかもしれないよ」
軽く眉根を寄せてミゼアスは問う。
いくら同期とはいえ、今までほとんど接点もなかったのだ。ミゼアスの味方をする理由など思い浮かばない。
「うん、ちょっとね……今の雰囲気、なんだか嫌なんだよ。変な意地の張り合いとか、足の引っ張り合いしているだろう。どうにか変えるきっかけを作りたいんだけれど、俺じゃあなかなかうまくいかない。ミゼアスに味方することがせいぜいなんだよ」
情けないけれどね、と少年は自嘲の笑みを浮かべる。
「……そう」
「ミゼアスは五花だろう? ここで一番偉いのはミゼアスなんだから、もっと堂々としていればいいのに」
「うん……」
先日、マリオンにも五花にふさわしい振る舞いをしろと言われた。やはり自分には五花としての風格などないのだろう。ミゼアスは俯く。
上の地位は望んだが、それは落ちぶれずに早く借金を返して帰るためだ。帰る場所がなくなった今、その地位も宙に浮いてしまった。
地位そのものが目的だったわけではない。本当に欲しかったものは、別にある。
「まあミゼアスは俺と同い年だし。俺が偉そうなことは言えないけれど……ミゼアスはもっと、ふてぶてしくなっていいと思うよ。もし俺に何かできることがあったら、力になるからさ」
そう言って少年はミゼアスに笑いかける。
「うん……ありがとう」
ミゼアスの心に、わずかな温かい明かりが灯っていく。ずっと自分は一人だと思っていたが、こうして気にかけてくれている者もいるのだ。
ヴァレンが嫌がらせをされているという話に不安はあったが、帰ってきたらそれとなく話を聞いてみることにしよう。そう決めて、ミゼアスはかすかに灯った明かりが消えないよう、そっと胸を押さえた。
「ああ……いたね」
それなりに優秀な子だからと付けられたのだが、どうもミゼアスは気に入らなかった。やたらとミゼアスに対し、おべっかを使うのだ。それも口先だけで、実は裏でミゼアスの悪口を言っていた。
さらにミゼアスという五花付きであることを鼻にかけて、他の子たちをいじめていたといたことがわかり、ミゼアスは自分付きからはずしたのだ。
「ネヴィルっていう名前だったっけ。その子、それからガルト兄さんが拾ったんだよ。仲睦まじくやっているようだよ」
「ふうん……そう」
それはお互い、気の合うことだろう。あの子の性格上、ミゼアスのことを恨みに思っているのはほぼ間違いがない。
ここのところヴァレンにかかりきりで、いつも以上に他人が何をしているかなど考えている余裕もなかった。
「その子かどうかわからないけれど……あのヴァレンって子、嫌がらせをされているみたいだよ」
「え……?」
ミゼアスは驚きの声を漏らす。いつもヴァレンは明るく、つい先ほどだって元気に学校へと向かったばかりだ。
そのような仕打ちをされているなど、想像もつかない。
「物を隠されたり、悪口を言われたりしているっていう話だよ。ただ、本人はまったく気にしていないみたいだけれどね」
そういえば、ヴァレンは何も持たずに学校へと向かっていた。それは物を隠されるからなのだろうか。
しかし、一度読んだものを全て覚えてしまうヴァレンなら、たとえ教科書を隠されたところで困ることはないのだろう。
「今のところ問題はないようだけど、ちょっと気をつけてあげたほうがいいと思うよ。俺も少し見ておくからさ」
「……どうして、僕にそんなことを言うんだい? 僕に味方なんてすると、きみだってのけ者にされるかもしれないよ」
軽く眉根を寄せてミゼアスは問う。
いくら同期とはいえ、今までほとんど接点もなかったのだ。ミゼアスの味方をする理由など思い浮かばない。
「うん、ちょっとね……今の雰囲気、なんだか嫌なんだよ。変な意地の張り合いとか、足の引っ張り合いしているだろう。どうにか変えるきっかけを作りたいんだけれど、俺じゃあなかなかうまくいかない。ミゼアスに味方することがせいぜいなんだよ」
情けないけれどね、と少年は自嘲の笑みを浮かべる。
「……そう」
「ミゼアスは五花だろう? ここで一番偉いのはミゼアスなんだから、もっと堂々としていればいいのに」
「うん……」
先日、マリオンにも五花にふさわしい振る舞いをしろと言われた。やはり自分には五花としての風格などないのだろう。ミゼアスは俯く。
上の地位は望んだが、それは落ちぶれずに早く借金を返して帰るためだ。帰る場所がなくなった今、その地位も宙に浮いてしまった。
地位そのものが目的だったわけではない。本当に欲しかったものは、別にある。
「まあミゼアスは俺と同い年だし。俺が偉そうなことは言えないけれど……ミゼアスはもっと、ふてぶてしくなっていいと思うよ。もし俺に何かできることがあったら、力になるからさ」
そう言って少年はミゼアスに笑いかける。
「うん……ありがとう」
ミゼアスの心に、わずかな温かい明かりが灯っていく。ずっと自分は一人だと思っていたが、こうして気にかけてくれている者もいるのだ。
ヴァレンが嫌がらせをされているという話に不安はあったが、帰ってきたらそれとなく話を聞いてみることにしよう。そう決めて、ミゼアスはかすかに灯った明かりが消えないよう、そっと胸を押さえた。
0
あなたにおすすめの小説
白金の花嫁は将軍の希望の花
葉咲透織
BL
義妹の身代わりでボルカノ王国に嫁ぐことになったレイナール。女好きのボルカノ王は、男である彼を受け入れず、そのまま若き将軍・ジョシュアに下げ渡す。彼の屋敷で過ごすうちに、ジョシュアに惹かれていくレイナールには、ある秘密があった。
※個人ブログにも投稿済みです。
うそつきΩのとりかえ話譚
沖弉 えぬ
BL
療養を終えた王子が都に帰還するのに合わせて開催される「番候補戦」。王子は国の将来を担うのに相応しいアルファであり番といえば当然オメガであるが、貧乏一家の財政難を救うべく、18歳のトキはアルファでありながらオメガのフリをして王子の「番候補戦」に参加する事を決める。一方王子にはとある秘密があって……。雪の積もった日に出会った紅梅色の髪の青年と都で再会を果たしたトキは、彼の助けもあってオメガたちによる候補戦に身を投じる。
舞台は和風×中華風の国セイシンで織りなす、同い年の青年たちによる旅と恋の話です。
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?
キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。
知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。
今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど——
「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」
幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。
しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。
これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。
全8話。
幼馴染は僕を選ばない。
佳乃
BL
ずっと続くと思っていた〈腐れ縁〉は〈腐った縁〉だった。
僕は好きだったのに、ずっと一緒にいられると思っていたのに。
僕がいた場所は僕じゃ無い誰かの場所となり、繋がっていると思っていた縁は腐り果てて切れてしまった。
好きだった。
好きだった。
好きだった。
離れることで断ち切った縁。
気付いた時に断ち切られていた縁。
辛いのは、苦しいのは彼なのか、僕なのか…。
貴族軍人と聖夜の再会~ただ君の幸せだけを~
倉くらの
BL
「こんな姿であの人に会えるわけがない…」
大陸を2つに分けた戦争は終結した。
終戦間際に重症を負った軍人のルーカスは心から慕う上官のスノービル少佐と離れ離れになり、帝都の片隅で路上生活を送ることになる。
一方、少佐は屋敷の者の策略によってルーカスが死んだと知らされて…。
互いを思う2人が戦勝パレードが開催された聖夜祭の日に再会を果たす。
純愛のお話です。
主人公は顔の右半分に火傷を負っていて、右手が無いという状態です。
全3話完結。
侯爵様の愛人ですが、その息子にも愛されてます
muku
BL
魔術師フィアリスは、地底の迷宮から湧き続ける魔物を倒す使命を担っているリトスロード侯爵家に雇われている。
仕事は魔物の駆除と、侯爵家三男エヴァンの家庭教師。
成人したエヴァンから突然恋心を告げられたフィアリスは、大いに戸惑うことになる。
何故ならフィアリスは、エヴァンの父とただならぬ関係にあったのだった。
汚れた自分には愛される価値がないと思いこむ美しい魔術師の青年と、そんな師を一心に愛し続ける弟子の物語。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる