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23.不穏な芽
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客が帰った後、いつになく真剣な様子でヴァレンがミゼアスの元に寄ってきた。
「ミゼアス兄さん……あのナツメ、薬か何かが入っていたと思います」
ヴァレンはミゼアスの耳元でそっと囁く。
「……何だって」
思わず耳を疑いながら、ミゼアスはヴァレンを見る。その顔にはいつもの能天気な表情はなく、真っ直ぐにミゼアスを見つめていた。
「普通の味じゃありませんでした。何か入っているはずです」
「きみは大丈夫なのかい?」
「すぐ吐き出したので、大丈夫です。多分、そんなに強くないものだと思います」
客に出す料理は手の空いている見習いが厨房から運んでくる。途中で何かを混ぜることも可能だろう。
薬を混ぜるなどという物騒なことをされるほど、恨みをかっていただろうか。
ミゼアスにとってはそこまでの心当たりはなかったが、もしかしたら相手にとっては違うのかもしれない。
最年少の五花というだけで、嫌がらせの対象になってしまうくらいなのだ。そう考えれば、いくらでも心当たりは出てくる。
「……ミゼアス兄さん、俺の言うこと、疑わないんですか?」
考え込んでしまったミゼアスに、ヴァレンが声をかけてくる。
「ん? どうして?」
ミゼアスは軽く首を傾げた。
ヴァレンが嘘を言う理由など、思いつかない。勘違いということはありえるだろうが、わざわざミゼアスを騙そうとする必要などないはずだ。
「俺、今まで大人にこういうこと言っても、否定しかされたことがありませんでした。『嘘を言うな』とか『ふざけているのか』のような……最初に俺の心配をしてもらったの、初めてです……」
そう言ってヴァレンはミゼアスにしがみつく。
頭をうずめて服をきゅっと握ってくるヴァレンの背中を、ミゼアスは落ち着かせるように撫でてやる。
ヴァレンは感覚が鋭く、頭の回転も早い。そのためにかえって周囲からは、子供にそこまでわかるはずがないと不当な扱いを受けてきたのだろう。
それでも、否定されるのを覚悟の上でミゼアスに伝えてきたのだ。
ヴァレンの心を思うと、ミゼアスはいじらしさに胸を締めつけられながら、芯の強さに圧倒されそうにもなる。
もし以前だったら、たとえ毒を盛られて命を落としても構わないと、投げやりに思ったかもしれない。しかし今は、ヴァレンがいる。
腕の中から温もりを伝えてくれる存在を守っていくため、何をすればよいのだろうとミゼアスは思索に沈んだ。
「ミゼアス兄さん……あのナツメ、薬か何かが入っていたと思います」
ヴァレンはミゼアスの耳元でそっと囁く。
「……何だって」
思わず耳を疑いながら、ミゼアスはヴァレンを見る。その顔にはいつもの能天気な表情はなく、真っ直ぐにミゼアスを見つめていた。
「普通の味じゃありませんでした。何か入っているはずです」
「きみは大丈夫なのかい?」
「すぐ吐き出したので、大丈夫です。多分、そんなに強くないものだと思います」
客に出す料理は手の空いている見習いが厨房から運んでくる。途中で何かを混ぜることも可能だろう。
薬を混ぜるなどという物騒なことをされるほど、恨みをかっていただろうか。
ミゼアスにとってはそこまでの心当たりはなかったが、もしかしたら相手にとっては違うのかもしれない。
最年少の五花というだけで、嫌がらせの対象になってしまうくらいなのだ。そう考えれば、いくらでも心当たりは出てくる。
「……ミゼアス兄さん、俺の言うこと、疑わないんですか?」
考え込んでしまったミゼアスに、ヴァレンが声をかけてくる。
「ん? どうして?」
ミゼアスは軽く首を傾げた。
ヴァレンが嘘を言う理由など、思いつかない。勘違いということはありえるだろうが、わざわざミゼアスを騙そうとする必要などないはずだ。
「俺、今まで大人にこういうこと言っても、否定しかされたことがありませんでした。『嘘を言うな』とか『ふざけているのか』のような……最初に俺の心配をしてもらったの、初めてです……」
そう言ってヴァレンはミゼアスにしがみつく。
頭をうずめて服をきゅっと握ってくるヴァレンの背中を、ミゼアスは落ち着かせるように撫でてやる。
ヴァレンは感覚が鋭く、頭の回転も早い。そのためにかえって周囲からは、子供にそこまでわかるはずがないと不当な扱いを受けてきたのだろう。
それでも、否定されるのを覚悟の上でミゼアスに伝えてきたのだ。
ヴァレンの心を思うと、ミゼアスはいじらしさに胸を締めつけられながら、芯の強さに圧倒されそうにもなる。
もし以前だったら、たとえ毒を盛られて命を落としても構わないと、投げやりに思ったかもしれない。しかし今は、ヴァレンがいる。
腕の中から温もりを伝えてくれる存在を守っていくため、何をすればよいのだろうとミゼアスは思索に沈んだ。
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