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20.ひとときの静けさ
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館内の雰囲気も、少しずつ変わってきていた。
今まで自分を押し込め、片隅でひっそりとしようとしていたミゼアスだったが、堂々とすることにしたのだ。
いつものようにガルトが嫌味を言ってきたとき、にっこり笑って『ガルト、あまり調子に乗らないようにね』と一言だけ口にした。
するとその途端に、ガルトとその取り巻きからの嫌味がぴたりと止んだのだ。
こんな簡単なことだったのか、とミゼアスは驚いた。
それからは、年若い白花たちがぽつりぽつりとミゼアスの元に相談に訪れるようになり、時には共にお茶の時間を過ごす機会もできてきた。
「……ここのところ、頑張っているようですね」
マリオンにもそう言われた。すれ違いざまにぼそっとした声をかけられただけだったが、口元には微笑みが浮かんでいたように思う。
少しは五花として、認めてくれたのだろうか。
娼館主からも声をかけられた。
「ミゼアス、最近明るくなってきたようだな」
「……まあ、おかげさまで」
苦笑しながらミゼアスは答える。
「ヴァレンはどうだ? うまくやっているか?」
「今は逆立ちに凝っているようで、逆立ちで島一周を目指して特訓中。もう、人に迷惑をかけなければいいって僕もあきらめた」
ゆっくりと、大きく息を吐き出す。ミゼアスの指導の下、ヴァレンはあっという間に後方転回を習得してしまった。柔軟体操も毎日欠かさず続けているようだ。
ヴァレンの目標を達成しようという熱意は素晴らしく、そのためには単調できつい練習であっても嫌がらない。そこはミゼアスも感心する。
ただ、彼が何を目指しているのかはさっぱりわからないが。
「うまくやっているようじゃないか。やはり、あの子ならミゼアスの殻を壊してくれると思ったよ」
そう言って娼館主は朗らかに笑う。
「僕の殻?」
「おまえは五花に早くなりすぎた。妬みややっかみから身を守るため、殻に閉じこもっていただろう。正直、五花としてふさわしい姿ではなかったよ」
「……確かにね。面目ないと思っているよ」
軽く目を伏せてミゼアスは答える。思い起こせば、確かにそのとおりだ。
「だが、あの子が来てから殻に閉じこもるような余裕はなくなっただろう。それに何か思うところもあったんだろう? 今のおまえは、五花に見えるよ」
「……そうだと、ありがたいね」
娼館主の言葉がミゼアスの胸に温かく響く。五花としてふさわしくありたいと願い、そう振る舞うようにしてきた。それを認めてもらえたのだと喜びが広がった。
何もかもが順調に動き出したと、このときは思っていたのだ。
今まで自分を押し込め、片隅でひっそりとしようとしていたミゼアスだったが、堂々とすることにしたのだ。
いつものようにガルトが嫌味を言ってきたとき、にっこり笑って『ガルト、あまり調子に乗らないようにね』と一言だけ口にした。
するとその途端に、ガルトとその取り巻きからの嫌味がぴたりと止んだのだ。
こんな簡単なことだったのか、とミゼアスは驚いた。
それからは、年若い白花たちがぽつりぽつりとミゼアスの元に相談に訪れるようになり、時には共にお茶の時間を過ごす機会もできてきた。
「……ここのところ、頑張っているようですね」
マリオンにもそう言われた。すれ違いざまにぼそっとした声をかけられただけだったが、口元には微笑みが浮かんでいたように思う。
少しは五花として、認めてくれたのだろうか。
娼館主からも声をかけられた。
「ミゼアス、最近明るくなってきたようだな」
「……まあ、おかげさまで」
苦笑しながらミゼアスは答える。
「ヴァレンはどうだ? うまくやっているか?」
「今は逆立ちに凝っているようで、逆立ちで島一周を目指して特訓中。もう、人に迷惑をかけなければいいって僕もあきらめた」
ゆっくりと、大きく息を吐き出す。ミゼアスの指導の下、ヴァレンはあっという間に後方転回を習得してしまった。柔軟体操も毎日欠かさず続けているようだ。
ヴァレンの目標を達成しようという熱意は素晴らしく、そのためには単調できつい練習であっても嫌がらない。そこはミゼアスも感心する。
ただ、彼が何を目指しているのかはさっぱりわからないが。
「うまくやっているようじゃないか。やはり、あの子ならミゼアスの殻を壊してくれると思ったよ」
そう言って娼館主は朗らかに笑う。
「僕の殻?」
「おまえは五花に早くなりすぎた。妬みややっかみから身を守るため、殻に閉じこもっていただろう。正直、五花としてふさわしい姿ではなかったよ」
「……確かにね。面目ないと思っているよ」
軽く目を伏せてミゼアスは答える。思い起こせば、確かにそのとおりだ。
「だが、あの子が来てから殻に閉じこもるような余裕はなくなっただろう。それに何か思うところもあったんだろう? 今のおまえは、五花に見えるよ」
「……そうだと、ありがたいね」
娼館主の言葉がミゼアスの胸に温かく響く。五花としてふさわしくありたいと願い、そう振る舞うようにしてきた。それを認めてもらえたのだと喜びが広がった。
何もかもが順調に動き出したと、このときは思っていたのだ。
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