θ(テータ)ポリス 淫妄浮遊都市

くろ

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デートの約束(永田)

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美和子は三日休んだ後に、元気に出勤してきた。病院で精密検査をしても、どこにも異常は見当たらなかったらしい。
それはそうだろう、お前の身体に異常が起こるかどうかは、この俺の匙加減で決まっているのだから。
さて、今日はどうやっていたぶってやろうか……

みんなに心配の声を掛けられ、申し訳なさそうな表情で対応する美和子に言ってやった。

「美和子さん大丈夫でしたか?あの時の美和子さん、まるで『船が転覆』したみたいな慌てぶりでしたよ」

この、意味の分からない表現に、周囲の人間は「コイツ何言ってんだ?」という白けた態度を示したが、言われた本人の美和子は、それまでの申し訳なさそうな表情を急に強張らせた。

仕事が始まって間もなく

「永田さんこの書類ちょっと」

珍しく美和子から声を掛けてきた。仕事のことであろうと、こいつは俺とのコミュニケーションを何とかして避けていたから、これは何かありそうな予感がした。

席に向かうと、「ちょっとこっち来て下さい」と、目立たない隅の方に連れて行かれた。書類を広げて見せる美和子は、その書類とは全く関係のないことを口にした。

「ちょっとお願いがあるんだけど、この間のご飯の誘い、断っちゃったけど、やっぱり受けたいなと思って…」

この瞬間の感覚は、ネットの閲覧をしていて、誘うように貼り付けてあるエロい広告をついついタップしてしまいそうになる感覚と似ていた。
美和子の急な意見の移り変わりに妙な感じはしたが、この時の俺は、慎重さよりも性欲の方が圧倒的に意思決定の権限を握っており、二つ返事でそのお願いを受けてしまった。危ないと意識しつつ、あまりにもソソるエロ広告のバナーを思わずタップしてしまうかのように…
そう言えば『θポリス』との出会いもエロ広告のバナーをタップしたのがきっかけだった。中々目的の広告にたどり着けなくて、たらい回しにされているうちに『意中の人にイタズラし放題!』なんて謳い文句が目に入って、面白そうだと思ってインストールしたのが始まりだった。アプリの説明書きを見て、「そんなわけあるか!」と思わず突っ込みを入れたくなるほど信じられない機能だったが、使ってみるとまさかのホンモノの神アプリだった。エロ広告のバナーが出会いのきっかけを作ってくれたに違いない。こんな奇跡的なことはない。だから今回もきっと大丈夫だ。
そして、止めることのできない武者震いをしながら、俺は早速週末に二人で落ち会う約束をした。
胸の奥から僅かに込み上げてくる違和感は、性欲が上から迅速に覆いかぶさってきて、すぐさま隠蔽した。

「きっと美和子も反省したのだ。まあ、今回は許してやる事にするか」心の違和感に対する言い訳はこんなところだった。その言い訳で俺は納得し、後は性欲を満たすためにはどうすればいいのか?ということだけに考えを集中した。

俺は早速週末に店を予約し、ネットのチケット販売で映画のチケットを二枚買い、ホテルの段取りも取った。作戦はある。なんとか最後までヤリ切って見せる。
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